陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神イラストはオタクの心を救うイコノロジー

2022-06-26 | 二次創作論・オタクの位相

最近は日本の代表産業として、また、芸術性のある文化遺産としても、アニメや漫画の価値が高まっています。自治体などでの観光客誘致のために積極的に利用されておりますし、自衛隊をふくめた官公庁のポスターにも採用されていたりしますよね。私が若かりし頃の二十数年前には考えられなかった事態です。いや、ほんと。

とはいえ、良心が邪魔をして、好きな作品名もキャラのカップリングも、そもそも二次創作すらやっていること公言できない隠れ隠れヲタクの私は、平素、身の回りにヲタク友だちがいない、ぼっちファンであります。同人誌の即売会などのイベントにも行かないので、ネットだけがヲタク界隈の情報源です。

そんな私がふと、ほくそ笑んでしまう事態が。
勤め先のある資料を探していたところ、アニメ絵の下敷きが数枚。しかも、あきらかに、ヲタク受けを狙った文言をちりばめたような上級者向けのやつです。あ、でも十八禁の抱き枕みたいな、いかがわしい絵ではなかったのですが。

作品名は言えませんが、私が名前だけは知っているちょこっと可愛らしい系の絵柄の作品。
たぶん置いたのは──ふだんは指導が厳しい、数年上の先輩社員。

なんとなく、こんなことで親近感が湧きあがってしまうのは、ヲタクの見えない同士愛(?)のなせる業なのでしょうか。

ちなみに、データ保管用のUSBも、なにかのアニメの美少女ストラップ。
これは、かなり年季が入っているなと思わざるを得ません。アニメグッズのストラップ、けっこう高いだろうに、いいのかコレ? と思いつつ。

今ではセクハラになってしまうのでしょうが。
昭和の昔ですと、男性の多い職場では、女性の水着姿のビールのポスターなんかが壁に貼ってあったりしましたよね。個々人のパソコンのデスクトップ画面でも、そうだったのかも。

コロナショック以後、都会のオフィスがスペース削減たがため、固定席ではなく、ランダムに従業員がデスクで作業し、書類はロッカーにしまうという光景が増えているようです。
そのため、共有スペースにあまり私物を並べたりもできなくなったのでしょうね。

私の勤め先は田舎の、人の出入りが激しくないので、ベテラン社員が自分の気分があがるアイテムを置き放題のようです。
そういえば、企画編集職で勤めた会社でも、商品企画部の上司がヤッターマンかなにかのフィギュアをデスクに飾っていた覚えがあります。

私もセーラームーンの絵柄の入ったペンを持ってきたいと思いつつ、もったいないので、会社に持ち込む勇気まではありません。

でも、職場にそれを持ち込むこと自体、そのひとにとっての、お守りであり、精神的なクスリであり、もっといえば鎧のなのかもしれません。働くことで溜まってしまう澱を拭ってくれる吸い取り紙みたいな。

職場には極力、遊びのグッズは持ち込まない方がいいに決まっています。
私も個人事業上の私室では、漫画やアニメ関連の書籍は塞いで見えないようにしています。でも、疲れてくると、週末や休日に引っ張り出して見ちゃうんですよね。ネットで延々と神イラストを探したり、過去の二次絵を漁ったりもしますよね。歴史小説の主人公になりきって、無駄な万能感に浸ったりしますよね。架空の世界に逃げてしまいたくなるのです。

その昔、日本のご家庭には天皇陛下をふくめた皇室の肖像画が掲げられていたようで。
いまでも仏壇には仏画の掛け軸があり、家訓を書いた額があり、あるいはキリスト教の宗教画があったりします。それと同じように、漫画やアニメの絵であっても、見る人のこころを救うものとして、現代では機能しているのかもしれません。

そんな私はスマホの壁紙をこっそり自分好みに変えまして、ひとりニヤニヤしています。
スマホは会社には持っていかないので、誰にも身バレしないからです。

自分の身の回りをすべて好きなもので固めすぎないで、ときおり、チラ見できる程度のアクセントに添えるのがベスト。

二、三年前だかに鬼滅の刃のプリントをした缶コーヒーがバカ売れしたらしいけれど、その理由もわかります。
流行りものに乗っかりたいミーハー気分もあるだろうけれども、先行きの見えない世のなかを生きる私たちは、共通の美しい夢物語を追い求め、それを語ることによってこの世界にいてもいいのだと承認されたがっているのかもしれませんね。


(2022/06/25)









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