UN大浦のブログ

徒然なるままの手記。
大半が、山と猫様、そして妄想の徒然草。

穂高ーアークと雪崩ー

2019-04-30 23:22:57 | 日記
「っぁ、雪崩だぁ!!!!!」

女性の叫ぶ声。
身体が、音(声)の発する真意を理解できず、一瞬硬直した。
反射の促すまま、雪の斜面に我が身をへばりつかせた状態で、声のした方、頭上を見やる。

もの凄い速度で落ちてくる新雪の塊。

刹那、”意味”を理解した身体が、ピッケルを全身全霊で雪に突き刺し、防衛の態勢を取る。
表層雪崩だ。

       
『あゝ、嫌な予感というものは当たるものですね。
        山岳警備隊の方々の「雪質変わっているので、非常に”起きやすい”状態です。気をつけてください。」との台詞が思い返される。』
        時はGW。場所は、北穂高。北アルプスの名峰。



1、2秒の猶予もない速度で、押し寄せる白い波。
その中に、
男性が、一人、飲み込まれている。


男性は、
落差がもたらす重力と、
圧倒的な雪の質量の前に嫌が応もなく、落ちていく。
自然の力の前には人のもがきなど無力だと映る。

落ちていく男性の表情が印象的に目に焼きついた。
笑っていた、ように思えた。

続けざま、
我が身の保身優先のため、意識を男性から逸らす。
幸い、雪崩の進行方向と自分との距離は3〜5mはあった。
ただ、自分の下にも後続は多数。
連続して巻き込まれたら、まず負傷は免れないため、自分にも余裕はない。

余波に備えるため、首に力を入れ身体を硬直させる。
雪崩の名残がヘルメットにドカンドカンと当たる。
近さを改めて痛感するが、音も止み、雪の斜面に再び静寂が戻る。

斜面にへばりついたまま、視線を下に見やる。
男性は、80mぐらいは結局滑り落ちたのだろうか。大量のデブリの中、男性の青い服が見える。

ふかふかな新雪が功を奏したのか、雪を払いながら立ち上がるのを目にした。

居合わせたみんなが安堵の息をつく。
再び、降りる者は降りるし、登る者は登る。

「暈」と「環水平アーク」
穂高との珍しい共演。貴重なショットをありがとう。






遠方の黒い槍。これを一目見るためだけに。



最高のモルゲンルート。以下から、北穂高に登る過程を時系列順に。