UN大浦のブログ

徒然なるままの手記。
大半が、山と猫様、そして妄想の徒然草。

闇を越えて

2018-10-21 17:48:05 | 日記
闇は貪食。
ヘッドランプが照らす一点以外、全ての光を飲み込む。明るみが恋しい。

風は強欲。
体温と他の物音を無慈悲に奪う。熊や鹿が突然出てきても気づけるはずがない。

ここは、白山室堂。
時は、午前4時47分。気温は、マイナス1度。
別当出合から登り始めた時刻が午前2時30分。
したがって、2時間弱で室堂には着いたことになるが、闇と風が作りだした震えが止まらない。

室堂まで、ついぞ誰にも遭わなかった。流石にこれは初めての体験。半径数キロ以内の漆黒に、ただ一人。
久々に、闇が怖いものだと思い出した。室堂に来て、小屋泊まりの方数名にお逢いした時、心からホッとしてしまった。

寒さによる震えを止めるため、ガスストーブでココアを沸かそうとするが、着火してもすぐかき消される。
風が、風が、狙いすましたかの様に、体を温めるチャンスと栄養を奪う。
ザックと自らの体で風除けを作り、火種を守る。風にひたすら吹かれるが、数分耐えれば、ココアが体内からエネルギーを与えてくれるはずだと思い耐え忍ぶ。

日中は登山者を暖かく迎える白山も、
夜になると、牙をむく。
自然は、一瞬として、同じ顔を見せない。

だから、怖いけど楽しい。

だから、日の光が、殊更美しい。



御前峰を超えて