政府は、郵政民営化で発足する金融2社「郵便貯金銀行」と「郵便保険会社」の全株式を、保有する持ち株会社が、17年4月までに完全に処分するための具体案を固めた。政府の判断による段階的な市場放出に加え、金融2社の株式に強制転換する社債や信託方式などを組み合わせ、株式価値が計8兆円規模の巨大金融会社の完全民営化を確実に達成する。
竹中郵政民営化担当相と郵政民営化準備室は、市場への影響を抑えつつ、完全民営化時期までに確実に売却を進めるための方策を検討してきた。単純な売却だけでは法案の国会審議で「市場の受け入れ能力に比べて株式売却規模が過大」などと指摘される可能性があるためだ。
完全処分案では、貯金、保険両社を09年度にも上場させ、自社株買いや「ブロックトレード」と呼ばれる証券会社を通じた大口の相対取引などを組み合わせれば、「市場で売却できる規模」と結論づけた。
万一、株式市況の悪化で売却が難しくなりそうな場合は、(1)持ち株会社が17年3月末を償還期限として、貯金、保険両社の株式に強制交換する条項付きの社債(交換債)を発行(2)持ち株会社が株価や金利の変動リスクを一定程度負う契約を結んだうえで、複数の証券会社に一括売却(3)持ち株会社が信託銀行に最低売却希望価格を設定して処分を委託――といった手法も想定する。
完全民営化の先行事例では、JR東日本が民営化から16年目で、JR西日本も18年目で政府保有比率をゼロにしたが、いずれも政府保有株の売却期限は法定化されていなかった。政府は、持ち株会社の経営陣が完全処分できなかった場合に罰金を科す方針も固めており、確実に完全民営化の公約を果たす考えだ。
民営化法案の政府案では、貯金、保険両社の業務委託料で事実上成り立つ郵便局網は、現行水準の維持が義務化される一方、民営化当初の金融業務は、日本郵政公社と同じ内容に制限することが盛り込まれた。このため「貯金、保険両社の企業価値がさほど高まらないのに、株式売却が進むのか」(公社幹部)との指摘も出ていた。