円高、金利上昇のダブルパンチ
今年から来年にかけて、日本経済は分水嶺を迎えそうだ。まずは、このところ円安に振れている為替相場である。
日本の株式市場は活況で、外国人投資家の日本株買いも続いている。しかし、ドル需要は意外に強く、市場関係者からは「115円を試す展開になる」との声が聞かれる。「株高なのに円安基調」が定着しているのだ。
ただ、この異例の事態は年内いっぱいで終わる。米国投資法とか本国送金法などと呼ばれている時限立法が終わるからだ。
この法律には、米企業が海外投資で儲けた資金の本国還流を促進する狙いがあり、今年末までなら本国に送金しても、税金は5.25%で済むという。本来の税率は最大35%。巨額資金がどんどん還流して当然で、1000億~3000億ドルの資金が米国に流れると試算されている。
この反動が年明けに来るのだ。ドル安、円高に振れるのは間違いない。
年をまたぐと日本銀行の「量的緩和の解除」も現実味を帯びてくる。最近の論議を見ていると、日銀の福井総裁は地ならしに余念がない。政府内では「まだデフレだ」(竹中経財相)などと反対する声が多いが、「異常な政策をいつまでも続けろという意見にくみすることはできない」(福井総裁)と強気。おそらく年明け早く、遅くとも春までには量的緩和を解除するプロセスに入るだろう。これは当然の流れだが、となると長期金利の上昇が避けられない。マイルドな上昇に抑えられればいいのだが、下手をすれば急騰だ。いよいよ日本も金利上昇局面を迎え、為替は円高に向かっていくという格好になる。
金利が上昇すれば、景気にも株価にも悪影響が出る。9月の日銀短観によると、大企業製造業と中小の非製造業は先行きに慎重で、中堅企業は製造業も非製造業も足元ですでに下方修正している。原油高によるコスト高で、企業の収益見通しもまだら模様になっている。目立つのは、年度では上方修正でも下期に限れば下方修正という業種だ。そこに金利上昇では、景気は調整局面に入らざるを得なくなる。さらにドルの反動安が重なれば、日本の輸出関連企業は大打撃。業績回復まで四苦八苦ということになりそうだ。
「景気がいい」と騒いでいられるのも、あとわずかの期間だろう。【高橋乗宣】