敵対的なM&A(企業の合併・買収)の防衛策として、制御機器メーカーのニレコが導入する新株予約権発行による「ポイズン・ピル(毒薬条項)」に対し、東京地裁が発行差し止めを命じる仮処分を決定し、ニレコが異議を申し立てていた問題で、同地裁は9日、異議を退け、差し止め命令を認める決定を下した。
ニレコは取締役会の決定だけで導入を決めていたが、市村陽典裁判長は「(平時の防衛策導入は)株主総会の意思を反映する慎重な手続きによって行われるべき」などと指摘した。ニレコは同日、決定を不服として、東京高裁に抗告した。
決定は、今月1日の決定と同様に、3月末時点の全株主に1株当たり2株の新株を購入できる新株予約権を与えるニレコの方式は、株数が最大3倍まで膨れあがるリスクがあるため、「既存株主は、投資対象としての魅力の減少で(ニレコ株式の)価値の低下という損失を被る」とし、発行差し止めを求めた外資系投資会社の主張を基本的に認めた。
その上で、平時に防衛策を導入する場合、「株主総会の意思を問う時間的な余裕があるのが通常」と指摘したうえで、「株主の利益にも配慮した仕組みの導入」なども考え、「株主総会の意思」を反映するよう求め、取締役会決議だけでの安易な防衛策導入に、一定の歯止めを設けた。
ニレコの抗告で、最終的な司法判断は東京高裁に持ち越されたが、予約権の発行予定日は16日に迫っており、高裁には早期の判断が求められることになる。
異議に対する審理は1日の決定と同様、同地裁民事8部が担当したが、裁判官は3人とも入れ替わった。
(2005年6月9日20時6分 読売新聞)