独立行政法人・都市再生機構(旧都市基盤整備公団)が東京都八王子市で分譲したマンション群(全46棟、919戸)の欠陥問題で、同機構が欠陥のひどい16棟を取り壊し、新たに建て直すことで住民側と合意したことが、31日わかった。
既に建て替えが決まっている4棟と合わせ、全体の半数近い20棟の建設をやり直すという前代未聞の事態。欠陥調査が終わっていないマンションもまだ10棟近くあり、全体の改修額は、当初建設費の3倍の約600億円に達する見通しだ。
このマンション群は1989~93年に分譲されたが、10年目の大規模修繕などを契機に、鉄筋の本数不足など、重大な手抜き工事が次々に見つかった。耐震強度が足りない建物もあり、住民は壁のひび割れや雨漏りにも悩まされた。
機構側は「住民のプライバシーや財産保護のため」として、マンション名や所在地などを公表していない。
46棟は6つの区画に分かれ、各区画の住民がそれぞれ管理組合をつくっている。今回建て替えが決まったのは、18棟(計322戸)が建つ最大の区画。欠陥の本格調査のため、住民は4年ほど前から近くの別の機構住宅などでの仮移転生活を余儀なくされている。
機構関係者によると、最大区画の管理組合は全18棟の全面建て替えを要望し、昨春から紛争解決機関である第二東京弁護士会の仲裁センターで、機構側と話し合いを重ねてきた。
その結果、18棟のうち6階建て以下の16棟について、全面的に建て替えることで両者が合意し、近く取り壊し工事を始めることになった。機構関係者は「欠陥がひどく、補修を行うと、建て替えより費用がかさむ可能性が高かった」としている。
ただ、10階建てと14階建ての2棟については、機構側が「補修で対応できる」と譲らず、組合側と今後も協議を続けることになったという。
建て直す16棟は、準大手の東急建設、中堅の東亜建設工業や北野建設を含む15社が建設した。同機構では、既に倒産した1社を除く14社を6か月の指名停止処分とした。
マンション群の欠陥を巡っては、別の区画でも、手抜き工事が見つかっており、既に3棟は建て替え工事が終了、1棟は建て替え工事中。今後、本格的な欠陥調査を始める区画もあり、建て替えが必要な建物はさらに増える可能性がある。
46棟の当初の建設費は約200億円だったが、改修には、調査費や取り壊し費もかかるため、機構は全体の費用が約600億円に上ると見込む。
機構は費用を建設業者36社に請求しているが、「責任はない」などとする業者側の支払い拒否にあって、これまでに回収できたのは3億円弱にとどまっている。最終的な回収不能分は機構の負担となる。
(読売新聞) - 4月1日3時27分更新