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昨年より設定しております小屋宿泊休業日について、まず2022年シーズンのお知らせ案内文から一部引用いたします。
コロナ禍は山小屋にあらたな困難をもたらした一方、”これまでにも存在していた課題だが、存在そのものに慣れてしまっていた課題を浮き彫りにした現象”でもあります。慢性的な人手不足、日々の長時間労働については槍平小屋もその例外ではありません。計画休業日の設定は2022年の今年が初めての試みとなります。持続可能な山小屋営業に向けての小さな、しかし大切な一歩にして参りたいと考えております。皆さまのご理解、ご協力を何卒宜しくお願い致します。
皆さまの中には毎春、登山関連雑誌やネット上に掲載される山小屋求人案内をご覧になった方もいらっしゃると思います。紹介写真には絶景の山々、笑顔のスタッフたち、名物土産や人気食事メニューが並んでいるかもしれません。山に憧れ、非日常空間での経験を求める若い方への訴求力を高める上では有効な方法です。しかし、それは山小屋の姿の一部分にすぎません。
先日、小屋SNSのX(旧ツイッター)で今シーズンのスタッフ勤務時間をご紹介しました。槍平小屋では今、アルバイトさんのこの勤務時間を守るべく小屋主人を筆頭に努力を重ねています。毎日100%の実現とまでは言えませんが、概ね日々の勤務時間はこの枠内に収まっています。ただし、それは簡単に達成出来ているものではありません。多くの山小屋では8月下旬よりスタッフ休暇も始まります。その中で休暇を円滑に回しながら、残ったスタッフに負担がかかりすぎることを避けるためにはどうすればいいのかを考えた時、小屋宿泊休業日を設定するアイデアが浮かびました。
短期間・季節営業形態の山小屋で休業日を設けることはダイレクトな収入減につながります。けれど山小屋が、”大自然に抱かれた、ブラックな職場”のままだとしたら、人手不足も長時間労働も改善されないままになります。余裕のない労働環境ではスタッフの精神面の安定も揺らぎ、業務に慣れているはずのベテランスタッフでさえ新人スタッフへパワハラやモラハラになりかねない対応をしてしまうかもしれません。大自然にあこがれて山小屋バイトに来たのに、人間関係の問題で期間満了を待たずに退職してしまうようなことがもしもあれば、それはとても悲しいことです。
これまで後回しにされがちだったスタッフの勤務実態改善に取り組むことは槍平小屋の将来にとって、非常に重要な課題と考えています。「人材を大切に・・・」と、言葉にすることは簡単ですが具体的な行動に移しているかどうかは小屋の本気度を測る目安なのかもしれません。
4代目小屋主人が担当しているinstagram、facebookでもご紹介しておりますが槍平小屋は創業から今年が100年の節目となります。これまでご利用頂いた登山者の方々はもちろん、本当に大勢の皆様のおかげで2023年シーズンの槍平小屋があります。小屋主人とも話すのですが、101年目からも守り続けてゆかねばならない部分と、101年目には引き継ぐべきではない部分。しっかり課題に取り組み、表面に見えている部分だけではなく、内面からも登山者の皆様の信頼を得られる山小屋になれるように、これからも努力してまいります。この8月31日に小屋泊を考えていた方々におかれましては、どうぞ上記の取り組みへのご理解とご協力を頂ければと思います。
残暑と呼ぶには抵抗がありすぎる暑い日々が続いていますが、まもなくやってくる爽やかな秋山シーズンが天候に恵まれて、大勢のお客様をお迎え出来るように願っています。長文をお読み頂いた皆さま、ありがとうございました。
槍平小屋現地管理人: 橋本直忠(お客様webご予約受付、X、槍平小屋ニュース更新担当)
【計画休業日 2023年8月31日(木)】※ スタッフ休養、小屋設備メンテナンスのため
※ テント泊、小屋売店、キャンプ場トイレ・水場の利用は平常通り可能です。また、事故・行方不明者発生時などの緊急対応も平常通り行います。