多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

ニューズウィーク:移民国家ニッポン

2006年09月06日 | Weblog
『ニューズウィーク』日本版の9月13日号が、「移民国家ニッポン」の特集を組んでいる。表紙には、日本国籍を取得したバングラディシュ、スリランカ、そしてイギリス出身の3人の男性の写真が掲載され、「出稼ぎでなく『永住』へ 外国人が日本を変える」と記されている。

ずいぶん派手な見出しだが、記事は2本だけで、しかも1本は「ヨーロッパ移民社会の『地獄』」と題したヨーロッパに関する記事なので、結局、日本に関する記事は「島国ニッポン 危うい移民無策」の1本だけで、やや期待外れである。

記事の内容も、移民政策のないまま、既成事実として移民の受け入れが進んでいることを指摘しているのはよいが、具体的な事実関係で誤りが幾つもある。例えば、「現在日本国籍を有する約1万5000人の『元外国人』」とあるが、1万5000人というのは、毎年帰化をしている外国人の数で、これまで帰化をした人たちは累計で40万人近い。

また、「移民の子に日本の義務教育を受けさせる法律はない」「日本の教育制度には、外国人の子に日本語を教える用意がまったくない」と述べているが、これは誇張しすぎである。法律で外国人の子どもを学校に受け入れることを拒んでいるということではないし、日本語を教える用意もそれなりにしているが十分でないのが実情だ。

「移民労働者の多くはパートタイムで、健康保険や公的年金に加入していない。現在の法律では、雇用主にはパート従業員の社会保険料を負担する義務がないからだ」とあるが、これも間違っている。ブラジル人労働者の場合、その多くが業務請負業者に雇われていて、業者も本人も社会保険への加入を避けがちなのが問題になっている。

さらに、「現在1億2800万人の人口は、50年には1億500万人にまで落ち込む見通し」とあるが、これも不正確である。2002年に発表された2050年の推計値が1億60万人で、今年末にはさらに下方に修正される予定である。

「移民労働者はたいてい、日本人よりも生産性が低い」という意見を引用しているが、そんなことは一概に言えないはずである。

日本版を読む国内の読者は、まだ他の媒体から情報を得て、不正確な情報は淘汰されるからよいが、ニューズウィークの英語版といえば、影響力は大きいし、日本に関する英語の情報は圧倒的に少ないだけに、より慎重に取材し、正確な記事を書いてもらいたいものである。

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