多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

JIAM

2005年11月28日 | Weblog
JIAMとは、全国市町村国際文化研修所の略称である。「地域の国際化」に対応できる職員を養成するため、全国の市町村が共同で利用できる研修機関として、1993年4月に開設された。全国市町村振興協会が、全国市長会および全国町村会の協力と総務省他関係省庁の支援のもとに管理運営している。

JIAMでは、1994年度に在住外国人への対応など実践的能力の向上をめざして「国際化対応コース」を開設した。2003年度からは国際化対応コース(9日間)のテーマを「在住外国人との共生」と明示し、年3回開いてきたが、2006年度からはコース内容を発展させて、 「多文化共生社会対応コース」と「多文化共生マネージャー養成コース」を設置するという。

筆者は、2003年度から国際化対応コースの講師を引き受けてきたが、外国人施策に焦点をあわせるならば、「国際化」という曖昧な名称を使うのではなく、はっきり内容がわかる名称を用いることを提案してきたので、今回の名称変更及びコースの拡大を喜びたい。

また、新コースでは、市町村職員だけでなく、NPO関係者やボランティアの参加も認めるという。これは、多文化共生の地域づくりにおける市民と行政の協働の重要性を考えれば、大きな意義のあることだと思われる。

それぞれ、年3回開催され、「多文化共生社会対応コース」は5日間、「多文化共生マネージャー養成コース」は前半5日間と後半5日間からなるという。前者はどちらかといえば、一般の職員向けで、後者はより上級のコースのようである。外国人の定住化によって、自治体にとって多文化共生の課題の比重はますます大きくなりつつあるが、この新コースの発展を期待したい。

国交省:異質文化交流

2005年11月21日 | Weblog
国土交通省国土計画局が2005年3月に設置した「異質文化交流と日本の活力に関する研究会」が10月に報告書「交流なくして活力なし」を発表している。

国土交通省では、第5次全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」(1998年3月閣議決定)において5つの基本的課題の一つに「世界に開かれた国土の形成」を掲げ、その達成のための4つの戦略の一つに、「広域国際交流圏の形成」を打ち出していた。

2004年5月の国土審議会調査改革部会報告「国土の総合的点検-新しい”国のかたち”へ向けて」においては、「東アジアの成長、グローバル化の進展を、いかに地域活力の創造にいかしていくか」という観点に立ち、「世界に開かれた国土の形成」をめざすため、「我が国の活力を我が国の資本と人的資源だけで維持するのではなく、積極的に外資導入や外国人の受け入れ環境の整備を図り、外国の高水準で多様な頭脳を取り入れ、異質な考え方、技術、ノウハウ、文化などが我が国の優れた頭脳とぶつかり合い、刺激を与え合うことで新しい創造を生み出すことが重要である」(152頁)としている。

こうした「国際交流」を地域の活性化に生かすという発想は、決して新しいものではない。1980年代後半以来、旧自治省がかかげてきた「地域の国際化」施策に共通する部分が多いと思われる。

今回の報告書の前書きには、「これまでの『外に出るグローバル化』から『内に迎え入れるグローバル化』への深化させ、こうしたグローバル化を通じた外国人との文化交流の活性化や国際競争力の強化等が重要である」とある。「内に迎え入れるグローバル化」を深化させようとする以前に、すでにこの10数年の間に、外国人の定住化が進み、「内に迎え入れるグローバル化」の影響が地域社会に及びつつある。そうした動向も踏まえた「異質文化交流」の検討が必要であろう。

外国人集住都市会議

2005年11月14日 | Weblog
11月11日に三重県四日市市で、外国人集住都市会議が開催された。今回のテーマは、「多文化共生社会をめざして-未来を担う子どもたちのために」であった。全国から、行政やNPO関係者など600名近い参加者があった。外国人集住都市会議は2001年5月に静岡県浜松市や愛知県豊田市など、東海地方を中心に13市町(現在、17市町)が集まって結成された。以来、参加都市の担当課レベルで、数ヶ月に一回、定期的に会合を開いている。

一方、参加都市の首長が集まり、国の関係者も参加する首長会議は、これまで3回開かれ、「浜松宣言及び提言」(2001年10月)、「14都市共同アピール」(2002年11月)、「豊田宣言及び部会報告」(2004年11月)を発表している。

また、2003年11月には、豊田市で「外国人青少年の教育と就職問題」をテーマにシンポジウムが開かれており、今回の会議はその第2弾といえる。

前回の豊田シンポジウムの講演やパネルディスカッションでは、テーマが教育と就労の両分野に拡散し、あまり議論を深めることができなかった。一方、今回のパネルディスカッションではテーマが教育に絞られ、会場の一般参加者も加わって、国や地域レベルでの取り組みについて、突っ込んだ議論ができたといえよう。

今回の会議の特徴として、初めて、外国人当事者やNPO関係者が参加し、意見を発表する機会をもったことが挙げられる。第2部の前半には、ブラジル人中学生、ペルー人大学院生、そしてブラジル人保護者が自らの体験を語り、後半のパネルディスカッションでは、豊田市のNPO代表や可児市役所のブラジル人職員が、行政関係者と並んで、議論に参加したことに大きな意義があるといえよう。

また、パネルディスカッションの後半では、会場からの質問を質問用紙で受け付けたところ、60人近い参加者から質問が提出され、一般参加者の問題意識の高さが伺われた。これまで、国と自治体のやり取りを傍観するだけであったNPO関係者にとって、初めて意見表明が可能となった場でもあった。質問内容では、外国人の就学の義務化、不就学外国人の実態調査の進め方、外国人学校の位置づけに関するものが多かった。

もう一つ、重要なのは、第1部での豊田宣言及び部会報告以降のコミュニティ、就労、教育の動向に関する報告を受けて、第3部で、豊田会議の部会報告の諸提言を、規制改革・民間開放推進会議に提出することが決定されたことである。同会議では、「規制改革要望集中受付期間」を設け、全国で実施すべき規制改革・民間開放に関する提案・要望を集中的に受け付け、その実現に向けて関係府省庁と協議し、実施可能なものは、政府の対応方針として決定する。今回の受付期間は10月17日から11月16日までであった。この結果、外国人集住都市会議の諸提言に対して、2ヶ月以内に関係省庁から実施可能かどうかの回答が出されることになった。同会議では、「外国人移入・在留ワーキンググループ」を設け、外国人集住都市会議のコーディネータである井口関西学院大学教授も委員に加わっている。同会議の今後の動向に注目したい。

地域差

2005年11月07日 | Weblog
この1、2年の間に、各地の自治体や国際交流協会から多文化共生の推進に向けて、講演依頼を受けたり、助言を求められることが増えている。

1990年代後半は、東京都や立川市、神奈川県や川崎市など、東京と神奈川の自治体や協会とのお付き合いが多かったが、2000年代になって、静岡県浜松市や岐阜県美濃加茂市、名古屋市、愛知県、岐阜県など、東海地方の自治体や協会とのかかわりが深くなり、今年は岩手県や宮城県など東北地方や群馬県、千葉県、足立区など関東地方の自治体や協会から講演等の依頼を受けている。

今までかかわった自治体や協会は、単純化すると以下の3つのパターンに分かれる。

1南米系外国人(ブラジル人等)の多い地域(東海)

2アジア系外国人(中国人・韓国人・フィリピン人)の多い地域(東京)

3外国人が少い地域(東北)

関西や中国、九州地方で講演をしたこともあるが、いずれもNPO主催の催しであった。

実際には、国籍が異なるだけでなく、在留資格も異なる。同じブラジル人が多い地域でも、もともと在日コリアン(特別永住者)が多い地域もあれば、研修生として中国人も多い地域がある。そうした異なった条件にある地域において、多文化共生を推進するには、それぞれの地域の実情にあわせた施策を考えなければならない。特にまず考慮しなければならないのは、在日コリアンの存在であろう。

初めて講演に訪れる地域の場合は、できるだけ事前に関連データを集めていただいたり、講演前日に宿泊し、外国人の多い地域や日本語教室などを視察させてもらうことにしている。自治体の担当者や地元のNPOの人たちとよく話し合いながら、できるだけ地域の実情に即した助言ができるよう努めたいと思う。