多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

愛知万博:カナダ館

2005年03月28日 | Weblog
愛知万博が3月25日に開幕した。日本国外から120を超える国、地域、国際機関が出展する。その中で、多文化共生の観点から興味深いのはカナダ館である。

カナダは1851年にロンドンで開催された初の万博以来、毎回参加し、自国でも2回開催している(1967年モントリオール、1986年バンクーバー)。カナダは、万博を所管するカナダ民族遺産省(Canadian Heritage)に、博覧会担当部門が常設されていて、大変力が入っている。

愛知万博でのカナダ館のテーマは、「多様性の叡智(Wisdom of Diversity)」で、三つの領域(the Geosphere, the Biosphere and the Ethnosphere)における多様性を強調し、カナダの文化的多様性をアピールしている。

韓国:外国人雇用許可制

2005年03月21日 | Weblog
韓国では2004年8月17日に、外国人雇用許可制を導入した(中央日報2004年8月16日「外国人雇用許可制度、17日から施行」)。外国人労働者の採用を希望する事業主は、1カ月間は内国人に対して求人を行った後、雇用安定センターから人材不足確認書をもらって雇用を申請する手順となった。

総理室は3月2日、外国労働者政策委員会を開き、雇用許可制に基づく今年の外国人人材導入規模を1万8000人と決定した。昨年の場合、新規導入外国人労働者7万9000人のうち4万1000人は「雇用許可制」、残り3万8000人は「産業研修生制」だった。(中央日報2005年3月2日「政府、外国人雇用許可制を大幅縮小」)

また、雇用許可制がスタートして1年となる8月17日以降は、就職希望の外国人は、韓国語の試験に合格しなければならなくなった(中央日報2005年3月7日「外国人勤労者、韓国語試験合格者に限り就職可能」)。

韓国の出入国管理制度は日本の制度に類似していたが、在住外国人に占める非正規滞在者の比率がきわめて高く、特に産業研修制度の存続の是非をめぐって論争が長く続いていた。その結果、産業研修制度を縮小しつつ、雇用許可制が導入された。今回、雇用許可制による受け入れが縮小されるのは、「外国人不法滞在者の出国実績が低調であるため」という。

日本でも、研修・技能実習制度は現実との乖離が指摘されて久しい。雇用許可制の是非はともかく、政府が外国人労働者の受け入れ体制の整備に取り組んでいる点は、日本も見習うべきであろう。

報告:いちょう多文化共生フォーラム

2005年03月15日 | Weblog
3月13日(日)に神奈川県営いちょう上飯田団地(以下いちょう団地)で、「いちょう多文化共生フォーラム」が開かれました。いちょう小学校の敷地内にあるいちょうコミュニティハウスで開催され、60名近い地域の関係者(自治会、学校、ボランティア)が集まりました。地域の小中学校の先生が多数参加し、保育園や高校の先生方も参加し、団地に住む大人の住民だけでなく、子どもたちの将来について活発な意見交換が行われました。

これまで、国際交流祭りの中でディスカッションが持たれたことはありましたが、多文化共生を掲げた単独のフォーラムの開催は初めてでした。以下、フォーラムのちらしからの引用です。

いちょう多文化共生フォーラム

いちょう団地には、現在、20カ国を超える外国につながる方々が住んでいます。最近、全国各地で外国につながる住民が増えていますが、いちょう団地は特に多い地域として注目され、ここ数年、マスコミにも頻繁に取り上げられています。

いちょう団地連合自治会では、1990年以来、2002年まで毎年、文化の異なる住民間の交流をはかるために、国際交流会を開いてきました。2002年度と2003年度は泉区国際交流まつりに参加し、2004年度は泉区役所との共催で多文化共生まつりを開きました。

この地域はボランティア活動が盛んで、たくさんの団体が日本語教室や学習支援教室を開いています。また、地域の4小中学校も多文化共生の学校づくりに熱心に取り組んでいます。いちょう小学校は、先月、『多文化共生の学校づくり』(明石書店)という本を出版しました。

しかしながら、ここ数年、外国につながる住民はさらに増加し、住民間のトラブルなど、まだまだ様々な課題があります。そこで、今回の多文化共生フォーラムを企画しました。国籍や民族のちがいにかかわらず、誰もが住みやすい地域社会をつくっていくにはどうしたらよいのか、一緒に考えてみませんか。

日時: 2005年3月13日(日)午後2時~4時30分
会場: いちょうコミュニティハウス(国際交流室)
主催: いちょう団地連合自治会
協力: 泉区役所、泉区社会福祉協議会

スケジュール:
2時    開会の挨拶 
2時10分 講演 影山秀人さん
「いちょう団地における多文化共生の課題について」
2時50分 休憩
3時    パネルディスカッション
「日本人も外国人も住みやすい地域づくり」
      パネリスト
      木村英子さん(中国獅子舞泉の会代表、台湾出身)
      桜井竜一さん(いちょう小学校PTA共同代表、ベトナム出身)
      早川秀樹さん(多文化まちづくり工房代表)
      小松秋人さん(いちょう団地連合自治会副会長)
      コーディネータ 山脇啓造さん(明治大学教員)
4時30分 閉会の挨拶

愛知県議会は国会の5年先を行く?

2005年03月14日 | Weblog
愛知県議会で、3月8日、かしわぐま光代議員(民主党)が昨年11月の「多文化共生社会づくり推進共同宣言」の策定に触れ、ブラジル人の子どもの教育に関して質問を行った。愛知県議会の会議録(1996年~)を「多文化共生」で検索すると、今回の質問以前に、すでに5回議論されていた。

2001年3月 豊田市多文化共生推進協議会について(高木浩司民主党議員、豊橋市、県民生活部長)

2002年3月 愛知県国際化推進プランについて(伊藤忠彦自民党議員、知多市、県民生活部長)

2002年3月 県営住宅への外国人の入居について(榊原康正民主党議員、西尾市、建設部理事)

2004年9月 多文化共生社会づくりについて(秋田政幸自民党議員、知立市、神田県知事)

2004年12月 県営住宅への外国人の入居について(鈴木孝昌自民党議員、豊橋市、建設部理事)

過去6回、すべて異なった議員による質問で、政党も自民党と民主党の両者から半々というのが興味深い。愛知県が国に先行して多文化共生の議論をしているといえよう。5年後の国会は愛知県議会のようになっているだろうか。

横浜市泉区:多文化共生まつり

2005年03月07日 | Weblog
3月6日、横浜市の泉区役所で「泉区多文化共生まつり」が行われた。いちょう団地連合自治会と泉区役所の共催で、いずみ多文化ネットワークが協力している。

2月7日付けの「多文化共生の学校づくり」で紹介したように、横浜市泉区にある神奈川県営いちょう上飯田団地は、関東地方で最も外国出身者の多い団地で、中国やベトナムを中心に20カ国を超える外国出身者(約400世帯)が住んでいる。

いちょう団地では、自治会、学校、ボランティア(地域づくりの三角形)の連携の仕組みが徐々につくられてきた。2003年度にいずみ多文化ネットワークが結成され、2004年度から3ヶ月に1回、「いちょう多文化共生まちづくり懇談会」が開催されている。

実は、泉区では、2002年度と2003年度に、公募で集まった区民といちょう団地関係者からなる実行委員会方式で「国際交流まつり」を開催している。しかし、まつりの目的が「国際交流」なのか「多文化共生」なのか曖昧になり、今回、いちょう団地関係者と区役所の協働によって、まつりの名称も「多文化共生まつり」に改め、開催されることになった。

今回のまつりで特筆すべきなのは、学校の積極的参加であろう。いちょう団地のある上飯田地域の4校(飯田北小、いちょう小、上飯田小、上飯田中)は1998年から連絡会を組織すると同時に地域との連携を深めてきたが、今回も、午後の日本語スピーチ大会を企画し、午前のステージの出し物7つのうち、5つが4校の児童生徒によるものであった。日曜日であるにもかかわらず、4校の校長を始めとして20人を超える教職員が参加した。

また、区役所の行事として初めて「多文化共生」を掲げた意義も大きい。泉区は、2005年度、いちょう団地を対象に「多文化共生のまちづくり推進事業」を始めるという。横浜市は「国際性豊かなまちづくり」をめざして、外国との「国際交流」には大変力を入れてきたが、名古屋市や福岡市など他の政令指定都市同様、外国人住民に関する施策は遅れている。今回のまつりが、いちょう団地から泉区全体への多文化共生の発信となり、それがさらに横浜市全体へ波及することを期待したい。

「泉区多文化共生まつり」のプログラムは以下のとおり。

区民ホール ステージ
10:30~12:30 文化交流
 ①中国獅子舞、②ココナッツダンス、③ハンカチの舞い、こままわし、④ロバン・チュンポー、⑤二胡、⑥太鼓の踊り、⑦チョンギーノ、カサルメ、キエロ
13:30~14:15 日本語スピーチ大会
14:15~14:30 腰鼓(ヤオグー)

区民ホール 催し
12:30~13:00 食の交流(中国、ペルー、カンボジア、ベトナム料理の試食とレシピ紹介)
12:30~14:00 ベトナムを知ろう!

区民ホール 展示
パネル展示 泉区の外国籍等区民の現状、いちょう団地の取り組み、外国籍等区民相談の紹介
ボランティアグループの紹介 日本語ボランティアグループ、国際交流グループ
上飯田地区4校(飯田北小、いちょう小、上飯田小、上飯田中)の作品展示

区内各小学校の国際交流をテーマにしたポスター、作文展

保健福祉センター
10:30~14:00 外国籍等区民住宅相談
12:30~14:00 中国を知ろう!