多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

学習指導要領

2006年01月30日 | Weblog
最近の新聞報道によると、文部科学省は2006年度から2007年度にかけて、学習指導要領の改訂作業を行うという。

1998年に告示され、2002年度から施行された現行の学習指導要領には、外国人児童生徒への言及がまったくなされていない。僅かに、総則(小学校中学校)の「指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」のなかに、「海外から帰国した児童/生徒などについては、学校生活への適応を図るとともに、外国における生活経験を生かすなど適切な指導を行うこと」(『小学校学習指導要領』5頁、『中学校学習指導要領』6頁)との一節があり、「海外から帰国した児童/生徒など」の「など」に「外国人児童」が含まれるという。

『小学校学習指導要領解説 総則編』を読むと、上記項目の解説として、3頁にわたる記述(106~108頁)があり、初めて「外国人児童」という言葉が現れる。ただし、ほぼ一貫して、「海外から帰国した児童」とセットで用いられてる。すなわち、「海外から帰国した児童や外国人の児童」について、「児童が自信や誇りをもって学校生活において自己実現を図ること」、日本語の習得や教科の指導における配慮が必要なこと、「外国での貴重な生活経験」を生かすこと、そして、他の児童が異文化を理解し共に生きていこうとする姿勢を育てることなどが述べられている。

公立学校で学ぶ帰国児童生徒の数は約1万人であるが、外国人児童生徒は約7万人(「日本語指導が必要」な児童生徒は約2万人)である。そもそも帰国児童生徒と外国人児童生徒の間には日本語学習など共通の課題もあるが、アイデンティティの問題など異なる課題もある。従って、外国人児童生徒を「海外から帰国した児童生徒など」の「など」に含め、帰国児童生徒と同様に、しかも副次的なものとして位置づけるのは無理があろう。この問題は、昨年11月に三重県四日市市で開かれた外国人集住都市会議でも議論された。

今後の改訂作業の動向に注目していきたい。

報告:立川華文会

2006年01月29日 | Weblog
今日は旧正月である。立川市で自分の子どもたちに中国語を教えている中国人のグループ「立川華文会」が立川市女性総合センターで開いた「春節祭」に参加した。後援は、NPO法人のたちかわ多文化共生センターで、中国人と日本人をあわせて、50人ほどが参加していた。

幼稚園から小学校低学年の子どもたちが、中国語と日本語で挨拶をしたり、中国の歌を歌った後、中国のお正月の習慣について、日本人向けに説明をした後、手作りの餃子を皆で食べた。

立川華文会の中心メンバーは、たちかわ多文化共生センターにも参加している。多文化共生をめざして、日本人と中国人がよい関係が築けているのが、立川市の特徴といえる。

多文化共生社会をめざしていくうえで、外国人自身が主体的に自分たちが抱える課題解決に立ち上がることはとても大事なことである。こうした会が今、少しずつ全国に広がっている。「外国人支援」を超えて「多文化共生」に向かう、こうした動きに注目したい。

案内:地域の国際化セミナー@名古屋

2006年01月27日 | Weblog
地域の国際化セミナー2006

「もうひとつのニッポン」発 ― 多文化共生社会へ次の一歩

外国人自らが多文化共生社会の形成に向けて発言、提言するこのセミナー。今回はエスニックメディア、エスニックビジネスに携わる在住外国人の視点から、私たちの暮らす地域社会の現状とこれからについて一緒に考えます。

●日 時:平成18年2月18日(土)10:30~16:00

●会 場:名古屋国際センター 別棟ホール(名古屋市中村区那古野一丁目47番1号)

●参加費:500円(賛助会員300円)

●対 象:多文化共生の地域づくりに関心のある方

●定 員:200名(要予約・先着順/定員になり次第締め切り)

●内 容:

◇第一部 10:30~12:00

 報告「メディアが伝えるエスニックコミュニティの今」

 在住外国人の日常生活や文化を言語の面から支える母国語情報メディア、いわゆるエスニックメディアは、日本社会と外国人コミュニティとをつなぐ「懸け橋」としての一面ももっています。現在日本で発行されている活字系メディアの編集長や記者が、取材を通じて見聞した同胞やコミュニティの今を伝えます。

(講師)アントニオ・カルロス・ボルジン/「ジャパン・トータル」誌(ポルトガル語)編集長
    大内田 アルマンド/「キョウダイ」誌(スペイン語)代表
    マリオ・ノフィエス・ヘリアレス/「シランガン新聞」紙(フィリピノ語)発行人

◇第二部 13:00~16:00

 パネルディスカッション「在住外国人ビジネスの現場から」

  雇用する同胞従業員の生活や労働実態、それへの企業側の対応や見解など、外国人従業員が置かれている現状と課題を外国人ビジネスマンの視点から整理し、問題解決に向けた提言を行います。

(パネリスト)斎藤 ヴァルテル 俊男(ブラジル)/㈱ティー・エス 代表取締役社長
       秦 浩明(中国)/日本安恵株式会社
       マリオ・ノフィエス・ヘリアレス(フィリピン)/シランガン・コミュニケーションズ㈱ 代表取締役社長
(コメンテーター)高橋 ミルトン 稔/名古屋国際センターポルトガル語嘱託職員

●申込方法:電話またはEメールで(Eメールの場合は、件名を「地域の国際化セミナー参加希望」として、郵便番号、住所、氏名、電話番号、所属団体(ある方のみ)を明記してください)。

●申込み・(問):名古屋国際センター 交流協力課(民間交流係/担当:吉見、高橋)
        TEL 052-581-5689 E-mail vol@nic-nagoya.or.jp
        (9:00~17:00/毎週月曜及び2/12(日)は休館日です。)

主 催:財団法人名古屋国際センター
共 催:財団法人愛知県国際交流協会
後 援:愛知県、名古屋市、愛知県教育委員会、名古屋市教育委員会、多文化共生推進協議会、愛知県経営者協会

案内:国際化市民フォーラム in Tokyo

2006年01月25日 | Weblog
私も企画委員会に参加しているフォーラムの案内です。

国際化市民フォーラム in Tokyo 「多文化共生を目指して―国際社会に生きる」

外国人の定住化が本格的に進んでいる現状の中で、在住外国人と共に暮らすことの問題点を明らかにすると共に、激動する世界と向き合う国際協力のあり方について、日本人と在住外国人が共に考え、具体的行動に踏み出すための機会とします。

 日 時: 平成18年2月11日(土) 10:30~16:00(受付は10:00より)
 場 所: 品川区総合区民会館「きゅりあん」
      (JR大井町中央東口徒歩1分/東急線大井町駅徒歩3分)
  
 定 員: 各分科会 50名
 参加費: 無料
 締 切: 2月3日
 主 催:東京都国際交流委員会、国際交流・協力TOKYO連絡会
 共 催:日本国際連合協会東京都本部
 後 援:東京都、品川区、品川区国際友好協会

-プログラム-
<午前の分科会> 10:30~12:45  ☆印はコーディネーター

【1】外国人都民にとって東京の暮らしは 
           ~誰もが住みやすいまちづくりに向けて
      ☆木下 伸子(中野区国際交流協会)
      ☆李 承  (新大久保語学院)
       中国、韓国、フィリピン人の都民の皆さん

【2】日本語習得を必要とする子どもたちへの教育の現状
           ~保護者、生徒及び学校現場からの報告
      ☆伊藤 美里(IWC国際市民の会)
       保護者、生徒、中学教員等  
  
【3】災害復興と海外協力
      ☆新屋敷 道保(オイスカ)
       金丸 智昭(ピースウインズ・ジャパン)
       長 宏行(オイスカ)
       高橋 秀行(ジョイセフ)
     
<午後の分科会> 13:45~16:00 ☆印はコーディネーター

【4】多文化共生のまちづくり
      ☆梶村 勝利(東京日本語ボランティアネットワーク)
       山崎 一樹(総務省自治行政局国際室)
       坂田 道夫(足立区区民部)
       針谷 弘志(新宿区文化国際課)
       萩原 勝美(立川市市民活動課)

【5】日本語習得を必要とする子どもたちへ教育支援
           ~データから見る東京都の現状と課題
      ☆藤田 京子(外国人生徒学習の会)
      ☆山田 泉(法政大学教授)
       王 慧槿(多文化共生センター東京21)

【6】在住外国人のための防災を考える
      ☆山本 重幸(共住懇)
       倉持 諭(墨田区文化振興部)
       中島 寿美(東六郷1丁目町会)
       江原 幸壱(共住懇)
       中越地震の外国人被災者

【出会いの広場“ちょっとのぞいてみよう”】 10:00~16:00
申込不要のフリースペースです。誰でも気軽に出入りできます。国際交流・協力に関する資料展示コーナーやミニイベント等、楽しい企画が一杯です。

問い合わせ:東京都国際交流委員会国際交流・協力情報コーナー 
〒163-8001 新宿区西新宿2-8-1 東京都生活文化局文化振興部事業推進課内
TEL:03(5320)7740/FAX:03(5388)1327
E-MAIL:koryu-info@tokyo-icc.jp URL http://www.tokyo-icc.jp

グローバル戦略

2006年01月23日 | Weblog
経済財政諮問会議が2005年12月26日に開いた第31回会議で、「グローバル戦略」について、「グローバル戦略の基本的視点」について意見交換を行った。この「グローバル戦略」というのは、昨年6月に策定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)2005」において、「経済外交、国内構造改革、地域経営、国際分業等を通じて、グローバル化への総合的かつ戦略的な取組を行うため」(16頁)に2006年春を目途に策定することが決定されたものである。

4つの基本的視点の一つが、「国際共生型社会を構築するという視点」で、「世界中の人々が訪れたい、働きたい、住みたい国」を目指すという。また、もう一つの視点である「活力ある人口減少社会を実現するという視点」からは、「秩序ある外国人の受け入れ」を積極的に検討するという。

グローバル戦略の内容は、基本方針2006に盛り込まれ、政府方針となる予定である。今年は、多文化共生に向けて政府の動きが期待できる一年となるかもしれない。

日経新聞

2006年01月16日 | Weblog
正月の各紙の社説などで、外国人受け入れの問題がどのように取り上げられるか読んでみたが、特に大きな特集はなかったようである。

日本経済新聞の社説は、元旦から5回連続で「人口減に克つ」をテーマに掲げ、4回目の「アジアと共存共栄の道を築こう」の中で、日本のFTA戦略を論じ、「アジアへの労働市場の開放に関する指針づくりを急ぐべき」ことを訴えている。「米欧の先進国が移民政策で揺れる中で、日本は外国人労働者の扱いで明確な理念を描けないでいる。現実には既に労働人口の不足を補うために外国人の手を借りる業界は多い。社会コストの負担や教育、居住地域の秩序など、多面的な観点から入国管理制度の再点検が必要だ」という。また、「研究開発や衣料、法務、芸術、経営など専門性が高い職種については、日本が技術や文化でアジアの中心地となり、影響力を発揮するためにも、人材が集まりやすい環境の整備に本腰を入れる時期に来ている。住んで働く場所として魅力がなければ、優秀な人材は来てはくれない」とも述べている。

日本政府は、外国人労働者、特に非熟練労働者を受け入れないと言っておきながら、現実には受け入れがずるずると進行し、深刻な社会問題が発生しているのは指摘のとおりである。ただし、「入国管理制度」を再点検するだけでなく、既に入国した外国人の地域社会での受け入れ、すなわち社会統合の制度づくりが不可欠である。

一方、日経新聞は、元旦から連日、「ニッポンの力」という特集記事も連載している。1月8日は、「『内なる外国』取り込もう―日本への帰化、90年の2.4倍」と題して、外国人の受け入れのあり方を論じている。在日中国人実業家や相撲の力士を取り上げ、バブル崩壊後、日本社会で活躍する外国人が増えていることを指摘している。その一方で、在日コリアンの経験も取り上げ、「歴史の沈殿物も積み重なる」と述べている。その上で、最後に、「属州の人々に市民権を与えて繁栄したローマ帝国に学ぶまでもなく、『内なる外国』とどう付き合うかは国家存続の大きなテーマ」であり、「欧米を『非寛容』の波が覆う中、日本は自らの『受容力』をどう磨き続けるか逆に問われている」と結んでいる。

この結論の、外国人の受け入れのあり方が国家存続の重要テーマとの指摘に異論はないが、ローマ帝国の例を引くのは適切ではないだろう。記事の中でも在日コリアンが帰化制度を屈辱的と感じていることが指摘されているが、それは帰化制度は戦前の「大日本帝国」の皇民化政策(同化政策)につながる、日本の「非寛容」のシンボルとみなされているからである。アジア諸国を支配した戦前の多民族帝国とは異なる、新しい理念を打ち出すべきであろう。

案内:多文化共生の地域づくりに向けて@岐阜県可児市

2006年01月11日 | Weblog
多文化共生シンポジウム「多文化共生の地域づくりに向けて」のお知らせ

主催:岐阜県国際交流センター
日時:平成18年1月15日(日) 11:00~16:00
会場:岐阜県可児市文化創造センター 虹のホール

参加無料、同時通訳つき(ポルトガル語、日本語)

【プログラム】

11:00 開会挨拶

11:15 基調講演 松永卓也レオナルド氏((株)インターナショナルプレスジャパン代表)

12:15 食事休憩

13:15 活動事例発表 金城エジウソン・セイエイ氏(ブラジル友の会会長)

13:45 パネルディスカッション

パネリスト
金城エジウソン・セイエイ氏(ブラジル友の会会長)
米元ファビオ氏((有)アグア ナ ボカ代表取締役)
丸井合氏(ブラジル人学校 大垣市 ヒロ学園教師)
小島祥美氏(可児市教育委員会外国人児童生徒コーディネーター)
田村太郎氏((特)多文化共生センター理事)

コメンテーター
松永卓也レオナルド氏

コーディネーター
山脇啓造氏(明治大学教授)

案内:グローバリゼーション時代の留学生の就職支援@東京都港区

2006年01月10日 | Weblog
国際シンポジウム「グローバリゼーション時代の留学生の就職支援」のお知らせ

多文化共生社会とアジア経済の連携を背景に、より効果的な留学生の就職支援の可能性を探る

主催:日本学生支援機構
日時:2006年1月13日(金)10:00~17:45
会場:東京国際交流館 プラザ平成 

規制改革・民間開放推進会議

2006年01月09日 | Weblog
規制改革・民間開放推進会議が2005年12月21日に「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」を公表した。同会議は、総合規制改革会議(2001年4月~2004年年3月)終了後も規制改革をより一層推進するため、2004年4月、内閣総理大臣の諮問に応じ、民間有識者13名から構成される組織として内閣府に設置されたものである。

同会議は、2005年4月から、「外国人移入・在留ワーキンググループ(WG)」を立ち上げている。「外国人移入・在留」は、「少子化」「生活ビジネスインフラ」に並ぶ3つの横断的重点検討分野の一つに位置づけられている。

今回の答申では、外国人登録制度や研修・技能実習制度などについて2006年度中に見直すことを打ち出している。

外国人登録制度は、「在留外国人の公正な管理」(外国人登録法第1条)を目的とした制度で、日本人を対象とした住民登録制度が、市町村が「住民の利便」(住民基本台帳法第1条)を図ることを目的としているのとは大きく異なる。実際には、市町村は外国人登録のデータを使って行政サービスの提供を行っているが、そもそも、法律に外国人を管理することを謳っていること自体が問題で、多文化共生の理念に反する。また、外国人登録のデータが外国人の居住関係や家族関係の実態から乖離していることは、外国人集住都市会議が繰り返し指摘している。

一方、研修・技能実習制度が抱える人権問題、労働問題については、この10年、市民団体などが指摘してきた。途上国への技術移転という建前と中小企業による低賃金労働者の確保という本音のギャップは開いたままである。

今回、規制改革・民間開放推進会議が、こうした問題を取り上げることを高く評価したい。

また、もう一つ注目に値するのは、今回の答申が「我が国社会への適応を促す社会的統合政策」(95頁)に言及していることである。私は、日本政府に社会統合政策が欠如していることを以前から指摘してきたが、政府の文書に「統合政策」が取り上げられたのはおそらく初めてのことであろう。


「外国人移入・在留」の「問題意識」(95~96頁)の最後では、以下のように述べている。

「日本人の若年者・高齢者・障害者の雇用の促進、男女共同参画社会の実現、産業構造の高度化、多文化との共生といった観点も含め、少子・高齢化が進み、総人口の減少が視野に入った我が国の在り方に絡めての国民的合意形成に寄与すべく、諸外国におけるベストプラクティスや昨今の国内外における外国人移入をめぐる諸問題を踏まえた『受入れ政策』(主として政府の出入国管理政策)と『社会的統合政策』とを両輪とする総合的な法令・政策や、各行政機関相互の連携の在り方など、あるべき一定の方向性を示していく」と。

これは大変な長文でわかりにくいが、「多文化の共生」に言及していること、そして、新たな外国人の入国にかかわる「出入国政策」と入国した外国人の地域での受け入れにかかわる「社会統合政策」を一体のものとして、外国人政策を構築すべきことを示したことは評価に値しよう。