20170909
無農薬・無化学肥料へのこだわり
①無農薬
何故農薬使用を嫌うのか、化学肥料の使用に抵抗があるのかについてはいろいろな考え方やこだわりがあると思います。感情的に生理的に嫌う方もいるでしょうし、こういう根拠でなるべく自然に近い野菜が良いという考えをお持ちの方もいるのでしょう。
先日読んだ本(見出し画像の「無農薬・有機のイネづくり」)にもそこに触れた部分がありましたので少し整理をしてみたい。この本の主張は一つの意見ではありますが、私としてはとても共感できるものでした。
コウノトリという鳥がいる。赤ちゃんを運んでくる鳥として有名ですね。調べますと兵庫県の県鳥だといいます。国の特別天然記念物だそうだ。昔は日本中どこにでもいる鳥だったそうですが、今から50年近く前に野生下で絶滅したといいます。絶滅の際の最後の生息地は兵庫県の北部、豊岡だったそうで、この地域の住民が中心になり様々な手を尽くしたようです。しかし飼育コウノトリの死亡、産卵からふ化の難しさなどで絶望的だった時期もあったといいます。しかし県や文化庁の支援も受け事業を進めたりして、ハバロフスク(ロシア)から贈られた6羽のコウノトリ幼鳥から子孫100羽(2002年)に増やすことができたといいます。
その後、2005年から放鳥を開始。2007年には野生下でヒナが孵ったのを確認、2012年には野生の親同士からヒナ誕生。野生のコウノトリは県境を越え、更には日本海を渡り韓国にまで飛来するという事で、50年前の状況に戻りつつあります。その経緯などは兵庫県立コウノトリの郷公園HPに記載があります。
なぜコウノトリはかつて絶滅したのか。1961~71年に大量に使用された除草剤PCPが決定的だったというのが定説です。もちろんこの薬剤が直接コウノトリを絶滅させたわけではありません。鳥のエサが田圃の耕地整理などで少なくなったこともあるでしょうが、絶滅に影響する原因は毒性の強い除草剤の使用だったのです。
この除草剤は田圃でイネ生長の障害となるヒエ(水田雑草)防除のためこの時期に全国で田圃に散布されました。イネは枯れずにヒエが枯れるという薬剤は当時待望の農薬だったのでしょう。しかしこの薬剤により田圃で生育する小動物に毒性物質が取り込まれ、さらに小動物を食べるドジョウ・タニシという食物連鎖上位の動物に取り込まれます。最終的には食物連鎖の頂点の動物に蓄積・濃縮が進んでいくのです。前述コウノトリの郷公園HPには「コウノトリは,世界で極東地域にのみ生息する大型の肉食性鳥類であり,湿地生態系の食物連鎖の頂点に位置する頂点捕食者です.日本在来の動物であり,大陸との断続的な遺伝子交流を行いながらも,日本列島の生物群集のなかで進化してきた」と紹介されています。
大変強い毒性を持つ除草剤PCPにより田圃や小川のドジョウ・ナマズ・ウナギ・フナ・コイなどは毒性を蓄積したり死んだりしました。その魚類を食べていたコウノトリからは高濃度PCBが検出され、直接死ぬこともあるのでしょうが、ヒナが孵らなくなったといいます。
この本によれば、PCP以降(1971年以降)使用されてきた毒性の弱いCNP剤にもPCB・ダイオキシンが含まれているといいます。ダイオキシンの量は微量であるから影響は少ないという主張もあるようですが、「環境ホルモンとして生殖細胞にも悪影響を与え、精子数の減少という形で人類の未来を奪おうとしている」とシーアコルボーンの著書「奪われし未来」で伝えられ、除草剤を使わないイネづくりが広まったといいます。
赤ちゃんを連れてくるというコウノトリの絶滅に関する話が、生殖への影響を危惧させ、人類の未来に影を落としています。少子化は先進国では一つの流れになっていますが、こうした流れから精子数量の減少が影響し問題が少子化という形で顕在化しているのではないかという心配をする人も少なくないでしょう。
今回の話は、除草剤とイネ、コウノトリの話ですが、その他の薬剤で病気になった、体調がよくないという農家さんは昔から多かった。農薬とその他作物・農業従事者の関係もいろいろな事があります。いずれにしても、イネの雑草退治と省力化の期待をして使用し始めた除草剤が、除草剤不使用のお米への関心を高めたことは事実でしょう。除草剤も一面では有効な事も結果として除草剤や農薬忌避への流れへとつながったと言えるのではないでしょうか。
除草剤だけではなく、便利な薬剤(害虫や病気を抑止できる化学製品)は一方ではデメリットも大きいと認識した方がいい。特に虫がつく、病気が発生するという症状だけを除去しようとする方法は気を付けた方がいい。根本的な原因を見つけ出して、その対策をする必要があると思います。しかしそれは面倒で根気のいる作業です。それを簡単にする薬剤があれば飛びつくことになるのです。人間の場合も同じ。高熱が出て大変な時も熱を下げることにスポットを集めすぎると、何故高熱が出たのかを考えようとしない、本当はそちらの対策こそが必要なのに・・・。
これまでの薬剤・農薬と野菜作物の関係はそういう部分がとても気になるところです。
同じような流れで、化学肥料も考えてみたいがその件はまた次回に。