「あんた地獄に落ちるわよ」という決め台詞で有名な占い師HK氏の発言が養鶏業界の反発を呼び、結局テレビ局側が謝罪することになった。
発端は11月11日放送のフジテレビのバラエティー番組「幸せって何だっけ」で、HK氏が「鶏卵の価格の安さを批判し、養鶏場では24時間明かりをつけ1日に2、3個も卵を産ませている▽ほとんどが薬でつくられている、などと発言した。」(毎日新聞)
これに対し、日本養鶏協会は抗議文と質問状を送り、HK氏の主張に反論。詳細は原文を見ていただきたいが、「(1)鶏を眠らせていないわけではなく、24時間という表現はおかしい(2)1日あたりの1羽の産卵数は1個で、3個も産卵することはない(3)飼料は薬事法で定められた基準を守っている」(同上)というものだ。
このHK氏は最近よくテレビで見かける。なんでも占い本の売上部数でギネスに掲載されているそうだ。ただテレビで重用されているのは、そのあまり上品とはいいかねる挑発的な言葉にゲストの芸能人の表情が変わるのが面白く、視聴率が稼げるからのようだ。フジテレビはこの番組の紹介で彼女を「今や”視聴率の女王”」と持ち上げている。
普段は芸能人をいじって視聴率を稼いでいるのだが、暴走して養鶏業という「素人さん」攻撃に走ってしまった。ただでさえ最近は鳥インフルエンザで苦しい状況にある養鶏業を、まさに”大殺界”に送り込むかのような発言に、「公共性が極めて高い電波を使用し、かつ影響力も大きい全国ネットワークを有する御社が何故に科学技術論的にもあり得ない内容で鶏卵への不信を誘発する報道を行ったことについて強く抗議する」と養鶏協会は抗議している。
この番組でHK氏はゲストでなくメインキャラクター。しかしいずれにしても生放送でないのだから、不適切な発言や事実関係については放送前にチェックできるはず。個人名や猥褻表現には不必要なほど”ピー”を入れるテレビ局が、業界全体に打撃を与える発言をノーチェックで通したところに体質が現れている。
この番組(「幸せって何だっけ~カズカズの宝話~」)のフジテレビのリリースによると、「“幸せってなんだろう?”をテーマに、いろいろな情報を提供していく番組」なので、面白可笑しければOKでなく、その「提供」される「情報」には念入りなチェックが必要なはずだ。ここでもプロフェッショナリズムの不在が明からだ。
フジテレビは今後番組内で謝罪するという(毎日)。
この「幸せって何だっけ」のスタッフにあなたの「幸せって何?」と聞けば、「視聴率を上げて給料が上がること」と答えるだろう。それはいいのだが、番組の「幸せ」が他人の「幸せ」と衝突したときにどうするか。例えばホリエモンの「幸せ」がフジテレビの「幸せ」と衝突しそうになったときにフジテレビは必死で抗議したはずだ。「心にしみいるお話をたくさん提供できるよう頑張っていきたい」と制作者は語っていたが、心が寒々とする弱い者イジメの「お話」を実演することになった。
フジテレビは謝罪しましたが、本人はノーコメントのままなのようですね。