おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

グラウンドホッグの予報は信頼できず

2006-02-04 15:58:23 | 動物・ロボット・植物
 2月4日は日本では立春。アメリカでは同じ頃、2月2日が春を占う「グラウンドホッグデイ」という祝日(州による)になっている。なぜ「グラウンドホッグ」なのか? 昔からこの日にグラウンドホッグ(日本では「マーモット」が普通か、上の写真)が穴を出て、自分の影をみるとまた冬眠に引き返す、つまりこの日が晴れていると冬がさらに6週間続き、この日が曇りなら、春が近いといわれてきたから(立春というより啓蟄ですね)。
 要するに2月2日の晴か曇りかが長期予報につながるというわけだが、グラウンドホッグの予報は<今週始めにアトランタで開かれた「第86回米気象学協会」の年次会議で話し合われたが、あまり信用できないとの結論に至ったようだ。>とロイター通信(2月2日)は伝えている。「グラウンドホッグによる天気予報は1887年に初めて記録されて以来続けられているが、その正確性は39%だと研究者の1人は述べている。」からという。我が国の気象庁の長期予報よりは正確とは言え、これでは信じたら損をする。

 ま、この言い伝えは、グラウンドホッグに気象予報士としての働きを期待しているというよりは、一種の風物詩だ。2月2日の晴か曇天かというよりも、グラウンドホッグが影を見るか見ないかという方がはるかに情緒があるし、実際にズバリ「Groundhog Day」という映画まで作られたという。

 日本でもこれにちょっと似た話として、カマキリの巣はその年の積雪を予測するという言い伝えが雪国にある。下の写真のように、カマキリは植物の茎に卵を産みつけるが、大雪の年はあらかじめ高いところにこの卵のうをつけることが知られていた。

 この言い伝えを実際にデーターを集めて研究した人がいる。新潟県長岡市で無線店を経営していた酒井與喜夫氏で、このカマキリの研究で博士号(工学)を取得したというから、もう大まじめな研究である。
 酒井氏は『カマキリは大雪を知っていた』(農文協)、『カマキリが高い所に産卵すると大雪は本当か』(『日経サイエンス』)などで、その研究の成果を世に問うているが、20年間集めたデーターによると、「的中率に相当する相関係数は0.93~0.97と驚く数値になった。この値は取りも直さず、カマキリは数ヶ月先の最深積雪を予知していると言っても過言ではない。」

 まさにグラウンドホッグなど遠くに蹴飛ばしてしまうような途方もない的中率である。しかも積雪量は同じ地域でも、吹き溜まりになるところ、平地など条件によってかなり異なる。カマキリはそのことも完全に「想定内」で卵を産みつけるという。
 なぜカマキリにその様な予知能力があるのかは全く不明であるが、卵の位置は彼らにとって趣味ではなく生き死にに関わる最重要事だ。というのも、雪に埋もれてしまえば子孫は全滅であるし、不必要に高いところに産めば愛する子達が天敵のディナーに変わってしまう。長期予報を「コペルニクス的」に外しても、命どころか減給されもしない気象予報官とは真剣さが違うのである。予報を外したカマキリたちは子孫を残せなかった。「予知能力」の高いカマキリばかりが自然選択されてますますその能力が高まったのだろう。

 人間でも、予言を外した占い師は子供を残してはならないという掟でもあったら、今ごろは100発99中くらいの占い師ばかりになっていただろうが、まっ、外れることもあるから占いは自己責任という当然のルールが確立したわけだ。
 しかしあのホリエモン騒動でライブドア株が下がったが、<「ライブドア株価が5倍になる」などと“予言”していた>超売れっ子占い師が、それを信じて同社株を購入した株主から批判されているという(日刊スポーツ2月4日)。

 「アンタ、そんな低いところに卵産んだら雪に埋もれて子供たち地獄に落ちるわよ」、「何言ってんのよ、アンタこそそんな高いとこに産んだら、カラスに食われて地獄行きよ」とカマキリのお母さんたちは何万年も論争を続けてきたに違いない。とにかく決着はついたのだ。「予言」を外したカマキリは「お家断絶」という結果責任を取らされたのだから。

【付記】
 上記の酒井氏は、カマキリの予知能力は「樹木の振動音」を聞き取っているという仮説の下、その振動音によって長期予報を公開しています。例えば今年の冬の予報はここ
 個人的には「振動音」説には首肯し難いのですが、とにかくこの予報を実際と比べて検証することは可能です。



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1 コメント

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TBありがとうございました (yone)
2006-02-05 20:10:35
TBありがとうございました。

私もTBさせていただきました。



興味深く記事読ませていただきました。

カマキリより占いがハズれてしまった「売れっ子占い師」の話の例えは最高です。
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