桜前線の予報が出される時期になった。ある一つの植物について、これほど詳しくその開花情報が公表され、それが国民的関心になっている国は他にはほとんど見当たらないのではないか。気象庁にとってはプライドを賭けた一種の長期予報だ。
マスコミで大きく取り上げられるのはもちろん気象庁の予報だが、実は民間でも桜前線予報は公表している。一番早いのが「ウェザーニューズ」の「桜チャンネル」の予想で、第1回は2月27日に発表されている(下の図)。一方気象庁のさくらの開花予想第1回は3月1日(上図)。もちろんそれぞれ独自のデーターに基づいて予想を立てる。
そして今年は、異常気象のせいもあるのか、この官民の予想が大きく食い違った。「桜開花予想:気象庁と民間気象会社 予想日1週間もずれる」(毎日新聞3月4日)という記事。確かにずれているのである。末尾にその予想の対比を載せたので、ぜひ実際と比べて、官民どちらの「予想屋」の的中率が高いかご自分でご確認ください。気象庁は平年より早く、ウェザーニューズは遅めの予報を出している。
周知のように気象庁は、今冬の長期予報をこれ以上にないくらい完璧に正反対に外した。これなら「全然分かりません」と答えておいた方がよっぽど世間的な信用を得られたはずだ。ちょうど前原代表が党首論戦の前日に「中味はお楽しみに」と報道陣に宣言して、結局その日の大恥を宣伝したのと同じ効果だ。
自信がないなら言わなきゃいいのだが、そこはお役所としてのプライドなのだろうか。しかし今は「民」でも予報が出来る。「民間に出来ることは民間に」でいいのではないか。
長い間日本では「気象予報」は「官」つまり気象庁の独占だった。ここで言う「予報」とは「観測の成果に基づく現象の予想の発表」(気象業務法)と定義されている。詳しく言うと「時」と「場所」を特定して、今後生じる自然現象の状況を、観測の成果を基に自然科学的方法によって予想し、その結果を世の中へ表向きに知らせることだ。だから例えば占い師のH.K.先生が、「あんた明日外出したら嵐が来て地獄に落ちるわよ」と言うのは、気象業務法上の「予報」には当たらない。また我々が喫茶店で友達に「ウチの猫が顔洗ってたから明日は雨だぜ」と言っても気象業務法上の罪にならない。「観測の成果に基づく現象」による予想ではないし、「世の中」に知らせているわけでないからだ。そして世間に「表向き」でなく知らせる、つまり特定の組織だけに契約して予報を行うことは昔から行われている。
気象予報の民間解放が広く行われるようになったきっかけは、1992年の気象審議会の答申で、そこでは「これからの気象サービスは気象庁と民間気象事業者が適切に役割分担」が謳われた。もちろん現在でも、誰でも「予報」をやってよいというのでなく、気象の予報を業務として実施する者は、気象庁長官の許可を受けること(気象業務法第17条)とされている。そして2006年2月16日現在では、57個人及び業者及び自治体がその「許可」を得ている。ウェザーニューズはその「業者」の一つとして、「官」と競争しているわけだ。
許可制にしているのは、当然気象の予報の当たり外れが生死に関わる(例えば台風や豪雨の予想)から絶対いい加減であっては困るということなのだろうが、その割には例えば今冬の予報のハズレで気象庁長官が辞任したとか減給になったという話も聞かない。確かに気象業務法を見ても、外した場合の罰則規定というのはない。
しかし例えば桜開花予想など、外しても笑ってごまかせると思っている人もいるかもしれないが、このことに生活がかかっている人も結構多いのだ。例えば各地の「桜祭り」。一週間外すとドエライことだ。弁当屋や出店は大損だ。首をくくる人も出てくるかもしれない。あだやおろそかに思ってもらっては困るのだ。
だいぶ昔の話だが、太平洋を航行していたある船舶が台風を避けようと気象庁の予報に従ったのだが、それがまさしく進路の中心に向かってしまったため、沈没するという事件があった。ところが自衛隊は独自の気象予報でこの台風の進路を正しく予報していた。しかし自衛隊は予報を許可された団体でない、と言うかそもそも軍事の世界では気象情報は「秘」扱いで一般に公表することはない。在日米軍もまた独自に台風の進路予想を一般人の読めるWeb上で公開することがあるが、気象庁よりも精度は高いようだ。軍隊の気象予報は作戦の正否と絡むので、命がけだ。単に職業として予報するのと真剣さが違う。技術よりもその差なのかもしれない。しかしいくら「正確」でも軍隊が気象予報会社を兼ねることは決してない。
とにかく今回の桜前線予想対決は注目だ。「官」v.s.「民」のガチンコ対決になったからだ。もしウェザーニューズが圧勝したら、気象庁は報復として同社を「お取り潰し」つまり予報業務認可を取り消すこともあるのだろうか。それともそんなことをすると「お天気屋」だという批判を受けるからやらないだろうか。いや、やはり気象庁は「お天気屋」だろう。
---第1回 桜開花予想----------
気象庁 ウェザーニューズ 平年
東 京 3月25日 3月30日 3月28日
名古屋 3月26日 4月4日 3月28日
金 沢 4月4日 4月7日 4月6日
大 阪 3月26日 4月5日 3月30日
広 島 3月26日 4月3日 3月29日
高 松 3月27日 4月3日 3月30日
福 岡 3月23日 4月2日 3月26日
鹿児島 3月23日 3月30日 3月26日
マスコミで大きく取り上げられるのはもちろん気象庁の予報だが、実は民間でも桜前線予報は公表している。一番早いのが「ウェザーニューズ」の「桜チャンネル」の予想で、第1回は2月27日に発表されている(下の図)。一方気象庁のさくらの開花予想第1回は3月1日(上図)。もちろんそれぞれ独自のデーターに基づいて予想を立てる。
そして今年は、異常気象のせいもあるのか、この官民の予想が大きく食い違った。「桜開花予想:気象庁と民間気象会社 予想日1週間もずれる」(毎日新聞3月4日)という記事。確かにずれているのである。末尾にその予想の対比を載せたので、ぜひ実際と比べて、官民どちらの「予想屋」の的中率が高いかご自分でご確認ください。気象庁は平年より早く、ウェザーニューズは遅めの予報を出している。
周知のように気象庁は、今冬の長期予報をこれ以上にないくらい完璧に正反対に外した。これなら「全然分かりません」と答えておいた方がよっぽど世間的な信用を得られたはずだ。ちょうど前原代表が党首論戦の前日に「中味はお楽しみに」と報道陣に宣言して、結局その日の大恥を宣伝したのと同じ効果だ。
自信がないなら言わなきゃいいのだが、そこはお役所としてのプライドなのだろうか。しかし今は「民」でも予報が出来る。「民間に出来ることは民間に」でいいのではないか。
長い間日本では「気象予報」は「官」つまり気象庁の独占だった。ここで言う「予報」とは「観測の成果に基づく現象の予想の発表」(気象業務法)と定義されている。詳しく言うと「時」と「場所」を特定して、今後生じる自然現象の状況を、観測の成果を基に自然科学的方法によって予想し、その結果を世の中へ表向きに知らせることだ。だから例えば占い師のH.K.先生が、「あんた明日外出したら嵐が来て地獄に落ちるわよ」と言うのは、気象業務法上の「予報」には当たらない。また我々が喫茶店で友達に「ウチの猫が顔洗ってたから明日は雨だぜ」と言っても気象業務法上の罪にならない。「観測の成果に基づく現象」による予想ではないし、「世の中」に知らせているわけでないからだ。そして世間に「表向き」でなく知らせる、つまり特定の組織だけに契約して予報を行うことは昔から行われている。
気象予報の民間解放が広く行われるようになったきっかけは、1992年の気象審議会の答申で、そこでは「これからの気象サービスは気象庁と民間気象事業者が適切に役割分担」が謳われた。もちろん現在でも、誰でも「予報」をやってよいというのでなく、気象の予報を業務として実施する者は、気象庁長官の許可を受けること(気象業務法第17条)とされている。そして2006年2月16日現在では、57個人及び業者及び自治体がその「許可」を得ている。ウェザーニューズはその「業者」の一つとして、「官」と競争しているわけだ。
許可制にしているのは、当然気象の予報の当たり外れが生死に関わる(例えば台風や豪雨の予想)から絶対いい加減であっては困るということなのだろうが、その割には例えば今冬の予報のハズレで気象庁長官が辞任したとか減給になったという話も聞かない。確かに気象業務法を見ても、外した場合の罰則規定というのはない。
しかし例えば桜開花予想など、外しても笑ってごまかせると思っている人もいるかもしれないが、このことに生活がかかっている人も結構多いのだ。例えば各地の「桜祭り」。一週間外すとドエライことだ。弁当屋や出店は大損だ。首をくくる人も出てくるかもしれない。あだやおろそかに思ってもらっては困るのだ。
だいぶ昔の話だが、太平洋を航行していたある船舶が台風を避けようと気象庁の予報に従ったのだが、それがまさしく進路の中心に向かってしまったため、沈没するという事件があった。ところが自衛隊は独自の気象予報でこの台風の進路を正しく予報していた。しかし自衛隊は予報を許可された団体でない、と言うかそもそも軍事の世界では気象情報は「秘」扱いで一般に公表することはない。在日米軍もまた独自に台風の進路予想を一般人の読めるWeb上で公開することがあるが、気象庁よりも精度は高いようだ。軍隊の気象予報は作戦の正否と絡むので、命がけだ。単に職業として予報するのと真剣さが違う。技術よりもその差なのかもしれない。しかしいくら「正確」でも軍隊が気象予報会社を兼ねることは決してない。
とにかく今回の桜前線予想対決は注目だ。「官」v.s.「民」のガチンコ対決になったからだ。もしウェザーニューズが圧勝したら、気象庁は報復として同社を「お取り潰し」つまり予報業務認可を取り消すこともあるのだろうか。それともそんなことをすると「お天気屋」だという批判を受けるからやらないだろうか。いや、やはり気象庁は「お天気屋」だろう。
---第1回 桜開花予想----------
気象庁 ウェザーニューズ 平年
東 京 3月25日 3月30日 3月28日
名古屋 3月26日 4月4日 3月28日
金 沢 4月4日 4月7日 4月6日
大 阪 3月26日 4月5日 3月30日
広 島 3月26日 4月3日 3月29日
高 松 3月27日 4月3日 3月30日
福 岡 3月23日 4月2日 3月26日
鹿児島 3月23日 3月30日 3月26日
確かにウェザーニュースは言い訳が見苦しいとは思いますが、「民」ですからその代償はお客が減ることで支払わなければなりません。つまり「官」による”お取り潰し”の必要はないでしょう。
と、考えるとやはり「官」の予報外しへのペナルティがないのはいかにも不公平という気がします。
開花宣言は気象庁の完全勝利ですね。
冬の屈辱を晴らせてよかったでしょう。
「東京の開花日については反響が大きく、ホッとしているが、大阪や名古屋など、まだ開花していない地域もあり、新数式が正しかどうかは予断を許さない」と余裕の宣言。
それに対して、ウェザーニューズは
「気象庁は1本の標本木だけで判断しているが、こちらは都内355本を見て判定。現段階で23本しか咲いておらず、気象庁の開花宣言は早過ぎる」と醜い言い訳。さっさと誤りを認めろ!
気象庁さん、お疲れ様でした。
今後もがんばって下さい。
もはや永田議員や堀江被告並に堕ちたウェザーニューズは、許可を取り消されることを望みます。
ウチの家族一同も、異口同音にボヤいてます。
「気象庁ってさぁ~、昨夜の予報と今朝の予報が丸っきり違うのに、誰も謝らないんだね。皆、迷惑してるのに・・・」
したがって、どっちかっつ~と、ウェザーニュースの方に軍配を上げてみる今日この頃です。
いや~愉快な桜前線談義、楽しく拝見しました。気象業務法、勉強になりました。博学に感じ入っております。予報の定義なんて面白いですね。特に、結びの一節には思わず声を出して笑いました。
これからも愛読させて頂きます。今後とも宜しくお願いします。