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『ルート・アイリッシュ』-戦争の民営化が更に深刻な貧困と心の荒廃を-ケン・ローチが映像で描き出す

2012-04-22 15:00:45 | 最近見た映画

            【2010年4月18日】  京都シネマ

 『企業が戦争を請け負い、民間人が戦場に派遣される。』-本では読んで知識の上では知っていたが、リアルな映像でより実態に迫る感覚で突きつけられると、大変な世の中に生きているとつくづく感じる。


 「ルート・アイリッシュ」とは、イラクのバグダッドから空港を結ぶ、《世界で一番危険な道路》という。そこで、戦場に派遣された盟友フランキーが不慮の事故死をする。
 その死には、不自然なところがあった。先にイギリス本国に戻ったファーガス(マーク・ウォーマック)は、フラキーの残された妻と共に〈真相の解明〉に乗り出す。

       
 

 コントラクター(民間兵)は、以前は《傭兵》と表現されていて、ずっと昔の戦争からいた、一般にも知られた存在ではあった。しかし、昔の“傭兵”とコントラクターは根本的に違う。
 《傭兵》は、戦争当事者が直接雇用したのに対し、コントラクターは紛争に利益をあさる企業が、一般人を-それも、生活するためにはそれしか選択肢の残っていない貧困層の人々を-戦場に送り込んだ民間兵であるということだ。

 この辺の事情については、『ルポ・貧困他国アメリカ』の第5章《世界中のワーキング・プアが支える〈民営化〉された戦争》がわかりやすく説明している。

 『ブッシュ政権で跳ね上がった軍事費のしわよせは、社会保障費の大幅削減となり、拡大した貧困層の多くは、教育や医療、最低賃金を求めて軍隊に入隊している。
 また、予算削減などにより高騰する大学費用と医療費で破産した人々や、家を差し押さえられた人々は、高給派遣社員となってイラクやアフガニスタンの戦場に派遣されていく。「経済派兵制」が戦争を支え、そこで利益を得る事業主達がビジネスの継続のためにあらゆる働きかけを行うループができているのだ。
 戦場から帰国したそれらの人々は、社会保障の未整備と失業率の高い社会のなかで受け皿もなく、ホームレスになる者も少なくない。帰還兵の自殺率はすでに戦場の死亡率を超えている。そうした状況のなか、イラクからの撤退計画を明確に打ち出したオバマは、人々に戦争終結のイメージを抱かせた。・・・(後略)』(「続・貧困大国アメリカ」P-5『プロローグ』より)

 戦争の民営化のもう一つの、政府側の利点は、〈戦死者の数に、正規軍でない民間の《派遣社員》の《戦死》は統計に上がってこない〉ということである。(『ルポ・貧困大陸アメリカ』第5章 P-170)
 他にも、民営化のもたらす危険な内容が挙げられている。


 やはり、映像の力というのは迫力があるし、わかりやすい。どうして民間人を簡単に殺してしまうのか。イラクやアフガン戦争の帰還兵にPTSDが多いのか。
 
 まともな神経では生き延びていけない戦場の恐怖と、この世の現実の恐ろしさがそこにある。



  
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    『ルート・アイリッシュ』-公式サイト









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