この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『オフィシャル・シークレット』ーイラク開戦の不正を糺した英国諜報機関で働く1女性の勇気と、リーク記事を掲載した英断をたたえる!

2020-09-05 23:14:35 | 最近見た映画
      【 2020年9月3日 】    京都シネマ

 ブッシュ・アメリカ大統領がイラク開戦を今まさに仕掛けようという直前、実際にイギリスで起きた「キャサリン・ガン(告発)事件」を題材にした映画である。

 2001年9月11日、同時多発テロ事件が発生して以降、米国政府はテロへの報復感情からフセイン大統領が大量破壊兵器を開発していると喧伝し、イラク戦争開戦に向けあらゆる手段を講じていた。そして国連でパウエル国務長官が演説をし、お墨付きを与えられたブッシュはイラクを攻撃したことは周知の事実である。あっという間にフセイン政権は倒され、その後のイラクは混乱を極めていて、ISの台頭やテロリズムの嵐が吹き荒れる端緒を作った。
 見る前は、主役がキーラ・ナイトレイでは以前のイメージからすると、ちょっと違うのではと思ったが、何の何の全編2時間、緊張の連続で見事に演じ切っていた。

 話の概要を「公式サイト」から引用すると、

   2003年1月。英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)で働くキャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)はある日、
  米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から送られたメールを見て愕然とする。英米がイラク侵攻を強行する
  ため、国連安全保障理事会のメンバーに対するスパイ活動を指示するものだった。その内容に憤りを感じた
   キャサリンは、元同僚の友人を訪ね、マスコミにリークしたいと相談する。
  2週間後、メールの内容が英国「オブザーバー」紙の一面を飾った。マーティン・ブライト記者(マット・スミス)
  の勇気ある告発記事だった。
   英国の諜報機関GCHQでは、リークした犯人探しが始まり、職員一人一人への執拗な取り調べが繰り返された。
  キャサリンは、自分の仕事仲間にまで尋問が及ぶ状況に耐えきれず、自ら「リークしたのは自分だ」と名乗り出る。
  しかし、キャサリンの告発も虚しく、イラク侵攻は開始され、キャサリンは起訴される。
  キャサリンを救おうと人権派弁護士ベン・エマーソン(レイフ・ファインズ)らが立ち上がった。政府内の取材を
  するなかで、キャサリンの無実を確信していくが、相手は政府、簡単に勝てる相手ではない。
   2004年2月25日、裁判が始まった。果たして、キャサリンは有罪か、それとも無罪か。しかし、驚きの結末が
  待っていた。

                            



 イラク開戦の口実であった「大量破壊兵器の存在」はその後の調査で全くの”でっち上げ”であることが今では明らかになっているが、その一方的な攻撃で子供を含む無垢の市民が50万人以上も虐殺されたという事実を考えると、この告発の意味の重大さがわかる。
 過日、『中東テロリズムは終わらない』という本を読んだ。そこには、9.11で頭に血がのぼったブッシュやペンタゴンをはじめとするアメリカ上層部の好戦派がいかに【開戦の口実】を作るのに躍起になっているかがわかる。そこには、いかに出鱈目な情報が作られたのか事実に基づいて克明に描写されている。その情報は、パウエル長官(パウエル長官自身は開戦に乗り気でなかったらしい)が国連で演説をする直前には《全くのでっち上げ》であるとわかっていたにもかかわらずイラク攻撃を始めたのである。

 この映画は、イギリス国内で実際に起こった事件をもとに、イギリスサイドから描いたものだが、アメリカにも同様の映画がたくさんある。その中で、昨年日本で上映された映画で『記者たち』が、やはりマスコミが奮闘するさまが描かれた印象的な作品だった。

              
                     
                                         

                
                      

 ベトナム戦争の機密事項のリーク事件に関しては『ペンタゴン・ペーパーズ』があった。こんな映画を見ると、日本のマスコミ・新聞社はどうして真実を追求することができないのだろうかと思う--こと、アメリカとの関係との事柄において。             
                        


 懐かしい俳優も出ていた。『ナイロビの蜂』に出演した頃のレイフ・ファインズに比べるとすっかり歳をとり、大分様子が変わっていて始めそれとは気づかなかったが、やはりいい味を出していた。

                       


 映画の最後に本物のキャサリン・ガンの映像があった。今、進行形で読んでいる本『KBGの男』(下の写真)に、イギリスの情報機関の「MI5」とか『MI6」の内部の様子の描写場面が出てくるが、映画の中のリアルな映像(もちろん本物ではないと思うが)を見ると、そんな緊迫した場面で、よくぞリークしてくれたかと興奮する。

             【 公式サイトより 】


   

   


  
  『オフィシャル・シークレット』ー公式サイト

  
  『記者たち-衝撃と畏怖の真実』-公式サイト



   前回の投稿から2か月以上経過してしまった。この間、書きたい記事もたくさんあったのだが、パソコンの前に座っていられる
  時間がなかなか取れなく(忙しいわけでも、特別大きな病気や怪我をしたわけでもないのだが)、例の低周波音の影響?で座って
  も集中力が今一つで気力が伴わず、時間だけが経過してしまった。やむなく家の外で時間を過ごすのだが、一旦家の外に出れば気
  分は晴れる。だから映画も見るし、本も沢山読める。ネット環境でパソコンが使えないだけである。(通常、電波の届かない郊外
  とか山の中、場合によっては映画館の中とか、そういう所にいる。だから、ブログを書くタイミングが取れない)
   映画では「コリーに事件」(6/20)、「名もなき生涯」(8/12)と名作に出会い、ぜひ紹介したいと思っていたが、だんだん
  遠くに行ってしまった。本では、「インドネシア大虐殺」や「サイクス・ピコ協定」等の池内恵の本と、「女帝小池百合子」をは
  じめとする石井妙子の精緻な感動作を数冊読んだが、いずれも書評を書くまでには至らなかった。
   社会も動いている、安倍首相も辞めたが問題は未解決のままだ。新型コロナで世の中も大きく変わっていく。
   体調と気分が戻ったら、またぼちぼち書こうと思っている。






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