河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

歴史36 戦後/ 祭りじゃ俄じゃ➁

2024年01月09日 | 歴史

※連載ものです。①から順にお読みください。
小学校の高学年ともなると、少し大人になるのか、体温調節機能が少しずつなくなって寒い。
そこで、金剛山が白くなるような日は、町内の集会所で遊ぼうということになる。
集会所といっても、木造平屋・瓦ぶきの建物で、暖房も無いから気温は外とさほど変わらない。
ただ、雨風はしのげるので寒い日の格好の遊び場になっていた。
当時は、どこの家も戸の鍵を締めなかったから、会所も鍵がかかってなくて出入りは自由にできた。
20畳ほどの広間があるだけで、これといった遊び道具は無かったが、何十枚とある座布団をビー玉に見立てて陣取りしたり、瓦に見立てて瓦当てしたり、座布団で三角ベースをつくってピンポン玉を打って野球をしたり、無いなら無いなりに遊びを考えた。
一通りで遊んで、最後は必ず座布団投げになった。
一回当てられると、その場にしゃがんでお休みという単純な遊びだが、修学旅行の枕投げ同様に変に盛り上がる。

その日は、開始前に何人かでこそこそと話し合って、いつも最後に残るシゲちゃんを集中攻撃しようということになった。
トモやんの「竜ケ森に出現した赤と青の球体! 宇宙怪獣ベムラーだ!」の声を合図に、みながシゲちゃんめがけて座布団を一斉に投げる。
幾つか当てられたシゲちゃんが、その場にバタっと倒れた。
そして、床の間に置いてあった懐中電灯を持っと! 膝まづいて叫んだ。
「パトロール中の衝突事故により命を落とした科学特捜隊のハヤタ隊員。ウルトラマンと一心同体となり蘇る。宇宙怪獣ベムラーを倒せ!」
ベムラーはいつの間にかハヤタ隊員になり、宇宙警備隊員のウルトラマンに変身する。
子どもの遊びは早い者勝ち、やった者勝ちだ。
ハヤタが懐中電灯をかかげてスイッチを押すと、淡い光が天井を照らす。
そして、じっとしている。
頭の中では光のエネルギーのベーター線が、体の周りを渦巻き状に包み込んでいるのにちがいない。
しばらくすると、グングングンと立ち上がり、シュワッチと低く跳んで半身に構える。
トモやんが咄嗟に「あっ、ウルトラマンだ!」と叫ぶと、その意図を察して、皆がまた一斉に座布団を投げた。
幾つも当てられたウルトラマンは、三分もしないうちにバタっと倒れて情けなく叫ぶ。
「なんでやねん!」
それと同時に表の戸がガラガラっと開いた。
「おまえら何しとんねん!」
春やんだった。

松葉色の作業着の上に青いジャンパー、その上に紺色の消防団の法被という出で立ち。
その後ろに同じ格好をした町内のオッチャンが四人。
そのうちの一人が「えらい派手にやらかしてるやないかい!」と怖い顔で言う。
これからどのくらい説教されるのかと我々は小さくなる。
別のオッチャンが「まあまあ、ワシらも昔にやったやないかい」と笑って言う。
我々は少し安堵して頭をかく。
すると、春やんが「そこら、ちょっと片づけ!」とにらむ。
我々は再び小さくなって、こそこそと座布団を片づける。
春やんたちは各自が座布団を一つずつ拾って、広間の真ん中に円陣になって座る。
「おまえらも座布団持ってきて、そこに座れ!」と春やんが言う。
やっぱり説教が始まるのだと、皆は座布団を持って、春やんたちの横に円陣に座る。
春やんが立ち上がり、大きな紙袋を持って我々の所に来て、紙袋の中身を畳の上にドカっとぶっちゃけた。
※③につづく

コメント
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