■「東横線中目黒駅拡張工事」 (その1)
以前のエントリーで、中目黒の開発事業は複数のものから成ると述べた。
それぞれについて、少しずつ見ていこう。
まずは、現在、一番物議をかもし出している「ガード下工事」から。
ブログでは
「ホントの立ち退き理由はなに?耐震補強ってのは…でしょ~、…ちょっとキレイにして、母体が大きく安定して賃料の取れるツマんないチェーン店を入れるの?」(⇒該当ブログへ)
「今回の再開発はガード下のお店をことごとく潰して恵比寿ガーデンプレイスのようなものを作るとか。」(⇒ブログへ)
「あの高架下もいい感じだったのに、歴史を簡単に壊してしまうのも、風情を壊す事も開発なのでしょうか?」(⇒ブログへ)
『「再開発」って街を「活性化」することが目的ですが(とおもっておりますが)中目の高架下につらなるお店の来る人呼ぶ人に「活気」はありませんでしょうか?!』(⇒ブログへ)
などと言われている工事である。
しかし、この工事、あまりにも誤解が多く、誤った情報が蔓延している。
公式な発表によれば、工事の目的は以下の通りである。
- 高架橋の耐震工事
- 2012年に東横線と新しい地下鉄が直通運転を始めるための準備工事(ホーム延長と拡幅)
すなわち、以前述べた通り、この工事は厳密には開発・再開発ではない。
また、終了後にどんな店が入るかは、公式には全く決まっていない。
したがって、ブログで言われているような批判は、現状の公式発表から見る限りは、筋違いな批判である。
以前にも触れたとおり、この工事は、東急が事業主となって行っているものであり、地元とは一切関係がない。東急は、元々地元への情報公開は積極的ではないため、地元でも正確な情報をイマイチ掴みきれずにいる。結果、それが余計な憶測や噂の元になり、的外れな批判を生む一因にもなっていると思う。
中目黒付近は、東横線開業の昭和2年から高架線だったということであるから、この頃の建築物がそのまま残っているとすると、築80年となる。
日比谷線開通時に作り直した部分にしても、日比谷線が昭和39年開業だから、築40年以上である。鉄道建築物の耐用年数はかなり長いようではあるが、それでも古い施設であるとは言えよう。
メンテナンスが必要という公式発表には頷けるものがある。
■公式発表はどこまで信用できるか
もちろん、現状の公式発表は、所詮は「現状」で将来変わる可能性があるし、いわゆる「大本営発表」「建前」の側面を持つ可能性はある。
いくつかのブログが言う「中目黒ブームに目をつけた東急の、金儲けのための再開発」という主張は正しいのだろうか?
それとも「再開発」論はただの「陰謀論」で、事実は単なる耐震工事なのだろうか?
単なる耐震工事であると信ずる根拠はいくつかある。
- 同時期に、沿線各地で同様の耐震補強工事が行われていること
- 工事範囲が駅前に限らず、広範囲に渡っていること
(1)について言えば、例えば、都立大学ガード下の東急ストアも、似たような耐震補強工事で、一時仮店舗への移動を行っている。
また、鶴見川の橋梁の補強工事も実施されているとのことである。
学芸大学付近でも耐震補強工事をやったという話もある。
そもそも、東急のH.17.3.20の運賃改定申請のP.15の中でも、平成16~19年にかけて、東横線の広範囲にわたって高架橋の耐震補強を実施することは記載されている。
すなわち、工事は中目黒のガード下に限ったことではないということである。故に「中目黒ブームに目をつけた東急の再開発」説は棄却される。
(2)の観点で言えば、現在、立ち退きが進んでいるのは以下の範囲である。
(Yahoo地図情報より作成)
駅前から、中目黒~祐天寺の中間に至る範囲にまで及んでいる(点線の部分は取材不足のため未確認)。
噂の一つである「東急ストアが入る」にしては範囲が広すぎるし、駅前はともかく
中目黒~祐天寺の中間点まで東急が再開発しても旨みはないだろう。
この意味でも、「中目黒ブームに目をつけた東急の再開発」説は棄却されるのである。
■では単なる耐震工事のみなのか?
以上の考察からすると、単純に「耐震工事」ということになりそうだが、一方で、疑念を感じる部分も存在する。
単に耐震工事であれば、工事後、賃借人を元の場所に戻しても構わないはずである。ところが実際には、賃借人が元に戻るどころか、工事後がどうなるかすら、未だに発表がない。
発表がないのは、実際にまだ決まっていないのかもしれない。しかし、「地元には言えない何かを、東急が企んでいるのではないか?」という疑念もまた、否定する根拠がない。
ここでポイントになるのは、工事の第二の目的「2012年に東横線と新しい地下鉄が直通運転を始めるための準備工事(ホーム延長と拡幅)」かも知れない。
引き続き、この部分について、考察を進めることにしよう。
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