中目黒再開発の事実

中目黒の再開発・工事について。少しでも事実を伝えられれば…。

改札問題の背景にあるもの

2008-12-26 03:29:22 | 中目黒再開発
中目黒駅の改札増設問題を考える時、二つの側面から考察することが可能であると思う。

一つ目の側面は、実際に中目黒駅の設備が、乗客数に対して過小であるという点だ。中目黒駅からの乗降客はもちろん、日比谷線-東横線を乗り継ぐ客で、朝夕のホームは間違いなく危険な状態にある。私は詳細は知らないが、実際に転落事故も起きたことがあると聞いた。今後、再開発が進み、住民数が増えた場合、現行の「一つの改札」と「狭いホーム」では、早晩破綻が起きることは容易に想像が付く。
その意味で、改札の増設や、ホームの拡幅を求めることは、全くもって妥当なことである。

しかし、改札増設を考える上でもう一つの側面がある。それは、中目黒の街が山手通りによって分断されているということであり、かつ、その解決に都市計画が失敗した、ということなのである。

署名運動が改札を要求する一つの理由として「山手通りの横断が危険」というのを挙げているが、これは街が山手通りで分断されていることが問題というだけであり、本来鉄道会社や改札の有無とは関係のないことだ。あくまで、街の活性化の問題として解決しなくてはいけないことである。

この問題はけして放置されてきたわけではない。むしろ、古くから議論に挙がっていたことである。実を言えば、中目黒の再開発計画は、この「街の分断の解決」を一つ重要な課題としていたのである。しかし、ご存知のように今回の上目黒一丁目・二丁目(GT)の再開発で街の分断が解決されることはなかった。つまり、再開発の都市計画は、この問題の解決に失敗したのである。

もともと、中目黒に再開発の機運が高まったのは、昭和50年代の前半であった。この頃結成された「中目黒を良くする会」の一つのテーマは、中目黒の再開発であったという。この当時に描かれた「再開発の素案」では、「現ツタヤビル」「元富士銀行」「上目黒二丁目(=現GT)」「上目黒一丁目地区」の辺りまでを一体化して開発する計画(といっても「夢」に近い計画だが)だったのである。そして、山手通りの上に人工地盤を構築し、上目黒一丁目・二丁目の分断を解消しようと考えたのであった。


赤い範囲が「夢」の再開発区域

しかし、その「夢」は実現することはなかった。多くの地権者の思惑が交錯し、議論はまとまらず、まず「現ツタヤビル」「元富士銀行」が計画を離脱して独自にビルの建築を始めてしまった。残った「現GT」「上目黒一丁目地区」も何度も一体開発を模索しながら、結局は、各々、別計画での開発になってしまった。これが「都市計画に失敗した」という所以である。

別開発になったあとも、この二つの街をつなぐ人工地盤デッキないしは歩道橋の大きいものを実現しようという動きはあったが、これは主に資金面の問題で実現しなかった(ただ、一説には、この上目黒一丁目・二丁目の両方の再開発の設計を行った日本設計では、人工地盤デッキを後から付け加えられるような構造を設計に仕込んである、という噂もある。つまり、資金面の目処がつき、両町会が街を結ぶことを欲すれば、デッキを作ることができるような設計が完了しているという。あくまで日本設計の担当O氏がそう言っているらしいということで、真偽の程は不明であるが)。

一応、平成13年の都議会会議録では


〇都市計画局長(山下保博君)
中目黒駅前再開発におけるペデストリアンデッキの整備についてのお尋ねでございますが、事業中の上目黒二丁目地区に加え、一丁目地区が昨年八月に都市計画決定されたところでございますが、今後、両地区の再開発の進展により、歩行者需要は増大するものと見込まれます。
 この地区のペデストリアンデッキについては、目黒区が策定した再開発基本計画に位置づけられておりまして、今後、区を中心に可能な事業手法が検討されるものと考えております。
 都といたしましては、ご指摘の点も踏まえ、両地区の一体性の向上が図られるよう、技術面も含め、必要な支援に努めてまいります。


というコメントが見えるのだが、結果としては何も作られることはなかった。こうして都のコメントを見ると、どこか他人事に見えるのは私だけであろうか?

なぜ、街の分断解消という、一見「良さそうな」アイディアが実現しないのだろうか。

これは、一口に言えば「資金面の問題」「計画の大変さ」の問題であるとは言える。資金面については言うまでもないだろう。「計画の大変さ」とは、山手通りのような幹線道路の上に人工地盤を作るとなると、いろいろ「関係省庁」が出てきて、その調整が大変らしい。例えば「地震で人工地盤が崩れて幹線道路が寸断されることがないように」等という要求に応えていかなくてはいけないから、大変、ということだ。

だが、実は、根はもっと深いところにあると、私は考えている。それは上目黒一丁目側と二丁目側の「温度差」というべきものである。

街の分断があって主に困っているのは誰かといえば、主に改札を持たない上目黒一丁目側なのである。誤解を恐れずに言えば、上目黒二丁目側は、現状維持で別に困ることはないわけだ。

実は再開発の話以前(30年以上前)に、山手通りに歩道橋をかけないか、という話があったらしい。場所は、目黒銀座の入り口と、再開発前のみずほ銀行の前辺りを結ぶものである。ここは、山手通りが拡幅して、駒沢通りのアンダーパスが出来る前には横断歩道があったらしく、それを歩道橋で復活しようというものだ。

しかし、この案は「二丁目町会の反対にあって潰された」(一丁目町会関係者談)のだという。当時、一丁目側には、ダイエーや、当時は隆盛の頂点にあったウオツネがあった。そのため二丁目の目黒銀座商店街店主たちは、それらに客を奪われることを恐れ、歩道橋の建設に反対した…というのである。街が一体化して隣町に客を奪われることを忌避したわけだ。二丁目側としては、むしろ街の分断こそが自らの商店街を守る生命線だった、というのである。

当時は「街の回遊性を高めて、相乗効果で他の街から客を呼ぼう」という考え方はなく、逆に、「地元の客をいかに囲い込むか」を考えるのが主流の時代であった。だから、人の流動性を高める歩道橋などもっての外だったのだ。

もちろん、これはあくまで、一丁目側の人物から見た話だから、真実とは異なるかもしれない。しかし、少なくとも「一丁目側の人物から見た、二丁目の人々の姿」は読み取れる。そして、その根底にある二つの町会の関係も読み取れるではないか。この二つの町会は、けして一枚岩で仲が良いわけではなく、むしろ利害対立関係の中で存在していたとも言えよう。

それからもう30年も経ち、両町会の商店街も様変わりした。先に述べた通り、今は「街の回遊性」向上が言われる時代でもある。中目黒の街を全体として盛り上げていこうという機運も確かにある。

しかし、やはり「街の分断の解決」を叫ぶ時、改札を持つ町会と、持たない町会とで、温度差を感じずにはいられない。

今回の改札の署名では、近隣町会の賛同も得ているというが、二丁目側・目黒銀座商店街側から、いったいどれだけの署名を集められたのだろうか。おそらくは、低調な集まり具合ではないだろうか。代官山側の改札は、一丁目側の人物にとっては悲願であるが、二丁目側の人物にとっては「どっちでも良いこと」なのではなかろうか。実際のところは分からないが。

果たして、中目黒の街の分断問題に、皆が本気で取り組む日は来るのであろうか。
願わくば、中目黒に住む全ての人が、自町会の都合のみを考えるのではなく、「中目黒にとって何が良いのか」を考えて欲しいものである。

中目黒の改札問題には、そんな根の深さもあるように私は思うのである。

改札署名の件・補足2

2008-12-16 21:11:49 | 中目黒再開発
改札署名の件だが、その後、いろいろな方面から情報が入ってきた。
一番、分かりやすくまとめているのは東京新聞の記事だろう。

『安全守る新改札を』 中目黒駅

この記事や街頭での話しによれば、署名の提出先は東急だけではなく、国土交通省への陳情も考えているとのことである。また、記事を見る限り、区の方も支援に回っているようだ。

こういう活動になっているというなら、それなりに署名にも納得がいくし、応援しようという気にもなる。
少なくとも、完全な無駄な活動にはならないだろう。

あえて難点を言えば、こういった活動の広がりがあることが、街頭の署名活動からは分かりづらい所である。せめてビラでも作って、代官山側改札のメリット・デメリットや活動の概要について訴えれば良いと思うのだが、今日、覘いた限りでは特にビラのようなものは用意していないようであった。その意味で、署名から唐突で安易な印象を受けてしまう。

さて、活動の広がりは思ったよりもあったとは言え、しかし、やはり署名で簡単にいくようなものではないのは動かしがたい事実だろう。先の東京新聞の記事のまとめが、まさに現状を的確に描画していると言えるのではなかろうか。


区は駅利用者の安全のため改札口が「ある方が望ましい」との見解。周辺商店街から十一月に再び協力要請を受けた青木英二区長は「あらためて東急に地元の意向を伝える」と答えたが、鉄道会社として現実的に難しい事情も分かりながら、区として多額の財政的支援もできない懐事情もあって、対応に苦慮している。

改札署名の件・補足

2008-12-11 21:56:17 | 中目黒再開発
繰り返すが、私は代官山側改札を欲しいと思っているし、故に、署名運動を全否定するつもりはない。

今日は朝から街頭に立って活動をしておられたようだ。今までは昼間に署名活動をしていたが「その時間に中目黒に居ないから」という声が多いのを受けて、活動時間を変えたのだと思う。朝から街頭に立って署名を訴える姿は、正直に頭が下がる思いだ。彼らの「中目黒愛」には、一切の疑いを挟む余地が無いように思う。

だからこそ、惜しいのである。
せっかく結集したパワーが実効性のないものになってしまうことが。

改札設置の署名に疑問

2008-12-11 02:12:55 | 中目黒再開発


最近、中目黒駅のガード下で、代官山側改札口設置の署名活動が始まったようだ。
地元商店街や有志が中心となっているらしい。
しかし、私はこの署名活動に大いに疑問を感じてしまう。

誤解頂きたくないのだが、私は代官山側の改札口設置に大賛成である。
ここ数ヶ月、本ブログの更新が止まっていたが、それは「中目黒駅の改修が極めて小規模なもので、代官山側の改札口も出来ないことがショックだったから」と言っても過言ではない。それくらい、私は、代官山側に改札ができるのを期待していた。

だから、署名活動を全否定するつもりはない。
ただ、「ビジョン」という面と、実効性の面で疑問を感じるのである。

今回の改札非設置の理由は、単に東急が「やりたくない」というだけのものではない。現実問題として、ホームが狭すぎて階段の設置はできないのである。逆に言えば、「新改札口を設置する」ということは「中目黒駅の構造を抜本的に見直す」ということなのだ。そして、それはとりもなおさず「東横線ガード周辺の街の構造を抜本的に見直す」ということだ。

思いつきで署名をして成し遂げられるような簡単なものではない、もっと深刻な話なのである。

具体的に言えば、新改札を作るためにはホームを大きく拡幅する必要がある。つまり、中目黒駅周辺の高架橋を大きく拡幅しなくてはならない。図では以下のようになる。



この図の青い部分と赤い部分の、片方、または両方について、東横線の高架橋を拡幅しなくてはならない。つまり、この街を立ち退かなくてはいけない人がまた出るということだ。例えば赤い部分を立ち退かせるとしたら、サルバトーレやchanoma、ウオツネといった店が、最悪、中目黒で営業できなくなるのだ。それで良いのだろうか。少なくとも、もっと考えて行動するべきことではないのか。

ガード下の立ち退きの時は、惜しむ声や批判の声が上がった。ところが、改札設置の話となると、誰も批判をする人はいないようだ。それは、とりもなおさず「改札設置=新たな立ち退き」ということまで頭が回っていない人ばかりだからではなかろうか。その意味で今回の署名活動のヴィジョンには甘さを感じるし、いわば能天気で思慮が浅いと感じてしまう所以なのである。

署名に携わっている人の中には「技術的、経済的にも解決しなければならない点は多い」と認識している人もいるようだ。しかし、そうであるならば、そういった課題に対して何がしか対案を出すのが、反対するものの義務ではなかろうか。東急の決定には反対だが、課題に対しては、思考するのを止めて、誰かが解決案を出すことに期待する、というのは、若干虫の良い話に思えてしまう。

また、こういった「新改札を設置するに当たっての課題・デメリット」を、署名を求める際にキチンと説明しているのかも疑問だ。改札設置という聞こえのいい話に賛同が集まるのは当たり前のことだ。費用負担や立ち退きといった「影の部分」を説明せずに集めた署名にどれほどの意味があるだろうかと思うし、「聞こえのいい話」のみ聞かせて思考停止した人を釣るやり方は悪徳開発業者と何ら変わらないと私は思う。

「中目黒を愛する人は署名を」と言う。しかし、その思考停止・課題先送りの署名は「中目黒を愛する」ことになるのだろうか?
真に中目黒を愛するとは、問題を理解し、問題に向き合うことではなかろうか。

仮に署名が一定数集まったとして、その実効性にも大いに疑問符が付く。

当人達が自覚している通り、技術的、経済的に大きな課題があるのを放置して署名だけ集めても、東急が動くことはないだろう。というよりも、東急一社で背負える課題の大きさではないだろう。実際、人を立ち退かせて高架橋を拡幅するなど、都市計画立案などで都や区のバックアップがなければ出来る事業ではない。とすれば、署名で動かすべきは東急ではなく、区や都であるということだって考えられる。

東急としては、中目黒駅の混雑の問題は、単に「一私鉄の駅の問題」としては扱いきれないとギブアップしているのだ。とすれば、地域の公共インフラの整備として捉えるように動かなければ話が進展するわけもない。まさに地方行政のリーダーシップこそ必要とされている状況というわけである。もちろん、その場合、税金から費用が負担されるという問題が発生するわけであるが。
(また共産党あたりが「一私鉄の駅を税金で整備してやるとはけしからん」などと、反対のための反対を行うのではないか)

以上のように、私は、今回の署名については大いに疑問を感じてしまう。まぁ「何もしないよりは署名でもした方がマシ」というのも一理なくはないから、全否定はしない。

しかし、課題に向き合うでもなく、実効性もない署名を集めることが、単に「自分はできることはやった」という言い訳に使われはしないか。「改札はできなかったけど、俺たちは声を上げたんだ」という自己満足のための署名になりはしないかと懸念してしまう。

パワーを集めるのは良い。が、そのパワーの方向が本当に正しく実効性のあるものか、パワーを集められる立場の人には、よく考えてもらいたい。そのように、せいぜいブログで嘆くしかない「パワーを持たない」私は感じるのである。

上目黒一丁目再開発状況

2008-12-09 01:22:11 | 中目黒再開発
上目黒一丁目の再開発もだいぶ建物が出来てきた。



アリーナ棟(A棟)は工事の覆いも半分ほど取れて、後は内装工事という段階になっているようである。完成は来年の4月を予定しているらしい。



アトラス棟(B棟)はもう35階あたりを工事中のようだ。1ヶ月でおよそ5階分くらい工事が進むので、あと2ヶ月もすれば最上階まで完成することになる。完成は来年の10月か11月頃のようだ。



C棟は区営住宅になるという話である。こちらもだいぶ工事が進んできている。完成時期は不詳(後で調べておきます)。