ひねって・焼いて・陶

陶芸の様々な技法、釉薬、お会いした陶芸家の方々の話等々、私が陶芸で学んだこと、発見したことなどを綴ります。

陶芸家・大石訓義 

2015年04月22日 | 陶芸家
今までにない陶芸家に出会った。この人がやっているのは伝統工芸でも、現代陶芸でもないし、クラフトデザイン
の陶芸でもない。当てはまる言葉がないので強いて言えば、古窯陶芸だろうか。大石氏自身は、「古窯の研究と古陶
の再現に基づいた陶芸」という風に形容されている。古窯の研究とは、有名な六古窯が栄えるよりさらに以前に日本
の官窯として初めて釉薬を用いて高温焼成を行なったとされる愛知県の猿投古窯を、その土、釉薬、窯、成形技法
から時代的な背景に到るまで、陶芸家としての視点で深く調べている。そしてそこから当時の古陶を限りなく本物に
近い形で再現し、そのノウハウを基に本人のオリジナリティを加えた作品を作られているのだ。

先日、豊田市民芸館で開催中の「よみがえる猿投窯 陶芸家・大石訓義 作品展」で初めてその作品を見た時、たい
へん美しく、且つ洗練されていると感じた。古陶の総合的な研究の奥深さもさることながら、作家としての力量も
素晴らしい。その後で彼が書いた本「猿投古窯-日本陶磁の源流」を読み、今までほとんど何も知らなかった六古窯
以前の焼き物の世界に興味が増したので、大石氏自身による説明会を聴きにもう一度豊田市民芸館へ足を運んだ。

説明会の会場で、先ずは芳名録に記帳をしていたら、大石氏が来て話しかけてくれて、少しお話しすることが出来た。
僕は元自動車デザイナーでクラフト系の陶芸をやっていると話すと、工業デザインは機能に基づいて形をデザインする
というところに興味を持っているとの返事。さらには、桃山時代をより所とする伝統工芸には情緒的なところが強くて
自分はあまり関心が無い、と言うので意外に感じた。日本の陶芸で「写し」、つまり陶器の再現と言えば千利休や
古田織部に代表される桃山の器の再現と同義語に近い。僕はこの人はそれに近いことをやっているのかと思っていた
けれどそうではなかった。彼は結構研究者的な考え方を持っている人のようだ。

大石氏が書いた本の終わりの方に、美や芸術とは何かということについて、脱線と断っている割には結構ページを割
いて書いてあるのだが、独自の視点がなかなか興味深かった。誰も足を踏み入れたことのない分野に飛び込んで我が道
を切り開いてきた大石氏の眼力とチャレンジ精神に敬服する。

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