ひねって・焼いて・陶

陶芸の様々な技法、釉薬、お会いした陶芸家の方々の話等々、私が陶芸で学んだこと、発見したことなどを綴ります。

辻晋堂の陶彫 展

2020年05月31日 | 陶磁器展示会

陶の像がとても良かった。知的で粋で味がある。軽妙洒脱と言うか、作者が愉しんで作った結果が作品に表れている。この人の代表作は抽象の陶彫刻で、それはそれで見応えがある。しかし、最後にたどり着いたのが本人曰く、粘土細工。

---近年になって私の考へは又又變ってしまって「彫刻」といふよりも幼児の粘土細工のやうなもになってしまった。だから「彫刻」といふシチ難しい考へを捨てたと云ってもいい。「彫刻」になってゐなくたって一向に構はない。却ってその方がいいと私は思ふやうになったのだ。肩肘を張って構へることはない。それで、作るものの大きさも、以前のやうに無暗に大きなものを作らうとしない。焼物は自分の兩手で持ち上げられないやうな重いものは作らない方がいい。---

芝居の登場人物、木陰で寝転んで読書する人物、工房にいる自分と猫、横山大観、人斬り以蔵などモチーフは様々。正に肩ひじ張らずに自分の関心の赴くまま作陶するスタイルが良いなと思う。これは歳をとって創造意欲が衰えたのか、それとも円熟の境地なのだろうか。少なくとも、ありのままの自分に向き合っていると感じる。

 

http://www.shindo-tsuji.net/index.php?lang=jp

 

 

 


岡崎達也展 セラミックデザインとクラフト

2019年06月12日 | 陶磁器展示会

肩書はセラミックデザイナー。その肩書通り、作品からデザイナーらしさをつくづく感じる。ランプシェードは、泥漿を鋳込む際に気泡をこしらえ、それを螢手に仕上げているとのこと。気泡はスチロール玉を利用しているとの説も聞いたが、いずれにしろ発想が独創的。どの作品にもその作り方、使われ方、表現の仕方に創意工夫がある。理屈っぽさが自分の強みだと言い切っておられるところに潔さを感じた。今年2月に急逝された陶磁器デザイナーの栄木正敏さんを師と仰いでおられ、森正洋氏からの流れを受け継いでいる方だと思う。また、展示が美しく分かり易いところにも感心した。


フィンランド陶芸展・マリメッコ展

2019年02月06日 | 陶磁器展示会

 フィンランドと言えばカイ・フランク、アラビア製陶、アアルトくらいの知識だったけど、この展示で国の成り立ちを含めてより深く知る事が出来た。

陶芸展の色々な作家の展示作品は多種多様だけれどそこ共通するフィンランド的感覚を感じる。美しくエレガントで楽しい。

マリメッコ展は写真ok。分かりやすくカラフルで綺麗。マリメッコデザイナーがデザインした茶室がカッコ良かった。掛軸にマリメッコとは新鮮。

一緒に観に行った元スエーデン在住の井出君によると、フィンランドはスエーデンとロシアからの支配を経て独立した苦労人の弱小国で、民族としてはヨーロッパ系だけれど言語はアジア系というアジア寄りの国との事。日本にはコアなフィンランドびいきの人がいるが、フィンランドも日本びいきの人が多いのだと教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 


意匠研の展覧会

2018年02月24日 | 陶磁器展示会
多治見の意匠研に展覧会を見に行った。正式には多治見市陶磁器意
匠研究所。卒業制作受賞者達の展示作品はとても見応えがあった。
これだけの展示が無料で見られるのは素晴らしいと思う。その上
特定のものを除いて写真撮影OKなのは心の広い対応だ。
校内で通りすがりのスタッフや生徒さんが向こうから挨拶してくれ
たのが気持ちが良かった。玄関ホールに加藤智也氏のものと思われ
る白いオブジェが展示してあったが、バックの紺碧のタイル壁面と
の組み合わせがとても美しい。そしてこの壁面もシンプルであり
ながらも豊かな表情があって良かった。





最近の意匠研卒の人達の活躍は目覚しい。去年の陶磁器フェステ
ィバル美濃でも3人が受賞していたし・・・。意匠研は設立から
58年で800人超の人材を輩出したとのことで、年間およそ
14人ということは2年制だから在籍者は30人弱ということか。
学校の経営は大変だろうなと勝手な想像をする。陶芸で食べていく
のは容易では無い中で、生徒さんたちはいま自分の目指すスタイル
を懸命に模索してるのだろう。皆さん頑張って下さい。


















「ひねって・焼いて・陶 展」を終えて

2017年03月17日 | 陶磁器展示会
二回目の二人展を終えて、作品やお礼状の発送もおおかた済んで一段落した。

多くの方々が大切な時間を割いてお越し下さったことに感謝している。展示会というきっ
かけでしばらくぶり振りに話すことが出来た知人も少なからずいて、そうしたふれあいを
持てたことがとても有難い。

展示会というものは、めいっぱいエネルギーを出してアウトプットへ繋げること自体が成果
となるし、来場者からもらう作品への評価は自分を振り返る良い機会となる。今回、かみさ
んの作品に対する来場者の評価が自分が思っていたより高いところが多々あって、そこでも
自分の見る目を省みる機会となった。


作り手にとってはアウトプットを出す力も大事だけど、自分の仕事の良し悪しを客観的に
見極める評価力も両輪として大事。本当は、厳しい意見こそ聞きたいのだが、それはそう
そう出てこない。けれども、関心や反応が薄いということで自ずと見えてくるところがあった。
そしてそこは、さらに何とかしてやろうという気になる。

今回ある時、若い女性が車椅子に乗った障がい者を引率した一団がやって来た。若い女性の一人は
僕の作品を見るたびに、「あ、これ可愛いね!」、「これも可愛いよね!」と車椅子のお婆
さんに語りかける。何度かそれが続いた後でお婆さんは、「可愛いじゃなくてきれいなんだよ。」
とボソッと言った。その女性は何も反応しなかったが、今時の娘はありとあらゆるものを
「可愛い」で片を付けてしまう。お婆さんから学ぶことも色々あることに気付いて欲しいな
と感じた。

今回展示した作品は自分にとって新しい手法のものが色々とあるので、そのテクニカルな内容は
追々このブログにアップしようと思う。