ひねって・焼いて・陶

陶芸の様々な技法、釉薬、お会いした陶芸家の方々の話等々、私が陶芸で学んだこと、発見したことなどを綴ります。

第十五代 楽 吉左衛門の公開講座

2012年07月03日 | 陶芸家
楽吉左衛門さんの公開講座を名古屋芸大で聴いた。

日本の伝統文化に当然ながら詳しいと同時に現代アートにも強い関心がある人で、そこが鈴木蔵氏など同じ茶碗を作る今日の他の陶芸家との違いかと感じる。僕が少々驚いたのは、作品の制作にあたっては最初に完成形をイメージしないということ。制作の各工程毎に即興的に、形状を考えたり、釉掛けを考えたりするという。作るものの種類が限られているからとは言え、そんな手もあるのかと、全て計画的にやる自分との違いを感じる。

もう1つ驚いたのは、窯焚きの時には10数人が手伝うのだが、みな昔から、つまり約400年前から、代々窯焚きを手伝って来た家の人たちで、しかも無償で手伝ってくれているとのこと。一人の陶芸家の活動と言うよりも全体が小さな伝統文化なんだと感じる。こうした独特の文化が受け継がれていることは良いなと思う。

佐川美術館の茶室デザインはメディアにもかなり取り上げられたが、彼曰く、その後もしどこかから建築デザインの依頼が来たら名刺に建築デザイナーの肩書きを入れようと思っていたものの、未だどこからも依頼は来ていないとのこと。ちょっと笑えるし、ご本人もてれ笑いしながら言っていた。僕もあのデザインは素晴らしいと感じたし、もう一度行って見たいと考えているくらいだが、一方で彼に建築を依頼する人が現れないことに納得も行く。やはり専門家じゃないからな。

講座を聴いて数日後、岡崎図書館の陶芸の書棚で本を探していたらすぐ隣に小学生3~4年生くらいの男の子が来て本を数冊手に取った。タイトルを横から覗き込むと、何と楽吉左衛門と楽長次郎ではないか!声をかけたら「焼き物が好きなんです。」と言う。末恐ろしいというか、この子の将来が楽しみ。