コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

制圧者とインカの末裔たちとの戦いの物語

コンドルの系譜 第九話(868) 碧海の彼方

2013-07-06 14:52:50 | 碧海の彼方

が、不意に、彼方の友軍が奏でる角笛やホラ貝の音が、ピタリ、とやんだ。


駆け続けながらも、トゥパク・アマルたちは何事かと耳を欹(そばだ)てる。


その時、トゥパク・アマルたちの方へ、ビルカパサ軍の伝令馬が一騎、暗い茂みの向うから、目にも止まらぬ速さで駆け込んできた。


敵の長々しい戦列を大きく迂回して、全力疾走してきたのであろう。


まっしぐらにこちらに飛ばしてくる伝令馬に跨ったインカ兵は、黒々とした長髪を振り乱し、ゼーゼー荒い息を吐いている。


その伝令兵がトゥパク・アマルの傍に馬を寄せ、礼を払うために馬を飛び降りようとした。


それをトゥパク・アマルが素早く制して、沈着な声で問う。


「そのままで構わぬ。


それより、ビルカパサたちに何事かあったのか?」


伝令兵は、汗と埃に汚れた顔を歪めて、「はっ!」と、騎上で身を低めた。


「トゥパク・アマル様のお察しの通りでございます。


ビルカパサ様の率いる本隊の背後から、さらに新たな敵勢が迫っております!!」


はっと大きく息を呑んだ味方の兵たちを両脇と背後に従えたまま、トゥパク・アマルもまた、手綱を握り締める指に力を込めた。

 

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トゥパク・アマル(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

ビルカパサ(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。

 

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