その時、再びトゥパク・アマルの声が聞こえてきた。
「次第に暮れ時も迫っているが、英国艦隊は未だ姿を現さぬ。
このまま日が暮れれば、夜間の襲撃をしてくるとは考えにくい。
その裏をかいてくる可能性も皆無ではないが、いかに英国艦隊と言えども、このような不慣れな海域で無理に夜間の襲来を試みれば、座礁の危険があまりに大きい。
恐らく、海上で一夜を明かし、装備や編隊を整え、夜明けを待って押し寄せてくる心積もりであろう」
「それでは、当地での決戦は明朝以降になると?」
低く絞ったビルカパサの言葉に、トゥパク・アマルは厳然とした横顔で無言のままに頷いた。
それでは、トゥパク・アマル様、急ぎサンガララに援軍に向かわれますか?!――と、衝動的に喉元まで出かかったが、ビルカパサは己の言葉を呑み下した。
いかに当地での決戦が明日に持ち越されようとも、どれほど超人並みに馬を飛ばそうが、もう間もなく戦闘の火蓋が切られるであろうサンガララの決戦に間に合おうはずがなかった。
それどころか、たとえ一晩、ここから死に物狂いで馬を駆ろうとも、サンガララの山麓の末端にさえも辿り着けはしないだろう。
【登場人物のご紹介】
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。
「次第に暮れ時も迫っているが、英国艦隊は未だ姿を現さぬ。
このまま日が暮れれば、夜間の襲撃をしてくるとは考えにくい。
その裏をかいてくる可能性も皆無ではないが、いかに英国艦隊と言えども、このような不慣れな海域で無理に夜間の襲来を試みれば、座礁の危険があまりに大きい。
恐らく、海上で一夜を明かし、装備や編隊を整え、夜明けを待って押し寄せてくる心積もりであろう」
「それでは、当地での決戦は明朝以降になると?」
低く絞ったビルカパサの言葉に、トゥパク・アマルは厳然とした横顔で無言のままに頷いた。
それでは、トゥパク・アマル様、急ぎサンガララに援軍に向かわれますか?!――と、衝動的に喉元まで出かかったが、ビルカパサは己の言葉を呑み下した。
いかに当地での決戦が明日に持ち越されようとも、どれほど超人並みに馬を飛ばそうが、もう間もなく戦闘の火蓋が切られるであろうサンガララの決戦に間に合おうはずがなかった。
それどころか、たとえ一晩、ここから死に物狂いで馬を駆ろうとも、サンガララの山麓の末端にさえも辿り着けはしないだろう。
【登場人物のご紹介】
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。
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