コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

制圧者とインカの末裔たちとの戦いの物語

コンドルの系譜 第九話(304) 碧海の彼方

2009-09-30 20:19:08 | 碧海の彼方
いかにも己らの存在を顕示するかの如くに、隊列の先頭を疾走するトゥパク・アマルを中心に、猛々しい雄叫びを上げながら愛馬を蹴立ててゆく彼らの厳めしい輪郭を、風にたなびく長髪がいっそう凛々しく引き立てている。

そのままトゥパク・アマルたちは怒涛の勢いで彼らの陣の敷かれた岸壁をくだり、疾風さながらに、敵陣の据えられた数キロ先の断崖を駆け上りはじめた。

ほどなく彼らの姿をとらえたスペイン軍陣営の衛兵が、転がるようにして彼らの総大将アレッチェの元へと素っ飛んでいく。

「ト…ト…トゥパク・アマルが、こっちに向かっています!!」

「なに?!」

厳然たる隙の無い面持ちで、黒々と磨き抜かれた砦の砲台群を見回っていたアレッチェが、ギッと、鋭い眼光で振り向いた。

「トゥパク・アマルだと?!」


【登場人物のご紹介】

≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。

≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。


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コンドルの系譜 第九話(303) 碧海の彼方

2009-09-28 20:49:10 | 碧海の彼方
トゥパク・アマルは頷くと、既に敏速な足取りで天幕出口へと向かいながら、金糸の織り込まれた戦闘用の黒マントをその長身にバサリと羽織った。

「今、この瞬間にも、海上では海戦が着実に進んでいるはずだ。

我らにも、残された時は少ない。

即刻、出立する」

「御意!!」



それから間もなく、逞しい白い愛馬に跨ったトゥパク・アマルが、インカ軍の堅固な陣門から猛々しい勢いで翔け出して来た。

彼は、直下の重臣たちらしく華々しく武装した騎馬のビルカパサ及び十数名の家臣たちを伴って、黄金色の砂塵を蹴散らしながら陣営から駆り出して行く。

そして、その後を、数十名の騎兵たち――厚い革の胸甲に身を包み、銃とインカの投石器オンダ(註)とで武装している――が、軽やかな身のこなしで、駿馬を駆り立て付き従っていく。

【註】オンダ:インカ時代の投石器。縄の両端を手に持ち、腕の回転力を利用して石を遠くに飛ばす仕組みになっている。硬い鉄の兜さえ穴が開くほどの威力を持ったと言われる。


【登場人物のご紹介】

≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
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コンドルの系譜 第九話(302) 碧海の彼方

2009-09-28 20:45:58 | 碧海の彼方
そして、深く礼を払いながら、それら臣下の者たちがトゥパク・アマルに問う。

「して、トゥパク・アマル様、陛下のお供を仕(つかまつ)ります兵力は如何ほどにいたしましょう?」

「此度は戦闘が目的ではなく、あくまで敵を心理的に撹乱するのが目的だ。

我らとて、むやみに尊い兵力を失うわけにはいかぬ。

増してや、今は、本番戦を後に控えている大事な時。

よって、此度に関しては機動性を重視し、少数の騎兵でよかろう」

そう応えながら、トゥパク・アマルは、ビルカパサの方へと素早く視線を走らせる。

「それから、此度は、あれを持参せよ」

「はっ。

万事、心得てございます!!」


【登場人物のご紹介】

≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

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コンドルの系譜 第九話(301) 碧海の彼方

2009-09-23 20:52:48 | 碧海の彼方
「多少なりとも顔を見せてやるだけでも、あの者を浮き足立たせるには十分であろう。

欲している餌(えさ)をちらつかせ、引っ込める。

使い古された心理戦の常套手段だが、今のあの者の頭に血を上らせるには十分な効き目があろう」

「えっ…。

餌――でございますか……!」

トゥパク・アマルが己自身のことを平然と「餌」呼ばわりしたさまに、ビルカパサも他の廷臣たちも返す反応に困惑し、一瞬、目を白黒させながらサッと視線をそらした。

そのような彼らの様子には頓着せずに、トゥパク・アマルは、変わらぬ淡々たる調子で続けていく。

「アレッチェ殿の本来の冷厳さと隙の無さで、虎視眈々と万全なる態勢のままに英国艦隊を迎え撃たれては、こちらとしては願わしくない。

それに、後の我らとの決戦本番の際に、あの者が踏み外しやすくなるよう、呼び水を撒(ま)いておくことも必要だ」

「はっ!!」

ビルカパサたち家臣一同が、再び我を取り戻し、決然と恭順を示した。


【登場人物のご紹介】

≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

≪ビルカパサ≫(インカ軍)
インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。

≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。


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コンドルの系譜 第九話(300) 碧海の彼方

2009-09-21 22:00:29 | 碧海の彼方
「先刻、アンドレスも申していたように、わたしを再び捕らえんとするあのアレッチェ殿の執念はひとかたならぬものがある。

本来は冷徹なほどに冷静、且つ、有能な人物だが、わたしの身のこととなると、いかにも執拗で、あの者らしからぬほどバランスを欠く。

言わば、それが、あの男の弱点だ。

ならば、我らとしては、それを利用せぬ手はない」

「はっ!!」

臣下の兵たちが力強く礼を払う。

やがて、それらの兵たちの間から重臣ビルカパサが、常の感情統制のいきとどいた豪胆な面差しを上げ、トゥパク・アマルを真っ直ぐ見つめた。

「それで、あのアレッチェ殿を少しばかり挑発に出向こうと?」

「さよう」と、トゥパク・アマルは、その輪郭にかかった長髪を鋭い手つきで掻き上げる。


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≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。

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インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。
トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパク・アマルと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。

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植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
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