「馬鹿者どもめ!!
ただの一時的な疾風だ。
さっさと隊形を整えろ!!」
それから、彼は、己にぶち当たってくる石類や木片を鉄製の盾で荒々しく弾き返しながら、トゥパク・アマルの方を苛立たしげに睨(ね)めつけた。
「この場所の天候や風の性向を知っていれば、誰にでもできることだ。
このような子ども騙しまで使うとは、トゥパク・アマル、おまえも、余程、手の内が尽きてきたと見える」
そう憎々しげに言い放つアレッチェを冷ややかに見つめていたトゥパク・アマルの瞳が、再び、鋭い閃光を放つ。
【登場人物のご紹介】
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍)
植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。
ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。
有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。
名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。
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