コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

制圧者とインカの末裔たちとの戦いの物語

コンドルの系譜 第九話(238) 碧海の彼方

2009-04-29 19:38:56 | 碧海の彼方
それから、ささくれ立った擦れ声を搾り出す。

「フロレス殿、何を言ってるんです?まさか、この脇の敵艦と、それから、あいつの」――と、横をすりぬけつつある二番手の英国艦の後方から、こちらに向けてさらに進み来る三番手の英国艦の方へと狂気じみた視線を投げ――「間に割り込んで行くってことですか?!」

フロレスは黒々とした爆風に長いブロンドを吹き上げられながら、完全に乾き切った唇を舐め、頷いた。

「その通り。

英国艦隊の縦陣を分断しながら、両舷から斉射する」

「そ…そんな無茶な……!!」

「さあ、ロペス艦長、時間が無い。

早く」

「そんな馬鹿なこと!!

あいつの艦首に、こっちの側面が、もろに串刺しにされますよ!!」

「それはどうかな。

むこうとて、そのように特攻隊さながら船体ごと突っ込んでくれば、己にとっても自殺行為であろう」

「しかし…!

あいつの艦首には、我々よりも高性能の艦首追撃砲が搭載されているんです!!

接近したら、必ず、ぶち込んでくる!!」


【主要艦の乗員構成】

スペイン艦隊:
<ベルナルド艦>
ベルナルド艦長(旗艦艦長・艦隊総指揮官) ― 副長(艦長補佐)
<フロレス艦>
フロレス(艦隊副指揮官) ― ロペス艦長(フロレス艦艦長) ― 副長(艦長補佐)

英国艦隊:
<ジョンストン艦>
ジョンストン提督(艦隊総指揮官) ― キーン艦長(旗艦艦長) ― 副長(艦長補佐)


【登場人物のご紹介】

≪フロレス≫
此度の海戦では、ベルナルド旗艦艦長に次ぐスペイン艦隊の副指揮官。
本来は陸軍に所属し、ペルー副王領スペイン軍総指揮官アレッチェと並ぶ、ラ・プラタ副王領(現ボリビア周辺)スペイン軍総指揮官(実質的には、アレッチェの部下の身分)。
副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた文武両道の麗人。
植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な側面を持つ。

≪ロペス艦長≫
フロレスの乗艦する戦列艦の艦長。
ベルナルド旗艦艦長の指揮するスペイン艦隊の要となる僚艦を預かる重要な艦長の一人。


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コンドルの系譜 第九話(237) 碧海の彼方

2009-04-27 21:31:27 | 碧海の彼方
「考え?!」

「はい。

すぐに、この艦の進路を変えて頂きたいのです」

「――?!」

相手の言わんとしていることの意味を掴みかね、ロペスは、鬼気たる形相を強張らせ、混乱した目を聳(そび)やかす。

そのような艦長の肩を鷲掴みにしたまま、フロレスは相手の鼻先までにじり寄った。

「今、この艦の脇をすり抜けている英国艦をやりすごしたら――」

そう言いながら、フロレスは、己の僚艦に激しい砲撃を加えながら、ほぼ正横を通り過ぎようとしている敵艦に、鋭い一瞥をくれた。

敵艦隊先頭を行くジョンストン艦の後に付き従う、その二番手の敵艦は、今、まさにフロレス艦の脇をすり抜けながら、フロレス艦の後に続くスペイン艦隊旗艦に向けて、その強烈な艦首追撃砲を存分に駆使して砲撃を開始している。

フロレスは有無を言わさぬ険しい眼で、ロペスの瞳の奥を見据えた。

その頬からは、相変わらず深紅の血が滴っている。

「艦長、すぐに回頭し、こいつの艦尾を突っ切るのです」

他方、フロレスの言葉に、ロペスはギョッとして、まるで気が違った人間でも見るかのように、まじまじと相手の全身を上から下まで凝視した。


【主要艦の乗員構成】

スペイン艦隊:
<ベルナルド艦>
ベルナルド艦長(旗艦艦長・艦隊総指揮官) ― 副長(艦長補佐)
<フロレス艦>
フロレス(艦隊副指揮官) ― ロペス艦長(フロレス艦艦長) ― 副長(艦長補佐)

英国艦隊:
<ジョンストン艦>
ジョンストン提督(艦隊総指揮官) ― キーン艦長(旗艦艦長) ― 副長(艦長補佐)


【登場人物のご紹介】

≪フロレス≫
此度の海戦では、ベルナルド旗艦艦長に次ぐスペイン艦隊の副指揮官。
本来は陸軍に所属し、ペルー副王領スペイン軍総指揮官アレッチェと並ぶ、ラ・プラタ副王領(現ボリビア周辺)スペイン軍総指揮官(実質的には、アレッチェの部下の身分)。
副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた文武両道の麗人。
植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な側面を持つ。

≪ロペス艦長≫
フロレスの乗艦する戦列艦の艦長。
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コンドルの系譜 第九話(236) 碧海の彼方

2009-04-24 21:45:01 | 碧海の彼方
それから、止まらぬ頬の血を再び拭いながら、暫し、フロレスは、じっと目を閉じた。

いきなり思いに耽ってしまったような彼の傍で、海尉が、困惑と苛立ちの呻きを上げる。

「ですから、動いていて頂かないと…!」

「うむ――已むを得まい」

唐突に呟くと、フロレスは、目元に険しさを増した瞼を見開いた。

「ところで、海尉殿、ロペス艦長はどこかね?」

「恐らく、艦長なら、まだ艦尾甲板におられるものと…!」

フロレスは相手に頷いて俊敏に礼を返すと、「まだ動ける水兵たちに、操帆の態勢を整えさせておきたまえ」と早口で言い残し、艦尾甲板の方角へと踵を返した。

そして、ほどなく艦尾へ辿り着くと、ロペス艦長の姿を探す。

ロペスは、轟音の中、鬼のような形相で頭髪を逆立て、号令をかけているのか吼え声を上げているのか分からぬ様相で、ともかくも、まだ、その命を繋いでいた。

降りかかる火の粉を払いながら、フロレスは大股で相手の傍に走り寄り、その厳つい肩に、グッ、と掴みかかる。

「ロペス艦長」

「フロレス殿?!」

「艦長。

このままでは、味方の旗艦が、もう長くはもつまい」

「フロレス殿――…!」

「そこで、わたしに、考えがあるのです」


【主要艦の乗員構成】

スペイン艦隊:
<ベルナルド艦>
ベルナルド艦長(旗艦艦長・艦隊総指揮官) ― 副長(艦長補佐)
<フロレス艦>
フロレス(艦隊副指揮官) ― ロペス艦長(フロレス艦艦長) ― 副長(艦長補佐)

英国艦隊:
<ジョンストン艦>
ジョンストン提督(艦隊総指揮官) ― キーン艦長(旗艦艦長) ― 副長(艦長補佐)


【登場人物のご紹介】

≪フロレス≫
此度の海戦では、ベルナルド旗艦艦長に次ぐスペイン艦隊の副指揮官。
本来は陸軍に所属し、ペルー副王領スペイン軍総指揮官アレッチェと並ぶ、ラ・プラタ副王領(現ボリビア周辺)スペイン軍総指揮官(実質的には、アレッチェの部下の身分)。
副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた文武両道の麗人。
植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な側面を持つ。

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コンドルの系譜 第九話(235) 碧海の彼方

2009-04-22 21:28:29 | 碧海の彼方
「くそ――!」

フロレスは、わななく拳を手すりに強く打ち付けた。

その瞬間、彼の頬ギリギリを敵の銃弾が掠(かす)め飛んだ。

辛うじて過(よぎ)り去った鉄弾の焼け付くような熱さと共に、生温かい己の血が皮膚から飛び散るのを感じる。

と同時に、近くにいた海尉の野太い声が、半ば動転しながら、半ば諭すように、険しく響いてきた。

「フロレス殿、どうか動き回っていてください!!

敵の狙撃兵たちは、あなたを狙っているんですから!!

立ち止まっていては危険です!!」

「ああ…すまん。

迂闊(うかつ)だった」

頬の血を素早く拳で拭いながらも、フロレスは鋭く己の肩章に目を走らせ、思わず苦笑する。

先刻、味方の狙撃兵に敵の将官を狙えと言ったのは、誰だったか――。


【主要艦の乗員構成】

スペイン艦隊:
<ベルナルド艦>
ベルナルド艦長(旗艦艦長・艦隊総指揮官) ― 副長(艦長補佐)
<フロレス艦>
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コンドルの系譜 第九話(234) 碧海の彼方

2009-04-20 21:45:04 | 碧海の彼方
「――!!」

フロレスは、ギリッと、きつく唇を噛み締める。

その危うい視界の中で、スペイン艦隊縦陣の片側先頭を疾走していた己の艦の横を激しい砲撃と共にすりぬけたジョンストン艦は、当艦のすぐ後方に位置するベルナルド艦へと、いよいよ大きく接近し、今、まさに苛烈な砲撃の連打を加えている真っ最中であった。

しかも、敵方の二列縦陣先頭を走るジョンストン艦の艦尾を固く守りながら、その提督艦の後方を進み来ていた英国艦も、時を同じくして、フロレス艦の脇を砲撃と共に通り過ぎながら、スペイン艦隊旗艦を早々に討ち取るべくジョンストン艦に加勢せんとしているではないか。

他方、凄まじい砲撃に晒されているベルナルド艦は、なす術も無く、ただ恰好の攻撃の的(まと)となっているばかりである。

その上、硝煙を払って良く見れば、隊形を分断され撹乱されているのはスペイン側の艦ばかりで、対する英国艦隊側は、今も整然たる二列縦陣を見事に維持したまま、その強壮な武力を遺憾無く発揮し続けている。


【主要艦の乗員構成】

スペイン艦隊:
<ベルナルド艦>
ベルナルド艦長(旗艦艦長・艦隊総指揮官) ― 副長(艦長補佐)
<フロレス艦>
フロレス(艦隊副指揮官) ― ロペス艦長(フロレス艦艦長) ― 副長(艦長補佐)

英国艦隊:
<ジョンストン艦>
ジョンストン提督(艦隊総指揮官) ― キーン艦長(旗艦艦長) ― 副長(艦長補佐)


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≪フロレス≫
此度の海戦では、ベルナルド旗艦艦長に次ぐスペイン艦隊の副指揮官。
本来は陸軍に所属し、ペルー副王領スペイン軍総指揮官アレッチェと並ぶ、ラ・プラタ副王領(現ボリビア周辺)スペイン軍総指揮官(実質的には、アレッチェの部下の身分)。
副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた文武両道の麗人。
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