「父上、僕がまだ剣の腕が弱いからって、スペイン軍は待ってはくれないでしょう。
それならば、今もてる最大限の力で、命を賭けて戦うのみです!!」
その瞳の炎をいっそう燃え上がらせて己を睨むように見上げる息子の目を、トゥパク・アマルも真っ直ぐに鋭く見下ろす。
それは、父と息子というよりも、もはや、総指揮官と一側近という構図に見える。
「命を賭ける?」
「はい!!」
イポーリトは、何の躊躇も見せずに、毅然と応える。
そして、続けた。
「もし、今度の決戦でスペイン軍に破れれば、いずれにしたって僕たちは、スペインの役人たちに真っ先に処刑されるのでしょう?」
「…――!!」
思いもかけぬ息子の発言に、トゥパク・アマルは息を呑んだ。
そして、次の瞬間、少し離れた場所で、顔色ひとつ変えず、じっと夫と長男とのやり取りを見守る妻ミカエラの方に視線を走らせた。
ミカエラは、その美しい表情を少しも動かさず、「真実を伝えたまでのこと。総指揮官の息子として、当然、知っておくべきこと、覚悟をしておくべきことでありましょう」と、無言のまま、目だけで応えてくる。
トゥパク・アマルは、微かに目を見開き、まだじっとミカエラの目を見ていた。
ミカエラは瞳で頷き、「三人共に、既に以前から話してあること。あなたが動揺して、どうするというのです」と、相変わらず無言のまま、その麗しい目元だけを涼やかに細める。
トゥパク・アマルは、にわかに苦渋の色で、ミカエラからはずしたその視線を瞬間、床に移した後、再び、イポーリトの方に視線を戻した。
イポーリトは、もはや12歳という年端に似合わぬ、決然とした覚悟を宿した眼差しで、力強く言う。
「いずれにしても失う命なら、いいえ、たとえそうとは限らぬとしても、僕は、今、インカのために全ての力を捧げたい!!
父上!!」
「僕も、同じです!!」
トゥパク・アマルが応えるのを待たず、父と長男との間に、毅然とした足取りで次男のマリアノが入り込む。
◆◇◆物語へのご招待◆◇◆
物語概要 物語目次 登場人物の紹介 現在の物語の流れ
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それならば、今もてる最大限の力で、命を賭けて戦うのみです!!」
その瞳の炎をいっそう燃え上がらせて己を睨むように見上げる息子の目を、トゥパク・アマルも真っ直ぐに鋭く見下ろす。
それは、父と息子というよりも、もはや、総指揮官と一側近という構図に見える。
「命を賭ける?」
「はい!!」
イポーリトは、何の躊躇も見せずに、毅然と応える。
そして、続けた。
「もし、今度の決戦でスペイン軍に破れれば、いずれにしたって僕たちは、スペインの役人たちに真っ先に処刑されるのでしょう?」
「…――!!」
思いもかけぬ息子の発言に、トゥパク・アマルは息を呑んだ。
そして、次の瞬間、少し離れた場所で、顔色ひとつ変えず、じっと夫と長男とのやり取りを見守る妻ミカエラの方に視線を走らせた。
ミカエラは、その美しい表情を少しも動かさず、「真実を伝えたまでのこと。総指揮官の息子として、当然、知っておくべきこと、覚悟をしておくべきことでありましょう」と、無言のまま、目だけで応えてくる。
トゥパク・アマルは、微かに目を見開き、まだじっとミカエラの目を見ていた。
ミカエラは瞳で頷き、「三人共に、既に以前から話してあること。あなたが動揺して、どうするというのです」と、相変わらず無言のまま、その麗しい目元だけを涼やかに細める。
トゥパク・アマルは、にわかに苦渋の色で、ミカエラからはずしたその視線を瞬間、床に移した後、再び、イポーリトの方に視線を戻した。
イポーリトは、もはや12歳という年端に似合わぬ、決然とした覚悟を宿した眼差しで、力強く言う。
「いずれにしても失う命なら、いいえ、たとえそうとは限らぬとしても、僕は、今、インカのために全ての力を捧げたい!!
父上!!」
「僕も、同じです!!」
トゥパク・アマルが応えるのを待たず、父と長男との間に、毅然とした足取りで次男のマリアノが入り込む。
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