弟が上京して2日目です。
昨日、貧弱な体に鞭打って渋谷中を6時間歩き続けた弟は、
『今日はもう寝る、しんどい』と早くも弱音を吐きました。そんなのはこの姉が許さない。
『起きろや!観光案内してやっぞ、ほらぁ!』←もう自分が一番楽しい。
『もう今日は寝んねん…。もう東京飽きたわ…』
『早っ!!ってかまだ渋谷しか行ってへんし!』
『渋谷見たら、もう東京見たんも一緒やんけ。…ふぁぅ(欠伸)』
『うわ、ナメてんなお前。ってか渋谷すら、まだちゃんと見てへんっちゅうねん』
『え、嘘?あんなけ歩いて?』
『そうやでアンタ。渋谷と言えば、円山町やろ!その円山町をまだ拝んでへんぞ?』
『ふぅん…。何?そこにはオモロイもんあんの?』
『あるよアンタ、そりゃあタンマリ。まぁ、何よりアンタと行くのは相当キモけどな』
『何やねん、それ?』
『じゃ、ヒントその1。クリスマスイヴになると、金の無い恋人達が一層多く集まります』
『あ~…、分かった。もうええ』
『まぁ姉ちゃんくらいになると、ガイドブック無しで円山町歩けるけどな!』
『やめてぇや、俺まだなんやから。生々しいのは嫌いやで…』
お前まだ童貞だったのか。
何気に衝撃を喰らった朝でした。
(というか"全く経験無しの弟"と、仕事とは言え"3ケタ超えてる姉"って、どうなんだ…)
そんな話をウダウダしながら、『歩いたりせん所なら、行く』と弟。
既に観光する気も毛頭無いご様子。本末転倒もイイトコです。
『あ、アキバがどんなんか、一応見とこうかな』
なんや。そっちの分野に費やす体力はあるんや。
と、言う訳で。本日は秋葉原襲来。
秋葉原は久々やなぁ…。前彼がゲーム好きで、バイト無い日はよう一緒に来とったっけ。
私もゲームは程良く好きやから全然苦では無かったけど。
しかしまぁ、コスプレイヤー多いなぁ。平日の割に。これで普通なんかな?
ってか、自分で作ってんのか?あれ。スゲェなぁ。器用なんやなぁ。
何のキャラかはさっぱり分からんがな。アハハ。
そういやココの"まんだらけ"の店員さんって、全員コスプレしてたような気がする…。
何か、特設ステージがあったような気もする…。そこでアニソン歌って踊ってたりした気がする…。
…これは後で見に行ってみんとなっ♪
『もう疲れたわ、姉ちゃん』
このガキほんまに!!まだ10分も歩いてへんやんけっ!!
『ちょお休もうや?』
『お前ほんまヘタレやん!ええ加減腹立ってきた!』
『ちゃうんねん、昨日がキツ過ぎてん…』
『知るかボケっ!そして全然キツない!もう、姉ちゃんは情け無い…!』
『取り合えずさぁ、休もうや』
『まだ言うかぁぁあーーっ!!』←本気で怒った。
『ちゃうんねん、1回あそこ入ってみたいねん!』
と、弟の指差した先には、メイドカフェが。
『あ、そういう事なら。うん』←もう興味津々。
『早っ!!』
とは言え、メイドカフェって初めてなのよねぇ…。女が入っても良いもんかしら?
嗚呼。店(ソープ)に初めて来るお客様って、こんな緊張感があるんかなぁ…。
これからはもっと、優しくしてあげようっと。
ガチャ。
『お帰りなさいませ~!ご主人様♪』
うおっ、メイドさんだっ!!本物だぁっ!!うふぉっ。
『ご主人様とお嬢様、お帰りになりました~♪お帰りなさいませ~!』
『「「お帰りなさいませ~!!」」』←複数。
ピンク色の壁に目がチカチカしながら、これまたピンク色のテーブルに通される私達。
『女の客は、"お嬢様"って呼ぶんやなぁ。なるほど』
『ってか、気持ち悪っ!この店内!全部ピンクやん!!』
『う~ん…。まぁオプション(?)の1つなんやろうな』
『…まぁ、注文しよか。取り合えず』
でも、ここからは普通のカフェでした。
メニューから選んで、注文する。うん、至って普通のカフェですな。
ただ、随分待ち時間が長いのは、仕様なんでしょうか?
たかがホットコーヒー2つに8分以上掛かってますが?
『大変お待たせ致しました~♪』
ほんまじゃボケ。
まぁ、コーヒーを飲んで一息付けば、だいぶ落ち着くものです。
改めて店内を見渡せば、アキバ系らしきの方々がチラホラ、パフェ召し上がってたりします。
それにまずまずの客入り様。やっぱメイドカフェの需要は色濃いなぁ、なんて思ったり。
きっと、ここのメイドさんも強靭なプロ意識を持って働いているんだろうな。
店内で、何か想定外な事が起こったとしても、"メイドとして"対処するんだろうな。
じゃあ、ちょっと想定外な事でも起こしてみたろかな?(ニヤリ)
『なぁ、ちょっとお願いがあるんやけど』
『なんや?』
『あのさぁ。ちょっとそのコーヒー、自分のズボンにこぼしてみて?』
『はぁ?!なんでやねん!』
『理由は後で絶対分かる。悪いようにはせんから、な?』
『いやいやいや!!熱いから!火傷するから!』
『で、こぼした時ちょっと大袈裟に"熱っ!"って言うてな?』
『いや、意味分からんし!ってかズボン汚れるし!!』
『私の推測では、結果的に汚れて無いから大丈夫。はよやって』
『はぁ??結果的に汚れへんのやったら自分やりぃや!!』
『ここの会計、あたしが払ったるから』
『任せろ(即答)』
次の瞬間、弟の手元から滑り落ちるカップ。
ズボンにこぼれるホットコーヒー。
そして言い付け通りの、『熱ぅっ…!!』という台詞。(ってかリアルに熱かったと思う)
唯一、予定外だったのはカップを床に落として割ってしまった事だけ。
店内は一時的に騒然となり、そこに居た誰もが、無言で私たちに目を向けました。
焦りを帯びた小声で『これでイイん?』と、弟。
『バッチリ♪』と目で語る私。
さぁ、私の推測が正しければ、もうすぐ"萌えイベント"が始まるはず…。
『ご主人様っ!!』
『ご主人様!大丈夫ですか!?』
『ご主人様!お怪我は無いですか?!』
『ご主人様!ズボンお拭き致します!!』
『お嬢様も、大丈夫ですか?!』
『大丈夫です。ごめんなさい、カップを割ってしまって…』←悪。
『平気です!
ご主人様も大丈夫ですか?!』
『あ、はい…、もう大丈夫です…』←タジタジ。
総勢3人のメイドさんに、股間付近のシミを拭き拭きしてもらう弟。
うん、大成功。全ては私の思惑通り。
流石はプロ。如何なる場面でも、メイドとして事を処理して下さいました。お見事!
良かったな、弟。君の人生初の勃起イベントだったろ?
その後、早々に退出する私達。
カップを割るつもりは無かったんですよ、許して下さいね♪
『あ、やっぱちょっと汚れとうな』
『気にするな。それを代償に、メイドさんのご奉仕が受けられたんやないの』
『うん』
『私の作戦とは言え、あんなんワザとやったんは多分アンタが初めてやで?』
『うん』
『嬉しかったやろ?』
『うん。でもな、』
『なんや?』
『あのメイドら、ぶっちゃけ可愛くなかったで?』
あ、言っちゃったね?
そして、そのまま家路に引き上げた私達。
昨日は出来なかった、"お母さんは元気?"とか姉弟ならではの話を沢山しました。
それでもやっぱり10時には就寝してしまった弟でした。
もぉ…、また3500円財布から抜き取らんとあかんやん。
こんなスリみたいな真似、好きくないんやけどなぁ…。(嘘)
明日で弟とはお別れです。
何だかんだ言っても、やっぱ寂しいなぁ…。