泡姫の本音。 ~イイ男になる為の講座~

【イイ男】になりたい、そこの男性諸君っ!!
ここにある女の本音を、はいっ熟読熟読!!!

鬱・私を狂わせた女 ~その2~

2006年08月08日 00時58分06秒 | 鬱病。

公演前は、団員は稽古に5時間以上、拘束される事になる。
劇の一部始終を、それと無く出来る様にもなると、
毎日が、リハーサル、ゲネプロの連続である。

今回のシナリオは紀元前の英雄達が主人公の為、アクションが多く、
役者の体力の消耗は、特別凄まじいものだった。
加えて季節は、夏である。
私は期間に、6㎏以上の体重は失った。皆も、同じくらいだ。



そんな中で、悠々と肥えた女が一人。



コリである。

コリ扮するエキストラDも、なかなかの殺陣(たて)が、あった。
英雄と対峙し、剣を振るって最期、残していく妻子を想いながら、死ぬ。
そんな、粋な男の役である。






しかし、コリは休憩の都度に、お菓子を食べた。
皆が、次の場面の復習に台本を開いている傍らで、ひたすら食べた。



『何で、そんなに食べるの?』
その姿が病的にも思えて、一度、訊いた事がある。
すると、

『私、人よりスタミナが無いから』
という、答えが返った。



スタミナ?
そうで無くても、小柄小太りなのに、
それを芝居で燃焼しようとしない姿勢は、何なの。
嘘よ。只、食べたいだけじゃない。
おかしいな。喋ったら案外、悪くない人だと思ったのに。

私は、首を捻った。






コリ。

他にもコリは、動きやすいからとスカートを止めなかった。
下着を故意に見せる節もあった。
これに興奮していたのが当の本人だけだったというのが、また滑稽で、
皆は徐々に、陰口すら、しなくなった。
無論それは寛容の類では無く、完全に見限った結果なのだ。

"見限った"。

まだ、コリに芝居の才が有ったなら、多分、納得もした。が、
当然ながらやはり、それは、それ相応の皆無の程だった。
敢えてそのレベルを表現するならば、
テレビドラマの、以下の以下の以下の以下、もう一つ、以下である。
それが決定打になり、皆は見限るに落ち着いたのだ、と思う。



兎に角、コリは、馬鹿な女だった。



私も、皆と同じ様にしたかった。
話し掛けられても、
無視したり、聞こえないふりをしたり、五月蝿いと言ってみたり、したかった。

が、劇では唯一、ギルガメッシュだけがエキストラDと、接するのだ。
その果てに、殺してしまうのだが。

此処で妙な溝を作ってしまっては、後が、やり辛い。
友達役の命もある。



頑張れ。幕が降りるまでの、辛抱。
私は何度、これを繰り返したか分からない。









『違うよ。
 何度も気を悪くさせる様で申し訳無いけど、駄目、それでは。全く男に見えない』

『いいじゃん。本番じゃないんだからさ。いちいち怒んないでよ』

『本番になったら、出来るの?』

『出来るよ』

『出来ないよ』

『出来るってば!』

『出来ないよ。はい、やり直して。そっくり同じ所』

『愛。あんた、色々見下し過ぎだから』

『あのね、私達はプロなの。それ、忘れてない?』

『あんた、出演料が発生する奴の全部が全部、プロだと思ってんの?馬鹿ね』

『思ってるわよ。馬鹿ね。はい、早く、やり直して』



しかし、元来の私とは不器用の塊みたいなもので、
抑圧される心中に比例して、口調は見事に刺々しくなった。

これが、新人が入団して、そしてその新人に対する、わずか7日目の会話である。

コリは、敬語を知らない。ついでに、向上も知らない。
1つ自分にとって都合の悪い内容を言われれば、25は反す。
仮にも、もうすぐ成人しようとしている人間が、である。



疲れた。
でも、頑張れ。もうすぐ、幕は降りる。もうすぐ。
最早それは、願望だった。












だが、しかし。

悲劇は、まだ。
兆しですら、起こっていなかった。






とある土曜の小雨の日。

嗚呼、今日くらいはコリに会わなくて済むんだと思っていた矢先の、コリからのメールに、
私は、生涯でも1、2を争う程の驚愕を経験する。









『妊娠した。今なら、役やめられるんだっけ?』



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (おじゃ)
2006-08-09 00:06:15
ふぅ…

続きを!
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とんでもない奴だ・・・ ()
2006-08-09 00:18:29
いますね、こういうとんでもない奴・・・

こういう人への対処法に悩む今日この頃ですが、愛さんの対応、楽しみにしております。
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