整列機とは?

部品供給方法、部品供給装置のいろいろ

シリンダー持ち上げ式

2018-02-08 09:50:12 | 効率アップ
先日のブログで、ウエステックの整列機から
並んだ部品を取り出す際、整列パレット(整列治具)
ごと取り出そうとする工程を自動化しようとすると、
スピードを速くできない、と書きました。

並んでいる部品がデリケートであればあるほど、
人間のような細やかな動きはロボットでは
難しくなって来ます。

整列パレットを整列機から取り出したり、
別の作業場に搬送しようとする際に、
ちょっとしたショックが加わると、
部品の整列状態が狂ったり、部品を落下させて
しまう危険性があります。

人間は、部品の向きが動きそうになったり、
落ちそうになった時、その場で動きを止め、
更に慎重に作業したり、向きが狂った部品が
数個レベルであれば、その場で向きを修正したり
できます。

整列された部品の状況を見ながら、
ここは速く移動させても大丈夫だ、
ここはゆっくり下げないとダメだ、
といった事を、素早いフィードバックで
実現します。

極端な例ですが、コップの縁ギリギリまで
水を満たし、表面張力で辛うじてこぼれずに
済んでいる状態のものを、台所から居間まで
運ぶ場面を想像してみて下さい。

水がこぼれないように水平にコップを持ち上げ、
移動します。

移動すると今度は水平方向に加速度が発生しますので、
水面が揺れます。それでも、表面張力の範囲内で
こぼれないように揺れを最小限に抑え、
歩くスピードを調整しながら、また、上下動も
抑えながら、居間まで移動します。

居間のテーブルの上にコップを置く時も、
ゆっくり水平を保ったままコップを降ろし、
置く音が鳴らないくらいに慎重に置いて完了です。

息も出来ないくらいに緊張しますが、
ロボットにこれをやれと言ったら、
ちょっと難しいです。少なくとも
スピードアップは図れません。

話を整列機に戻しますが、さすがに水を
満たしたコップは極端過ぎるとしても、
人間でも、整列機から整列パレットを取り出し、
別の場所に置くという作業は、やはり煩雑です。

これも先日のブログに書いた通り、
スプリング取手を手前に引っ張りながら、
小側の回収パレットを外し、部品が並んだ
整列パレットを取り出す。。。
カラの整列パレットをセットする時は、
整列パレットを整列機に置き、スプリング取手を
手前に引っ張りながら、小側の回収パレットを入れ、
手を離す。。。

これを一日中やっているのはなあ、
という気になるのも無理はありません。

また、整列機から整列パレットを取り出す時、
うっかり手を滑らせ、手から離れてしまうと、
整列パレットはバタンと整列機の上に戻ってしまい、
このショックで、並んでいた部品が全て
整列穴から飛び出してしまう、という事も
起こります。

よって、これらをもう少し簡略化できないか、
スピードアップを計れないか、というご要望は
当然出て来ます。

そこで、整列パレットを取り出しやすいように、
整列が終わったら、小側の回収パレットが自動で
手前に少しスライドし、整列パレットの手前側が、
ちょうど指を差し入れられるくらいに、
斜めに持ち上がる、という機構を設けた
仕様があります。

整列パレットをセットする振動テーブルに、
下からエアシリンダーを仕込み、ダンプカーのように
斜めに少し持ち上がるようにするのです。

この方法だと、作業者は斜めになっているパレットを
掴んで移動させるだけになります。

カラの整列パレットをセットする時も、
取り出した状態と同じ場所に斜めに置くだけです。

整列機の起動ボタンを押すと、シリンダーが降りて
整列パレットが水平になり、小側の回収パレットが
スライドして整列パレットに押し付けられ、
そのまま整列機が動き始めます。

これだと、かなりのスピードアップが図れます。
また、整列機の上でうっかり手を滑らせる恐れも
軽減します。

この方法は、振動テーブルに改造が必要ですし、
整列機が整列動作を完了した前と後に、
エアシリンダーを動かす動作を入れるための
プログラムの改造が必要ですので、
特注扱いにはなりますが、対応は可能です。

ただし、並べる部品によっては対応できない
場合があります。

エアシリンダーがストロークエンドまで行き着くと、
クッションを働かせ、スローダウンして
やんわり停止する必要があります。
エアの体積が少ないと、絞りがあまり効かず、
微妙なクッションが働かない事があるのです。

ご相談戴ければ検討致します。宜しくお願いします。

厳しい寒さが続いていますが

2018-02-06 09:29:51 | 効率アップ
コーヒータイム(与太話)

先週は北品川の寒桜の写真を投稿しましたが、
今週は白梅と紅梅が綺麗に並んで咲いている
写真を一つ。



春が近付いているなあ、と写真だけだと
そう感じますが、実際にその場にいると、
やはり寒いです。今年の冬は本当に寒いです。

ちなみに、これは江戸川公園の中です。
江戸川公園は、普通の公園とは違い、
川に沿った細長い公園です。
幅は10mあるかないか程度ですが、
長さは1kmくらいあります。

今の時期だと梅ですが、江戸川公園は桜並木が
有名です。満開の時は見事で、ライトアップも
されます。

ところで、当の川自体は、東京の都心にありがちな
用水路っぽい川で、綺麗な川とは程遠いものです。
排水路のような色です。

しかし、昔は、神田上水の堰が有った所らしいです。

私のような地方出身者は、江戸の水道の歴史を
知らない人が多いです。

江戸に幕府が出来ると、江戸は急速に発展し、
人口も急増しました。街中は海が近いので、
普通に井戸水をくみ上げると、
塩分が混じっています。

そこで、生活用水・飲用水として、
川の上流の方から、江戸の街に
水道を通したのです。

時代劇に出て来る、江戸の街に有る井戸、
あれは湧き水ではなく、地下に作られた
上水道の水をくみ上げていたのです。

ご存知の方も多いかと思いますが、
有名なのが神田上水と玉川上水です。

神田上水は井の頭公園から引いた上水道で、
玉川上水は、今の羽村市から引いた上水道でした。

江戸川公園は、その神田上水の堰が有った跡、
というわけです。

非常に長い距離の上水道で、川のように水面が
見えている場所もありましたが、江戸の街中では、
瓦(焼き物)や石、木や竹などで水道管を造り、
それを地中に埋め込んでいました。

江戸時代の初頭、もちろんポンプなどは有りませんから、
重力、即ち自然落下を利用して作られた水道でした。

しかし、玉川上水の場合、上水道の起点である羽村と、
終点である四谷は、高低差が100mほどしかありません。
一方で、距離は43kmもあります。

つまり、平均の傾斜角度は、僅か0.133°という
事になります。これだけの僅かな傾斜の水道を、
43kmにも渡って作り上げたというのは、
驚異的な技術です。

しかし、作ったのも大変でしたが、運営・管理も
大変だったようです。今とは違って、浄水設備が
ありませんから、上水道が汚れないように
監視・管理が必要でした。

しかも、水道管が石や瓦ならまだしも、
木や竹の部分もありました。耐久性にかなり
問題がありそうです。水圧こそ掛かりませんが、
補修などで、水道工事は結構頻繁に行われていたと
思われます。

実際には、部分的にかなりの水漏れを起こしながら、
流れ着いていたんだろうなあと想像されます。

今のように化学的な殺菌とかもされませんから、
一見綺麗に見えても、衛生的にはかなり
不純物が混じっていた水だったろうなあ
という事は想像に難くありません。

実際、明治期に入って、江戸幕府による上水の
管理が止まってしまうと、水道管の補修工事も滞り、
疫病が発生しやすくなったそうです。

こりゃいかん、という事で、今の水道管に近い技術で、
急いで水道を作り直したとの事です。

さて、神田上水の終点近くに、東京都水道歴史館
というのが今は有ります。神田上水や玉川上水の
詳しい資料や遺物が展示されています。

しかも、隣接している公園には、ちょっとした
バラ園が有ります。少し小高い位置にあり、
近所からは死角になっているため、
人が少ないですが、春には結構見応えのある
バラが咲きます。

公園が有る事自体、あまり知られていないためか、
都会の真ん中なのに、非常に落ち着ける穴場と
なっています。

並んだ部品だけを取り出せた方が良い?

2018-02-05 13:05:25 | 効率アップ
ウエステックの整列機は、整列パレットと
呼んでいる板状の治具に、定められた間隔
(整列ピッチ)、定められた整列姿勢で
多数個の部品を揃えます。

その整列パレットを整列機から取り外すのは、
基本的には手作業になります。

横振動タイプの整列機の場合、整列パレットは
この絵のようにセットされています。



振動テーブル上にレールのように取り付けられた
サイドステーの間に、回収パレット(小側)・
整列パレット・回収パレット(大側)を並べて
セットします。この3つをスプリング取手で
ストッパーに押し当てる状態で整列機を
動かします。

部品は通常、回収パレット(大側)に投入します。
揺動と振動を繰り返し、整列動作を行います。

部品が整列パレットに並んだら、スプリング取手を
手で手前に引き、回収パレット(小側)を取り出し、
整列パレットを取り出します。

大側の回収パレットには、並びきらなかった部品が
収納されている状態ですので、別の部品を並べる時
以外は、基本的に外しません。

整列パレットをセットし直す時は、整列パレットを
大側の回収パレットの前に置き、スプリング取手を
引きながら小側の回収パレットを入れ、スプリング取手を
離すと、ストッパに押し付けられた状態になります。

これらのセット作業は、少し煩雑に思われるかも
知れません。

もっと簡易的にならないかとの要望が昔から有り、
検討を重ねましたが、いろいろと問題が有り、
結局はこの機構に回帰してしまっています。

スプリング取手で押す、という方法が、なかなか他の
方法に置き換えられないのです。

整列パレットと回収パレットの間に隙間ができてしまうと、
そこに部品が落ちたり引っ掛かったりしますので、
押し付ける必要が有ります。

トグルクランプで押し付ける、という方法が有りますが、
トグルクランプのハンドルを倒し忘れて整列機を
動かしてしまいますと、回収パレットと整列パレットの
間に隙間ができたままですので、部品を床に散乱させて
しまう事になり、復旧作業が大変です。
部品によっては、廃棄を余儀なくなれる物も
有るでしょう。

スプリングならば、手を離せば必ず元に戻ります
(押します)ので、その心配が少ないです。

さて、以前のブログで、改造こそ必要ですが、
整列機は自動機にも対応できる、と書きました。
並んだ部品を自動機に供給できるのです。

その場合、2通りの方法が考えられます。

1つは、部品が並んだ整列パレットを自動で取り出し、
カラの整列パレットに入れ替える方法。

もう1つは、並んだ部品だけを、吸着もしくは
マグネットなどを用いて、整列パレットの上から
拾い上げる方法です。

部品によっては吸着できなかったり、磁性体では
ないのでマグネットでは持ち上がらない物も
有るでしょうから、パレットを入れ替える
方法が良いかな、と考えられる方が多いかも
知れません。

やり方としては、スプリング取手の代わりに
エアシリンダなどで回収パレットと整列パレットを
押し付けた状態を保持し、部品を整列させた後、
エアシリンダのINとOUTを切り換えて、
小側の回収パレットを手前に引き寄せます。
同時に、大側の回収パレットも奥側に少し
下がるようにします。

すると、整列パレットの手前側と奥側に、
ツメを入れられるような隙間ができますので、
ロボットで持ち上げられるようになります。

部品が整列済みの整列パレットを取り出し、
所定の位置に置いたら、カラの整列パレットを
整列機に置き、エアシリンダで大小の回収パレットを
挟みつけ、整列を再開します。

しかし、この方法はあまりお勧めはできせん。

理由は幾つか有ります。まず、整列パレットは
部品を整列させる事に特化した穴形状に
加工してあり、単価が高いです。

整列パレット自体を、他の工程に持って行くと、
整列パレットを何枚も用意しなければなりません。

部品を一旦並べてしまえば、その部品の向きを
保持できさえすれば良いわけですから、
簡単な穴形状を持ったパレットか、
成型品のトレーに移し替えた方が安上がりです。

また、整列パレットが部品を整列させる事に
特化した穴形状になっている事が、
部品を乗せたまま搬送するのに適していない
場合が有ります。

特に、横振動タイプの整列機で並べた部品は、
縦に振動を与えると、整列穴から簡単に
出て行ってしまったり、整列穴の上で斜めに
向きがズレてしまう事がよくあります。

整列パレットを整列機から取り出したり、
所定の位置に置く時、その僅かな縦振動が
命取りになる事も有ります。

もう1つは、時間的にあまり速くないと
いう事です。

上記の回収パレットの待避と整列パレットの
入れ替えは、ロボットにやらせると、
人間がやるよりも遅いです。既述の通り、
並んでいる部品の向きが狂わないようにする
必要がある事から、ショックを与えられないあまり、
スピードアップできないのです。

自動化の主な目的に、時間の短縮が含まれている
のでしたら、整列パレットを入れ替える方法は、
あまり効率的ではありません。

整列パレットは整列機にセットしたままにしておき、
吸着ヘッドをそのまま整列パレットに被せ、
並んでいる部品だけを取り出した方が、
圧倒的に速いです。

振動試験機として?

2018-02-02 09:08:45 | 効率アップ
ウエステックの整列機は、部品を並べるために
振動を与えます。

極端な事を言ってしまえば、並べるのに振動が
不要であれば、振動させる必要はありません。

振動は、あくまでも部品を並べるための
手段であって、目的ではありません。

ただ、たまにですが、振動そのものを目的として
購入検討されるお客様がいらっしゃいます。
部品を並べるのではなく、振動発生装置としての
購入というわけです。

ウエステックの整列機は、インダクションモータの
回転を、偏芯カムとリニアガイドを使って
直進運動に変換しています(一部例外の機種も
有ります)。

よって、モータの回転数イコール振動数になります。
モータは定格で1400rpmですから、計算上はMAX
約23Hzになります(使用地が50Hzエリアでも
60Hzエリアでも同じ回転数になるように
設計しています)。

弊社の整列機は専用のコントローラで振動数を
制御します。コントローラ上では、最大振動数を
100(%)と表示します。コントローラで振動数を
設定し、だいたい5~100%の範囲で使います。
振動数とパーセント表示はほぼ比例しています。

5%以下は?と思われるかも知れませんが、
インダクションモータを含む大部分のモータは、
低回転時にはトルクが出ません。

当然ですが、モータ単体で仕事をするわけではなく、
何らかの負荷を動かすためにモータを
付けるわけですから、動作に対して抵抗が
必ず存在し、トルクが弱いと、抵抗に負けて
回転が止まってしまいます。

よって、整列機の振動数を5%に設定すると、
1400rpmの5%である70rpmではなく、
300rpmくらいまで回転数が上がるように
出力されており、そこから100%まで、
リニアに比例して回転数が上がって行く
設計になっています。

現実問題としまして、弊社の整列機では、
5%や10%といった振動では、部品が流れず、
全く並びません。ほとんどの部品が、
40~90%の振動の範囲内で並びます。

よって、部品を整列させるのが目的であれば、
振動を30%以下に設定する事はまずありません。

で、話が戻りますが、弊社の整列機を
整列以外の目的で使おうというお客様は、
当然40~90%の範囲外でも整列機を振動させる
事になるかと思います。

弊社の整列機の振動の特性をよく理解して
戴かないと、作業に支障が出る場合も
有るかと思われます。

まず、先に述べたように、低回転時の
パーセント表示は、あくまでもモータが
少々の負荷では止まらない回転数に
達した所から始まるという事。

そして、モータの回転を直進運動に
変換していますので、その速度は
サインカーブに沿っての加減速だという事。
つまり、シリンダーを使った振動などとは
特性が違うという事。

また、整列機のコントローラの振動数表示は、
あくまでも設定値を表示するものです。
負荷が大きければ損失が発生し、
実際の振動数とは、多少なりとも
差が生じます。

実際の振動数をフィードバックさせて、
設定値に近付ける制御は行なっていないため、
それなりに重い負荷を乗せるのであれば、
加速度計などで、実際に欲しい振動加速度を
測った方が良いです。

更に、振幅によって加速度が変わって来ます。
モーターが同じ回転数で回っていても、
振幅が広いと、同じ時間で長い距離を
往復する事になりますので、当然加速度も
変わって来ます。

以上が大まかな注意点ですが、
世の中には振動試験器といった、
振動させる事自体を目的とした装置が
有ります。乗せる負荷によって振動数が
変化しても、実際の振動数を表示して
くれます。最大周波数も整列機よりも高く、
使い勝手が良いように思えます
(ただし、揺動はしません)。

他社メーカー製ではあるのですが、
振動試験器をお勧めする場合も有ります。

しかし、それでも整列機を購入される
お客様もいらっしゃいます。

整列以外の、どういった目的で
振動を利用するのか、そこまでは
あずかり知れませんが、少し不思議です。