前置きは長かったですが、
そろそろプログラムのジャンプ構成を語らせてもらおうと思います
まずは基本となるジャンプの基礎点一覧。よく使う物のみ。
3回転アクセル(3A)→8.5点
3回転ルッツ(3Lz) →6.0点
3回転フリップ(3F)→5.3点
3回転ループ(3Lo) →5.1点
3回転サルコウ(3S)→4.2点
3回転トゥループ(3T)→4.1点
2回転アクセル(2A)→ 3.3点
2回転ループ(2lo)→ 1.8点
2回転トゥループ(2T)→1.3点
【ショートプログラム】のジャンプ構成からいきます。
ノーミスで滑った場合に、基礎点の高い順に書き出してみました。
一番最近の試合の構成を参考に。
(スピン、ステップの基礎点は除き、純粋にジャンプのみ)
ただ、ソチの本番にジャンプ構成を変えてくるかもしれないので、
あくまで目安として。
コンビネーションは、二つのジャンプの基礎転を足した点になります。
★より後のジャンプは後半なので、基礎点に1.1倍のボーナスがつきます。
それを加算した得点です。敬称略。
① 浅田真央/日本
3A(8.5) 3F(5.3) ★3lo-2lo(7.59) 合計 21.39点
② グレイシー・ゴールド/アメリカ
3Lz-3T(10.1) ★3lo(5.61) 2A(3.63) 合計 19.34点
③ ユリア・リプニツカヤ/ロシア
3Lz-3T(10.1)2A(3.3) ★3F(5.83) 合計 19.23点
④ ポリーナ・エドモン/アメリカ
キム・ヨナ/韓国
ガブリエラ・デールマン/カナダ
3Lz-3T(10.1) 3F(5.3)★2A(3.63) 合計 19.03点
ジジュン・リー/中国
3F-3T(9.4)3Lz(6.0)★2A(3.63) 合計 19.03点
⑤ 村上かなこ /日本
3T-3T(8.2) ★3F(5.83)2A(3.63) 合計 17.66点
⑥ 鈴木明子/日本
アデリナ・ソトニコワ/ロシア
ケイトリン・オズモンド/カナダ
3T-3T(8.2) 3F(5.3)★2A(3.63) 合計 17.13点
⑦ カロリーナ・コストナー/イタリア
3T-3T(8.2)3lo(5.1)★2A(3.63) 合計 16.93点
⑧ マエ・ベレニス・メイテ/フランス
3T-3T(8.2)3lo(5.1)2A(3.3) 合計 16.6点
⑨ アシュリー・ワグナー/アメリカ
3F-2T(6.6)★3lo(5.61) 2A(3.63) 合計 15.84点
上位選手はだいたいこんな感じ。
ジャンプは、三回転ならちゃんと三回転しないと減点をされます。
回転不足にはアンダーローテとダウングレードと2種類あり、
三回転のうち、最後の一回転が180度以上270度まで回りきっていれば
アンダーローテの判定で基礎点の70%の点をもらえます。
最後の一回転が180度以下…つまり半分も回っていなければ、
ダウングレードといってその下の回転、2回転とされてしまいます。
SPのジャンプ構成とか、ジャンプの配置を見ていると、
各選手の思惑が見えて面白いです注目はやっぱりエッジエラー(e)かな。
エッジエラーは取られてしまうと基礎点から基本、マイナスされるので、
ミスが許されないSPでは、外して確実にいく選手が多い印象です。
点数を見ていると、0.1点でも基礎点をあげようと、
選手が工夫を凝らしているのがわかるかと思います。
浅田選手は基礎点はダントツのトップです。
超絶難しい3A(8.5点)で回転不足のアンダーローテをとられ基礎点の70%にされても、
まだ6点のこりますから、基礎点は18.89。
四番目に高い点数で、三番目の点数と0.14しか違わないので、
1ミスならダメージが殆どありません。3Aは難しいだけお得なジャンプです。
男子よりも筋力の劣る女子は、転ばずに着氷するだけでも凄いです。
3Lz(トリプルルッツ)はエッジエラーがあるので入れてないんだと思います。
そしてプログラム後半にコンビネーションの3-2を入れる難しい構成です。
しかもコンビネーションの二本目に2T(ダブルトウループ)より難しく、
基礎点が0.5点高い2lo(ダブルループ)を使っています。
ちょっとづつ基礎点を上げて、後半のボーナスで地味に点数を稼いでいます。
ゴールド選手は3F(トリプルフリップ)にエッジエラーがあるので、
3Fを抜いて、基礎点が0.2だけ低い3lo(トリプルループ)
を入れてるんじゃないかと思います。ですが、
2A(ダブルアクセル)と共に後半に投入しているのでボーナスがついて
基礎点があがり、2位になっています。3Fを抜いているので
エッジエラーを取られる心配もなく、綺麗なジャンプを飛べば加点が沢山つきます。
後半に二本のジャンプを入れて基礎点をあげてるので、勝負に出てる!と思いました。
リプニツカヤ選手は3Lz(トリプルルッツ)にエッジエラーがつきますが、
コンビネーショで3Lz(トリプルルッツ)を入れてきます。
欧州選手権では、最初のコンビネーションの3Lzにエッジエラーがつきましたが減点なし。
次のコンビネーションの3Lzにもエッジエラーがついて、減点は-0.2点。
減点幅はすくないですが、この差はどこからくるのだろうと
テレビ画面でみたところ、最初の3Lzはカメラの方角でわかりにくい、
二つ目の3Lzは明らかにエラーって感じでした。あくまで視聴者目線。
審判が見ているのは、テレビの映像と同じではないようなので。
彼女は後半に3F(トリプルフリップ)を入れてあるのでボーナスがつき、
基礎点では3位になっています。
エドモン、ヨナ、デールマン選手は、
難しいジャンプを前半に二つ、後半に簡単な2A(ダブルアクセル)と
安全な構成になっています。
リプニツカヤ選手のように難しいジャンプ3F(トリプルフリップ)
を後半にいれてボーナスをもらうという勝負の構成ではないので、
同じジャンプ構成なのに、ほんのちょっとだけ基礎点が下がっています。
そしてエドモン選手、ヨナ選手は3F(トリプルフリップ)に
エッジエラーがつくことがあります。ついてしまったら、
基礎点から0.1~0.7点ぐらい
下がってしまう可能性があります。もったいない。
3F(トリプルフリップ)にエッジエラーのある選手は、
特にSPのようにジャンプ数が少なくてミスができない場合は、
ゴールド選手のように基礎点が3F(トリプルフリップ)より0.2点だけ低いけど、
エッジエラーの心配がない3lo(トリプル-プ)にして後半に組み込めば、
ボーナスがついて基礎点が上がり、加点もつくからこっちの方がいいんじゃ?と
個人的には思います。実際にゴールド選手の基礎点は高くなっています。
エドモン選手は3lo(トリプル-プ)に置き換えても大丈夫かと思いますが、
ヨナ選手は3lo(トリプルループ)が苦手でここ何年も試合に入れてないので無理かなと思います。
次に置き換えるとしたら、基礎点が4.2と低い3S(トリプルサルコー)で、
全体の基礎点が17.93になって村上選手との差がなくなり、
3Lz-3Tという比較的難しい3-3を飛んだことで得た
点数のアドバンテージがなくなってしまいます。
エッジエラーでマイナスになっても、3F(トリプルフリップ)が
基礎点が高くてお得だと思って入れているんだと思います。
ジジュン・リー選手は、3Lz(トリプルルッツ)にエラーがありますが、
減点を承知で入れてきていると思います。彼女は減点幅が-0.3~-0.7点ぐらい。
3Lz(トリプルルッツ)は基礎点が高いから、-0.3ですんだら、減点されても5.7点。
こちらの方がお得と考えているかもしれないです。
村上選手は、安定した構成になっていると思います。
数年前に基礎点が高い3F-3Tを練習していると聞いてましたが、
試合に入れているのを見た記憶がないので、投入できる成功率にはならなかったのかな?
少しでも基礎点をあげるために、3T-3Tをプログラム後半に入れて、
ボーナスを稼ごうとしてましたが、こちらもなかなかジャンプが安定しなかったので、
前半に入れるよう戻しています。
彼女は3Lz(トリプルルッツ)にエッジエラーがあるからなのか、SPでは入れていません。
けれどその次に難しい3F(トリプルフリップ)をプログラム後半にもってきて、
ボーナスをもらっています。少しでも基礎点をあげるよう勝負してきてるな!と思います。
たまに3T-3Tで回転不足を取られるので、
それさえなくノーミスで滑れたら、いい成績がついてくると思います。
鈴木、ソトニコワ、オズモンド選手は、
村上選手と同じ構成ですが、3F(トリプルフリップ)を前半にもってきているので
ボーナスがなく、基礎点が少しだけ下がっています。
鈴木選手も3T-3Tで回転不足を取られることがあるので、
しっかり回りきったジャンプを飛べば大丈夫だと思います。
ソトニコワ選手は、3Lz-3l o、3Lz-3T、3T-3Tと三種類を使い分けるので、
オリンピックSPにどれを持ってくるかわかりません。
この前のヨーロッパ選手権のSPは3T-3Tでした。
彼女も3Lz(トリプルルッツ)にエッジエラーがありますが、
リプニツカヤ選手同様、コンビネーションで入れてきます。
超安全策で3T-3Tか、勝負で3Lz-3Tか、絶対に勝ちに行く3Lz-3l oか。
3Lz-3l oはセカンドの3l o(トリプルループ)が回転不足を取られやすいのでどうかな。
今の構成で3T-3Tを3Lz-3Tに置き換えたら、
エドモン、ヨナ、デールマン選手と同じ基礎点になります。
もし3Lz-3l oに置き換えたら、基礎点は20.03!浅田選手に次いで基礎点で2位になります。
コストナー選手は3T-3Tですが、もしかしたら3F-3Tに
構成をかえるかもしれません。
メイテ選手はジャンプが全部前半でボーナスをあてにしてません。
超安全策で、いっそ潔いです。
ワグナー選手は、全米選手権ではコンビネーションが3F-2Tでしたが、
彼女も3F-3Tに変えてくるかもしれません。
ただ彼女はセカンドの3T(トリプルトウループ)が回転不足をとられやすいので、
どうするのかな?
彼女も3Lz(トリプルルッツ)にエッジエラーを取られるからなのか、
SPでは入れず、3l o(トリプルループ)を後半にいれて、
ボーナスをもらって基礎点を稼いでいるようです。
エッジエラーの話をもう少し。
2013年の世界選手権、エッジエラーを取られたジャンプで、
基礎点から引かれた点が高い順に。
上位選手で、SP(ショートプログラム)にエッジエラーをとられるジャンプを入れていたのは二人。
ゴールド選手とヨナ選手です。
二人以外は、全てFS(フリースケーティング)でとられたエッジエラーです。
ヨナ選手は、SPではエッジエラーをとられましたが、
FSでは取られませんでした。
(3Lz/ルッツのエラー)浅田真央/-0.7点
(3F/フリップのエラー)グレイシーゴールド/-0.7点(FS)
/-0.6点(SP)
(3Lz/ルッツのエラー)鈴木明子/-0.7点
(3F/フリップのエラー)アシュリーワグナー/-0.3点
(3Lz/ルッツのエラー)ジジュンリー/-0.3点
(3Lz/ルッツのエラー)村上かなこ/-0.2点
(3F/フリップのエラー)キムヨナ/-0.2点(SP)
(3Lz/ルッツのエラー)ケイトリンオズモンドー/-0.1点
綺麗に飛んだものは、ジャンプのできばえの加点で相殺されて差があります。
この世界選手権では何となく-0.2~-0.7の減点という感じです。
ジャンプが綺麗に飛べてない選手は、エッジエラーのマイナスと、
できばえのマイナスも一緒になって、1.0点以上の大幅減点になっています。
書き出してないけど、ソトニコワ選手とか……。
エッジエラーは、矯正が大変難しいです。
治ったと言われる選手は、女子では
私の知っているのは引退したジョアニー・ロシェット選手だけです。
エッジエラーを指摘される選手のジャンプを見てみると、
(テレビで足許が確認できるものは)
途中まではまっすぐ、もしくは正しい方角に倒すことができていても、
それがジャンプのトウをつく少し前にエラーの方角にエッジが
傾いてしまっていました。
2013年の世界選手権、上位選手で、エッジエラーが取られた、取られなかった
とSPとFSでジャッジの判断が別れたのはヨナ選手だけだったので、
取られたジャンプと取られなかったジャンプを見比べたかったのですが、
SPとFS共に横からの撮影でエッジの向きはわかりませんでした。
ただ、6分間練習で斜め前からフリップが撮影されているものがあったのですが、
それを参考にさせてもらうと、ターンで入って途中まではまっすぐ、それが
トウをつくまえに、エッジがエラーと判定される外側に倒れてました。
エッジエラーを取られたSPのフリップは、おそらく
この練習と同じようなものを飛んでいたのだと思われます。
エッジエラ-とマークされているジャンプを飛ぶ際は、
全選手、真正面か真後ろから撮影してくれたら
減点具合が何となくでも比較しやすいんですけどね~。
次はフリープログラムの構成と基礎点を~