人類が月にすら到達していない1953年公開・・・ともなれば、今作の
オリジナル版になる
「宇宙戦争」では、明確に“火星人襲来”と銘打っている点は微笑ましくすらあるにしても、
さらに遡って、映画史に残る金字塔たる「市民ケーン」主演にして、
1938年当時23歳の新人俳優だったオーソン・ウェルズによる、
火星人襲来のラジオドラマで全米がパニックに陥った史実においては、当時の時代背景・・・
大恐慌の記憶はまだ生々しく、迫り来るナチズムへの恐怖感を思えば、
「人ごとではない」感すら漂わせている。
そして時代背景を現代に設定した”今回の”「宇宙戦争」ではダコタ・ファニング演じる
レイチェルはやはり「テロなの?!」と泣き叫ぶわけだ。
「宇宙戦争」・・・いや、これね、“戦争”じゃないし。全く。単なる「地球侵略」。
もぉね、どーしようもない。圧倒的に人間がやられまくるだけ。
あらゆる文明が破壊されまくるだけ。
週末のささやかな楽しみも息子とのキャッチボールの時間も娘とのお喋りも、
薄っぺらな博識も家族への愛情も侵略者へ立ち向かう勇気と誇りも残さず全てを奪って行く。
思うにね、個人的に思うに「スピルバーグ、よくぞここまでコアで極端な映画を撮ったな!」と。
良くも悪くも僕的にはこの無茶苦茶な行為に拍手を送りたいくらいで。
よく言われるのが、「シンドラーのリスト」辺りから、それまで自分の作品では、
わざと排除していた“ユダヤ人出身”を表に出し始めたって事。
80年代のスピルバーグ作品は、それこそ老若男女向けの超エンターテインメントそのものだった。
それが序々に「観客を選ぶ」作品に移行し、今回まさにそれを極めてしまった感がある。
はっきり言って「宇宙戦争」は極端に観客を選ぶ。糞でしかないとすら感じる人もいるだろう。
が、幸い?僕はスピルバーグがきっと狙った(妄想だけど)に違いない“一部の観客向け”の中に
含まれていたようで、その圧倒的過ぎる映像世界に涙さえ流してしまった。
とは言え、勿論感動の涙などでは無い。
えっと、何年か前に見た
「エクソシスト」で発露したのだけど、どうも僕の中に
“人智を超越した存在”が描かれたもの・・・
(勿論それは人間の想像が作り出した物だと分かっているにしても)そしてその“何か”に
触れた時にどうしようも無く泣けてしまう感情がある事に気づいた。
「エクソシスト」然り、さらに「新世紀エヴァンゲリオン」 /
第拾六話「死に至る病、そして」での
アスカ・ラングレーのおののき・・・
「私たち、こんなのに乗ってるの!?」に至っては人ってこんなにも涙が出せるものなんだ・・・と
ある意味人体の驚異すら感じる程に、滝のように溢れる涙はまさに漫画の世界だった。
何だろ。喜怒哀楽のどれとも違う感情がもたらす涙。思うにあれは例えば
“マリアの石像が目から血を流した(ように見える)”のを見て涙する人達の感情に
近いのかもしれない・・・感情の種別としては。
ってだいぶ程度の差はあるけど。。。
「宇宙戦争」の“地球外の生命体”による完膚なき容赦なき圧倒的な壊滅行為。
しかも奴らは何の前触れもなしに突然やって来て突然に行為する。
当たり前だけど、何の説明もない。と言うか仕様がない。と言うかするまでもない。
見れば分かる。破壊と侵略である。それだけである。徹底している。
この時僕が感じた呆然自失振り・・・きっと大災害に遭遇した人達の感情って
こんな風なのかもしれない。終わりなき焦燥感。果てしない喪失感。
で、ここまでこの作品に入り込めたのって・・・いや、原因は分かっていて。
元々SF好きだったり、“X-ファイル”辺りが好きだったり、
自然災害に尋常じゃない恐れを持っていたりと。
きっとそんなのが重なった結果なんじゃないかと思う。
CMでは「今試される、愛と勇気」なんつって煽ってたけど、最早トム・クルーズでさえ脇役。
強引過ぎるエンディングも、あらゆる兵器すら歯が立たないなら寧ろ「あれしかないじゃん」と
有無を言わさず納得させる力技。
圧倒的に偏った、極端過ぎる作品を莫大な金をかけて監督の趣味丸出しで
やりたいように作ったら、これが僕の嗜好に面白いほどにハマったって言う、ある意味
(僕の中では)奇跡的な作品。
スピルバーグは「もう制作費が回収出来ないから大作は作らねーよ」って発言してたけど、
もういいよ。OK。これが最後だとしても大満足だから(笑)
BGM:
交響曲第二番ハ短調「復活」 / マーラー
P.S もの凄い久しぶりにUPしました。実はこのところ某mixiばかりやっていて
怠惰を極めていました(つってもmixiの方には色々書いていたのですが)
久々にアクセスして、「アクセス数なぞ絶対に連日ゼロだろう」と思いきや、これが意外にも
そうでもなくて。ありがたい事です。感謝です。
で、ちょっとここいらで心機一転goo BLOGから引っ越しを考えています。
色々模索中ですが、その内ここに記載します。
基本的には今と変わらずアート系ネタ中心に、日記ぽく無い形で続けていくつもりです。
まぁ、そんなところです。