窪田空穂

国難に　殉じにけりと　慰むれ　親には子なり　天皇の兵

　　　　　　　　　--　木草と共に　--

よみ人知らず

世の中は　いづれかさして　我がならむ　行きとまるをぞ　宿と定むる

　　　　　　　　　　　　--　古今和歌集　--

石上露子

身のはてを　知らず思はず　今日もまた　人の心の　薄氷（うすらひ）を踏む

　　　　　　　　　　　　--　石上露子集　--

小野小町

今はとて　わが身時雨に　ふりぬれば　言の葉さへに　移ろひにけり

　　　　　　　　　　　　--　古今和歌集　--

よみ人知らず

なみだ河　枕ながるゝ　うき寝には　夢もさだかに　見えずぞありける

　　　　　　　　　　--　古今和歌集　--

太田道灌

急がずば　濡れざらましを　旅人の　あとより晴るる　野路の村雨

　　　　　　　　　　　　　--　慕景集　--

松平定信

蚊遣火の　烟（けぶり）は軒を　つたひつつ　たちものぼらぬ　雨の夕ぐれ

　　　　　　　　　　　　　--　三草集　--

森 澄雄

子が食べて母が見てゐるかき氷

　　　　--　白小　--

源 重之

音もせで　思ひに燃ゆる　蛍こそ　鳴く虫よりも　あはれなりけれ

　　　　　　　　　--　後拾遺和歌集　--

小林一茶

大原や小町が果の夏花（げばな）つみ

　　　　--　七番日記　--

京極為兼

枝にもる　あさひのかげの　すくなきに　すずしさふかき　竹の奥かな

　　　　　　　　　　　--　玉葉和歌集　--

北原白秋

指さきの　あるかなきかの　青き傷　それにも夏は　染めて光りぬ

　　　　　　　　　　　　--　桐の花　--

与謝蕪村

夏河を越すうれしさよ手に草履（ぞうり）

　　　　　　--　蕪村句集　--

星野麦丘人

箸割つてわが冷麦の季（とき）来る

　　　　　--　燕雀　--

よみ人知らず

のみすぎた畳の酔は入梅（つゆ）に出る

　　　--　誹風柳多留拾遺　--