松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

中国産冷凍いんげん

2008-10-16 01:47:55 | Weblog
 また、中国製冷凍食品から高濃度の農薬が検出された。今回、冷凍いんげんから検出されたのはジクロルボス(DDVP)6900ppm。
 現時点では解釈が難しいが、輸入者であるニチレイフーズが品質管理に絶対と言っていいほどの自信を持っているのは確かなようだ。
 畑から生産・品質管理を徹底し、選別やすじ除去などは人の手で行うにせよ、その後の洗浄やブランチング、冷凍など加工のロットはかなり大きいはず。そして、そこからの小分け包装は自動化が進んでいるだろう。
 そうすると、中国の工場でごく一部の袋にだけ人為的に農薬が入ってしまうという事態は考えにくい。

 ニチレイは、輸入冷凍野菜を取り扱うメーカーなどで組織する「輸入冷凍野菜品質安全協議会」(凍菜協)の中心メンバーの一つ。凍菜協はもう何年も、中国産冷凍野菜の安全・品質の向上にすさまじい努力をしてきた組織。食のリスク、品質管理のプロ集団だ。それだけに、譲れないものがあるのだろう。


 ギョーザ事件と違うのは、ジクロルボスが国内でも流通しているということ。ギョーザ事件で問題となったメタミドホスは、国内では農薬としての流通はなかったので、最初から中国での混入だろうと考えることができた。
 しかし、ジクロルボスは、国内で農薬として利用されているほか家庭用の殺虫剤として使われることもある。ジクロルボスが、中国で混入した可能性を検討するのと同様に、国内流通段階や開封後における混入も考える必要がある。
 
 千葉県柏保健所が、「市内の男女2人から吐き気や舌のしびれなどの訴えがあった」と発表したのを受けて、新聞などが「ほかの袋でも健康被害の訴えが出ている」と報じているけれども、これはまだ判断つかない。ギョーザ事件の時も、「ギョーザを食べて具合が悪くなった」という人が山ほど出たが、結局、有機リン系農薬の中毒症状を示したのは最初に明らかになった3例10人だけだった。

 「この食品には農薬が混入しているかも」と思うだけで気分が悪くなる人もいる。健康影響が本当に、このいんげんのせいであるのかどうか、保健所や県警による分析結果を待つしかない。

 
 それにしても、テレビの報道などは比較的落ち着いている。ギョーザの時とは大違い。ニチレイ、東京都、食品安全委員会などが、かなりの情報を迅速に公表しているためだろうか。ギョーザ問題が教訓となっているのか。

 今日は、朝からコープながので講演していた。ギョーザ報道がいかにひどいものだったか、解説した。輸入検疫を強化しても、犯罪に起因する問題食品を見つけるのは困難であることも話した。ギョーザ事件のような100万の1というような確率の問題食品を、輸入検疫という抜き取り検査で見つけるのは無理だ。組合員の方々はある程度、理解してくれたように思う。
 今回の冷凍いんげんについても簡単に説明し、「また中国か、と思った人も多いでしょうが、国内でもこの農薬は使われているから、まだ判断つきません」と言った。

 麻生首相は、朝日新聞によれば15日夜、中国製冷凍インゲンから農薬が検出されたことを受けて、「検疫体制はちゃんとやらないとダメなんじゃないかという話を農林、厚生それぞれに話をしてある」と述べたそうだ。この人、どうもやっぱり、言葉が軽いですね。「私、なんにも分かってません。だれもまだ、レクチャーしてくれません」と言っているのも同然。
 
 ともあれ、しばらく経過をみたい。