ビスケットのあれこれ

ビジュアル言語ビスケット(Viscuit)に関するあれこれを書いてゆきます.

コンピュータは脳の拡張

2016-07-15 07:14:28 | 1
自動車は人間の足の拡張,ラジオは耳の拡張,テレビやカメラは目の拡張と言われています.同じような意味でコンピュータは脳の拡張であると言ってもよいでしょう.たとえば,電子辞書やWikipediaその他インターネット検索というのは脳の記憶の能力をはるかに越えて補ってくれています.それ自体はとてもすごいことですが,元々あった本や百科事典をコンピュータに載せただけとも言えますから,紙や印刷技術の発明のインパクトの強さにかすんでしまいます.

同様に,コンピュータの日本語は計算機と言いますが,高速で計算する機械の視点でみても,そろばんや手回し計算機という発明が既にあったわけですから,それが高速で正確になったというすごさ以上のものでもありません.

本当の意味で「コンピュータは脳の拡張」と言ってよいのは,コンピュータシミュレーションのことではないでしょうか.コンピュータシミュレーションというのは,実際に実験をやるかわりにコンピュータの中で計算で実験をしてみようというものです.条件を変えて何度でも実験できますから,その効果は絶大です.そのときどうやって計算する方法をコンピュータに教えるかというと,それがまさにプログラムなわけです.

ビスケットでも,単純なシミュレーションであれば実に簡単にプログラムできます.たとえば,風邪の感染のシミュレーションはたった4つのメガネだけで,感染の広がり方や治り方を色々な条件を変えて試すことができます.このシミュレーションは実際の病気の予測などにはまったく役には立ちませんが,感染という計算が持っている性質を直感的に理解するには非常に強力です.


感染の次にやるのが,ジャンケンのシミュレーションです.3つの絵が3すくみのルールによってお互いにバランスをとるように作られています.ところが,このシミュレーションは「バランスを保ち続ける」という大方の予想に反して,どれか一つの絵に収束してしまいます.このジャンケンのシミュレーションを色々な大人に見せて予想をしてもらったところ,正しく予想できた人は人工知能研究者だけでした.僕も間違えました.しかし,この結果を元にして,もう一度3すくみのルールを考えてみると,しごく当たり前の結果であることがわかります.3つの種があるうちはバランスがよいけれども,もし1つの種が滅んでしまって,世の中には2つの種だけになってしまうと,勝ち負けは一方的になり,一方は滅んでしまいます.たとえば,パーが頑張ってグーを滅ぼしてしまうと,チョキとパーだけになるので,パーも滅んでしまいます.最初に勝ってしまった種が次に滅んでしまうというのは皮肉なことですね.

人間の先入観というのはまったく当てにならないものです.ところがこうやってシミュレーションで結果を見せられると,考えを変えざるを得ません.人間は理解を切り替えられるくらいな柔軟性も持っているんですね.

我々の生活において先入観で失敗することは多々あります.たった数円安い買い物のために交通費と時間を無駄にしてしまう話.宝くじの共同購入に騙される人.住宅ローンや生命保険の計算も直感的ではないので,判断を間違えやすいですね.これらはシミュレーションをやってより懸命な判断ができるようになりましょう.何度もシミュレーションをすることで,その領域への直感も鍛えられ,先入観があてにできるようになるでしょう.

コンピュータによるシミュレーションのもう一つの良さは,難しい数学を使わなくてよいということです.これまで数学が発展したのはコンピュータが無かったからです.年利2パーセントのローンを10年借りると,利息はいくらになるかといった計算は,指数関数で計算できます.一方で,コンピュータシミュレーションでこの計算をすると,かけ算と足し算を沢山繰り返す,ということでもできます.力学の運動だって,コンピュータを使わなければ微分方程式を解かなければなりませんが,コンピュータシミュレーションでは足し算とかけ算を繰り返すだけです.この意味は,プログラムは実はすごく簡単だということです.

プログラムを自分で書くということも重要です.自分で書くから,意外な結果にも納得できるのです.観光バスに乗って観光スポットに勝手に連れて行ってくれることよりも,レンタカーを借りて自分で運転して観光をした方が,自動車は人間の足の拡張っぽいですよね.同じように,自分でプログラムを書いて,その動きに納得して,そして意外な結果を受け入れる,これが「コンピュータは人間の脳の拡張」なのです.



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1 コメント

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Unknown (اسماء بنات)
2016-09-02 00:16:24
ありがとうございました
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