ビスケットのあれこれ

ビジュアル言語ビスケット(Viscuit)に関するあれこれを書いてゆきます.

ビスケットの教え方

2014-02-06 07:28:03 | 1
最近,立て続けに小学校の授業に呼ばれてビスケットを教えることがあったので,ビスケットの教え方について少し書いてみたいと思います.

まず「ビスケットの教え方に失敗する」ということはどういうことでしょうか.これまで自分で教えたり,他の人が教えるのを見てきて,根本的な失敗ということはありません.ビスケットは基本的に知らなければならないことが非常に少ないですから,その最低線の部分は誰でもクリアしています.ところが,少し内容を欲張ると,とたんに理解度が下がったりします.

難しさのレベルを説明すると.

1)絵を描いて動かす.

2)絵が動く方向・速度を自由にコントロールできる.

3)絵を回転させることができる.

4)回転の半径・速度を自由にコントロールできる.

5)2コマのアニメーションができる.

6)2コマのアニメーションの微妙な動きを自由にコントロールできる.

こんな感じになります.ここまでがビスケットの基本的な部分で,30分くらいあれば小3以上なら教えることができます.ただし,彼らがこれらを完璧に理解しているかというと,疑問です.1)3)5)は出来たか出来ないかがわかりやすいので,比較的クリアできています.2)4)6)の「自由にコントロールできる」は,ちょっと難しい.1)3)5)を教えるのに失敗することはほとんどありませんが,2)4)6)は成功したのか失敗したのかよくわからない.

この難しさというのは,出来た動きが,本人が意図したものなのか,偶然出来たものなのか,その違いが外部からみて区別しにくい点にあります.たぶん,ビスケットならではの難しさなんでしょう.scratchなどの他のプログラミング言語では偶然にできるということはほとんど無いと思います.

たとえば2)の動く方向ですが,

この左側の星の場合は,どの向きに進んでも変ではありません.それに対して,右側の星には動きの線が入ってますから,これは左下に向かって動かないと変です.2)が理解できているかどうかは動く方向が決まっているような絵を描かなければ分からないのです.

4)の場合は中心がズレないように回転している絵とか,6)の場合は尺取り虫や人が歩いている絵を使います.

ここで授業とワークショップの違いが現れます.

ワークショップでは理解のゴールを明確には決めません.むしろあまり教えないで,自分たちで発見したり,発見したものを教えてあげたり教えてもらったり,そういった活動の方を重視します.知識を一方的に教える教師としての役割は少ないですが,完全に放っておいて上手く回るわけでもありませんから,ここの2)4)6)を理解した人が増えるような雰囲気作りが必要です.たとえば,そういう工夫ができた作品をみんなの前で褒める,といったことです.ジワジワと教えて行くという感じですか.

授業の場合は,それぞれのステップに分けて,適切な絵を例題にして教えれば,教えられます.多くの人たちにとってこの教えかたの方がなじみがあり,教わっているという感じがあるので,受けが良いかもしれません.ワークショップと比べて,楽しさは減りますが,確実に多くの人が理解でき,最終的に時間の短縮になります.

この次にゲームなどのより繊細な作品を作る際には,この2)4)6)ができるかできないかで,作品の完成度がまったく違ってきます.