○方法俳句002・同質回帰01・鈴木六林男
「同質回帰」という言葉は造語ですが、なにかしら俳句という文学に深く関係しているような気がします。「いつのまにか知らないうちにみずからに帰る」というような意味ですが人間の世界の「因果応報」とも少し違うもっと軽くもっと根源的な現象をいうのでしょうか。「うかつにも」という言葉が最も近いのかも知れません。
○「昼寝よりさめて寝ている者を見る」(『悪霊』1964)(鈴木六林男01)
○季語(昼寝・三夏)
【鑑賞】:昼寝をしている者をみている自分もさっきまで、同じように昼寝をしていたひとりです。起きてしまった自分は「うかつにも」まだ寝ている者を見てしまったのです。
○鈴木六林男(すずきむりお)(1919~2004)
○好きな一句「遺品あり岩波文庫『阿部一族』」(『荒天』1949)02
○季語(無季)
【Profile】:1946年「花曜」創刊、主宰。「京大俳句」時代より→西東三鬼に師事。46年より60年まで現代俳句協会関西地区議長、大阪俳人クラブ、大阪俳句史研究会会長。句集は「荒天」「谷間の旗」「第三突堤」「桜島」「国境」「王国」「後座」「悪霊」「雨の時代」など、文集に「定住游学」など。現代俳句協会賞(2002年)、大阪府芸術文化功労賞、 『雨の時代』で第29回蛇笏賞受賞。
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鈴木六林男掲載句
03身をめぐる血の管あまた冬籠(『雨の時代』1994)(冬籠・三冬)〈五体・血〉2010/12/21
04墓標かなし青鉛筆をなめて書く(『荒天』1949)(無季)〈色彩・蒼〉2012/7/11
05ヒロシマ忌泳ぎし素足地を濡らす(『第三突堤』1957)(ヒロシマ忌・晩夏)〈五体・素足〉2012/8/7
06地球儀に空のなかりし野分かな(『雨の時代』1994)(野分・初秋)〈特集・天体(地球)〉2013/9/15
07五月の夜未来ある身の髪匂う(『谷間の旗』1955)(五月・初夏)〈五体・髪〉2018/5/1
08遮断機へ青春去りし胸並ぶ(『谷間の旗』1955)(無季)〈次元・青春(時間)〉2021/12/12
09確実に近づく地震ビアホール(ビアホール・三夏)〈例句〉2022/8/4
10暗闇の眼玉濡さず泳ぐなり(『谷間の旗』1955)(泳ぐ・晩夏)〈例句〉2024/8/14
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