くさぶえの道

身辺雑記 思い出の記

海外版振り込め詐欺

2016-02-27 19:00:03 | 参加する
つい先日悪名高きオレオレ詐欺なるものに私も遂に遭遇した。しかも短時間とは言え、見事に引っかかってしまったのだから我ながら情けない。途中気が付いたので実害こそなかったけれど。

顛末はこうだ。その日はどうしたことか日中一度もパソコンを開かなかった。午後何時間か外出したこともあって疲れていたかもしれない。寝る前にメールだけでもとチェックすると、久し振りの友人の名前を見つけた。アメリカ人と結婚して、ご主人を亡くしてからもずっとサンフランシスコに住んでいて、時々メールをやり取りしていた仲だ。たまの里帰りの時は私が皆に声を掛けてクラス会を開いたりもして、長年旧交を温めてきたのだが、近年は暫く音信がなくてそろそろ気になり始めていた所だった。

驚いたのはその久しぶりのメールが全部英文であって、それは旅先のフィリピンのホテルで出しているからだ。内容は、財布とcell phone(ケータイか?)を失くして困っているので、お金を貸して貰えないかというものだった。$1950。友達の為なら出せない額ではない。普通ならば疑問視だらけの内容なのに、その時の私はすべての疑問を頭の隅に追いやり、唯々彼女の途方に暮れている様子のみが目の前にちらつくのだった。それと言うのはメールに気が付いたのが遅すぎたからだ。着信時間をみたら明け方3時、それを発見したのが夜中の12時近く、この長時間どんなに心細い思いで返事を待っていたのかと思うと、気の毒なことをしたと言う気持ちだけが先立った。冷静に考えれば、おかしなことばかりだというのに。何はともあれ、まず安心させねばと大急ぎで返信を入れた。「すべて了解したから、とりあえず送金方法など教えて」とこちらの新しい電話番号を書き添えた。

大慌ての私の様子を見て傍らの夫が「詐欺かもしれないから気を付けて」と盛んに言ってくるのが、その時の私には友達の事を詐欺呼ばわりしているとしか受け取れず、憤慨して言い返したりしたのだから相当な馬鹿。でも本当の馬鹿でもなかった証拠に、返信と同時に思いついて、彼女のアメリカの自宅には今まで通りにメールを、翌朝は横浜の実家にお住いの筈の妹さんに問い合わせの電話を掛けてみた。しかし何遍掛けても留守なのかとうとう連絡付かずに終わった。

後は本人からの返信を待つだけ、旅先からか?自宅からか?しかし一日待ってもどちらからも返事は届かず、自宅へのメールに至っては《undelivered》の通知が来たのだ。これはおかしい。アドレスが変わったのかも。おまけに妹さんとの連絡もつかないまま仕方なく、もう一度今度は簡単な英語でフィリピンにメールを試みた。「電話せよ」と。すると間髪入れず、cell phoneがないから電話出来ないと相変わらず英語の返事が来た。ここで本人では有り得ないことが決定したのだが、彼女の本当の居場所が分かるまで暫く芝居に付き合ってみることにした。そこでもう一度このアホらしいやり取りを繰り返したのだが、三度目に敵は決定的なヘマをした。何と彼女の名前の代わりに自分の本名を出してしまったのだ。G,M.で始まるヒスパニック系の名前。この予期せぬ間抜けな結末ですべてが終わったのだが、果たしてこの人物は自分の失敗に気づいたのだろうか?「もうこれ以上関わらないでほっとけ」と言う夫の忠告をよそに、私は最後にこんなメールを出してお終いにした。「G.M・・・・君、茶番劇は終わった。もうこんな悪事からは足を洗いなさい。」
これで当然通信はピタッと止った。夕方この一連のメールのやり取りを全部プリントアウトして警察に届けたところ、若い女性の担当が丁寧に聞き取りをしてくれた。

横浜の妹さんとやっと連絡がついて初めて友人の消息が判った時はすべて終わったあとだった。妹さんは暫く旅行に出かけていたとのこと。留守宅にも同じ偽メールが来ていたそうだ。友人から最近メールが来なくなったわけは、日本語仕様のパソコンがこわれてしまったせいと判った。今まではお互いメールアドレスしか知らなかったので。

今までこんな詐欺にかかるような人は全くどうかしていると思っていたが、自分がその立場になって初めて騙される人の心理状態が解った気がした。大切な人の事ともなれば、ましてや母親ならばあり得ることだろうと。

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