デジタル化された映像はそれまで漠然としか判らなかった爆心地をピンポイントで現わし示すのに役立っていた。一瞬前までは普通の日常があったその地点の風景が直後の無残な風景と交々映しだされたのが特に衝撃的だった。そして今まで度々写真で紹介されてきた廃墟となった地上の惨状、沢山の亡骸の間に呆然と佇む女性の姿などが、鮮明になった分だけより現実感のある切実なものになっていた。
もう一つ、私には殆ど初耳でショッキンングだったのは日本軍の毒ガス兵器使用の番組。
戦時国際法では当時すでに毒ガス使用は禁じられていて、日本軍は使用していないと誰もが信じていたのに、それが真っ赤な嘘だったということ。秘密裡に毒ガス製造に駆り出され、肉体的に酷いダメージを受けた人たちの証言から始まって、日本軍はジュネーブ法に違反して、支那(中国)で1万発のガス弾、4万本のガス管を使って何万人もの支那兵を殺したと言う。戦場だけでなく、731部隊では憲兵によって捕えられた抗日組織の人々を毒ガスも含むあらゆる人体実験に使って3000人も殺したのだ。戦後間もなく発覚した此の事実を信じなければならないと悟った時、私は心底失望し、悲しかった。昨日の毒ガスの話も全く同様だ。
加害者としての日本をこれほど痛感したことはない。
この番組では当時のアメリカは原爆の後も、終戦をより早めようと九州に絨毯的に毒ガスをばら撒く準備をしていたことにも触れた。その膨大な量のガス弾の山の映像を見て本当にぞっとした。もしあの時終戦していなかったら、九州は勿論日本はどうなっていただろう。
もう一つおまけの嫌な話、戦後アメリカは日本軍を裁いたが、その際731部隊の所業は不問に付した。それは731隊が集めた実験データを、自分が利用できる得難い貴重な資料として引き渡すことを条件としたのだ。このご都合主義。しかも彼は未だに原爆使用について公けに謝罪も清算もしていない。敗者は戦争とはこんなものなのだと肝に銘ずべき。
原爆の被害はナチスのホロコーストと同様殺戮の量においては地上最大のものであって、他のものとは比べようもないが、被害を受けた一人一人にとっては全く同じことなのだ。何の差があるだろう。どこの国のどの戦争であろうと戦争とはかくの如くおぞましく醜い。正義などどこにもない。あの戦争はこの教訓を得ただけでも日本にとって大きな意味があったと思いたい。