Ciao,マリィナです。DOLの全天走査計画MDSS(マリィナ・デジタル・スカイ・サーベイ)。今回は冬の星座の代表格おおいぬ座が綺麗なカタチでみつけられましたので、おおいぬ座にまつわる天体のお話をふまえ、またおそらくもっとも完全な形でスクリーンショットに納めることができたエリダヌス座もこまかなところを解説したいと思います。
さて、この頃は春眠不覚暁ということで(?)朝がなんだか眠たいものですから、せっかくの夜にインできていません。少しずつでも海に浮かんで遊びたいと思っていますけれど、なかなか…。
この頃は18時頃でもだいぶ空が明るくなってきましたね。気温もそうですが、このころの大気の色合いがかなり好きです。18時半頃にはすっかり暗くなりますけれど、シリウスがもう南から西に移ってきていて、東にはしし座も上がっていますので、春の星座の夜がだんだんと見られるようになっています。
ただ春は霞がかることが多くて星空もあんまりはっきりしませんから、星空を見るのにはあんまり向いていないのが残念ですね。
では、今回の星空をご覧下さいませ。場所はヴェネツィアの沖合です。
◎おおいぬ座が綺麗だがそれ以上にエリダヌス座が目を惹く
◆いっかくじゅう座(Monoceros)
バラ星雲で有名な星座ですけれど、バラ星雲が何座にあるのか普通の人は知らないとおもいます。くわえて、冬の大三角形の中に星座があるなんて思いませんし。
こんなところによく設定したなーと感心します。
星座線の結び方も本によってかなり異なっていますので、考え込んじゃいますね。
◇天の川(Milky Way)
おおいぬ座から真上に向かっていっかくじゅう座に被さるカタチとなります。もっと上の方にはオリオン座やおうし座などがあるでしょう。
◆おおいぬ座(Canis Major)
南の空に綺麗に見えています。まさに完璧です(自画自賛)。
案外低い位置に見える星座で、東京などではビルが多いのでシリウスだけが合間にはっきりと見える、なんて光景はよくあることかなって思います。
3月も終わりですので、現在では早めの時間に南を通過して見えています。
Sirius
夜の全天でもっとも明るく見える星です。日本では青星と呼ばれていました。それに対して赤星はさそり座のアンタレスですね。
この星は月のように引っ張り合う星を引き連れていますけれど、あまりに明るすぎ、またお互いが接近しているために観測がなかなかむずかしいそうです。
引っ張り合うことによって生まれる軌道や光のゆらぎの観測と、実際の望遠鏡による観測によって発見されましたけれど、シリウスの本星自体の明るさが大きすぎてなかなか望遠鏡では観測しづらいですね。小型の望遠鏡ではみられないようです。
CMa VY(おおいぬ座VY星)
全天でもっとも大きな恒星と見積もられているのがおおいぬ座VY星です。ニコニコ動画というサービスに、おおいぬ座VY星他、超巨星の面白い比較動画が上がっておりますので、ご覧下さい。
◎星の大きさが太陽から土星軌道までの直径…
曲はFF7のセフィロスのテーマ『片翼の天使』
んー。映像で見るとわかりやすいですね。このシミュレーションは大きさが途方もなさ過ぎてちょっとぴんと来ませんけれど…w 土星軌道辺りまでふくらんでいます。ちなみにこのソフトはCelestiaという天体シミュレーションのソフトです。
この星を一周しようと思ったら、ジェット旅客機が時速800kmで飛んだとしても1305年係るそうです。つまりたった今一周が完了したとすると、1305年前、704年には出発しなくちゃなりません。平城京遷都が710年ですから…。なんということでしょう。
この星の大きさは実際の観測による確認がされたわけではないです(なので見積もり)けれど、あまりに大きいですよねー。この星までの距離は遠く、見た目の直径が正確には測定できないため、本当の大きさは推定の域を出ません。
ちなみにこの星の近くにはNGC2362という星団がありまして、その星団に属していたガス成分がこの星のそばにあり、つまりは同じ距離にあると言われています。その距離は約5千光年だそうです。
おおいぬ座τ(タウ)星がこのNGC2362星団のもっとも目立つ星となっていて、おおいぬ座VYはそのそばにあります。おおいぬ座のしっぽの辺りにτ星はうつっています。VY星はだいぶ暗いので画面上では表示されていません。だいたい矢印の先の辺りにあります。
ちなみにおおいぬ座τ星は4.4等、おおいぬ座VY星はWikipediaによると7.4等から9.6等とありますので、DOLの画面上で見られる星はおそらく肉眼で観測可能な6等まででしょうから、残念ながら表示されていないのですね。ただし、このおおいぬ座VY星は絶対等級が-9.4等というものすごい明るさです。
◎ある距離に配置したときの星の明るさが絶対等級(MDSS研究編3)から
◆オリオン座(Orion)
どこが? と言う感じですけれど、たった一個だけ星が見えています。
Saiph
この星はサイフといいます。剣を意味しています。ちょうどオリオンの右脚にありますね。リゲルと反対側の足先の星です。リゲルと併せて実にわかりやすい明るさです。
非常に高温の星で、温度からいえばリゲルよりも2倍も高いそうです(約26,000℃)。こうしたあまりにも高温の星は、一気に星の内部の燃料を使い尽くして、赤色超巨星などよりもはやく超新星爆発するといわれています。
◆うさぎ座(Lepus)
こぢんまりしたいい形の星座だと思います。オリオンの足下にいるので狩られる運命にあるのでしょう。
コチラも綺麗に映っていますね。やっぱり南の方を向いてスクリーンショットをとると形が綺麗にとれてイイですねー。
◆はと座(Columba)
おおいぬ座の足下にある星座ですのでかなり高度は低く、街中では見ることができないでしょう。
この星座にある星の一つが、オリオン座大星雲から飛び出して今輝いています。Wikipediaによると秒速128kmだそうです。
動いてないように見えますけれど、恒星もそれぞれ動いているのです。実は。
◆ちょうこくぐ座(Caelum)
彫刻用のみ座、金属彫刻用のみ座、のみ座などと呼ばれていた星座です。
きんぞくちょうこくようのみざー…ぁ?
エッチングに使うドライポイントとかニードルみたいなものでしょうか?
この星座はフランスの天文学者ラカイユによって設定された「南天星座カタログ」にある17星座の一つで、フランス語では「Burin」と書きます。
Burinとは「ぶりん」じゃなくて「ビュラン」です。銅版などに溝をつけて、その溝に貯めたインクを紙に転写する版画の技法に使われた道具です。
そういうわけできんぞくちょうこくようのみ座(長いってば)などと訳されているようです。
◆かじき座(Dorado)
一部のみ見えています。大マゼラン雲がそばにあることで有名です。
◆とけい座(Horologium)
振り子時計です。星座絵では向かって左に振り子が描かれています。
ガリレオ・ガリレイはものが揺れるとき、左右に振れる大きさにかかわらず往復時間が同じという「振り子の等時性」を発見しました。
振り子が左右に振れる時間が一定と言うことは、その一定したテンポを利用した道具が作れることを意味します。時計はその最たるものでしょう。
精度の高い計時は実験などでは非常に重要ですし、当然、天文学にも大きな影響を与えています。
振り子がなぜ時計になるのかについては、また別の機会に簡単にご紹介しようと思います。
◆エリダヌス座(Eridanus)
フランス語ではエリダン座と呼ばれています。日本語でも初期の頃はエリダン座と呼ばれていたようですので、もしかするとフランス語からきたのかな、と思わないでもありません。
英語版のWikipediaには面白いことが書かれていて、エリダヌス座とみずがめ座は水系を同じにする見方もあるらしいです(笑)水瓶の水がどんどん流れ込んでエリダヌス座になると書かれています。
その場合は、水瓶の水がどうやってエリダヌス座に達するか、星座の結び方を根本から変えなければなりません。試みとしてはおもしろですね。
さて、エリダヌス座は全天で6番目という大変大きな、長い星座ですね。川の果てにある明るい一等星アケルナル(アケルナー)はそのまま川の果ての意味です。
アケルナルのある場所まではプトレマイオスも見ることができませんでした。なので、彼の設定したもともとの川の果ては、もっと緯度の高い星、θ星アカマルだったそうです。
αEri(Achernar)/θEri(Acamar)
「アカマル」とはなんともすごい名前ですけれど。実はこれ、「rn」を「m」と誤読し、書写された筆跡があるそうです。なので「Acamar」ではなく「Acarnar」、つまりアケルナルのことなんですね。
プトレマイオスの著書「アルマゲスト」にあるアケルナルは、恒星表にある位置の記述からθ星であることが解っており、つまりα星のアケルナルじゃなかったのですね。アケルナルの周囲は南天の星座ばかりですから、見えていなかったのです。
プトレマイオスの著書はアラビア方面に流れ、それがさらに研究結果などを加えられてヨーロッパに再度輸入されたという歴史がありますので、その際の書写に誤りがあったためにこのような名前になっているわけで、人の手による複製のおもしろさを感じることができますね。
それらの筆跡を私たちが読めるように翻刻する作業は実に大変ですので、それを思うと努力が偲ばれるなぁなんて感心してしまいます。
◆ろ座(Fornax)
炉です。溶鉱炉とかそういうのではなく、星座絵を見る限りではフラスコなどを熱するかまどのようなものらしいです。
フランス語では囲炉裏みたいな意味もあり、高熱の炎と言うより炭などを熱した「おき」をつかうといった趣でしょうか。
ラカイユの南天星座カタログの1つです。
◆ほうおう座(Phoenix)
ヨハン・バイエルによって設定された、南天の新しい星座です。
この辺りの高度にある星座はプトレマイオスの48星座にはありませんけれど、いくつかアラビア語名のついた星があります。
このほうおう座にもα星には「Ankaa(アンカー・不死鳥)」「Zaurak(Nair al Zaurak(ザウラク・船の明るい星))」などと名前が付けられています。
単にギリシアの人々がその星に感心を寄せていなかったと言うだけではなく、緯度の関係で観測できなかった可能性もあります。
また、プトレマイオスの仕事がアラビアに伝わり、その後キリスト教の発展によって中世ヨーロッパに科学発展の停滞期が訪れます。
すると、今度はアラビア半島で天文学が発展しました。それまでにも、地中海より緯度の低いアラビア半島では星に名前をつけて航海の目印にしていたと想像できますけれど、それらの星が恒星のカタログに追加されました。
さらにそれらの成果が十字軍の遠征期からルネサンス期にヨーロッパへ再度輸入され、ヨハン・バイエルの時代にこの星座が設定されました。
天文学も他の科学と同じように政治と切り離して考えられないという、端的な例かなと思います。経緯をたどるとなかなか面白い星座かも知れません。
◆おわりに
いかがでしたか? 今回は南の星座が少し多めです。おおいぬ座VY星の実際の大きさが観測されたら面白いですねー。遠すぎてちょっと難しそうですけれど…。スクリーンショットをとったときには気づきませんでしたが、エリダヌス座がかなり綺麗に映り込んでいて、びっくりしました。でもさすがに全部は入り切りませんね。角度などから見ても限界かな、と思われます。
今回のご紹介で4つの新しい星座をご紹介できました。88星座の残りは3つ、「ポンプ座」「レチクル座」「ろくぶんぎ座」です。
次回はろくぶんぎ座をしゅーてぃんぐしてみたいと思っております。うみへび座にくっついていますので、時間帯さえつかめば案外とらえるのは簡単かと。
でわ~☆
さて、この頃は春眠不覚暁ということで(?)朝がなんだか眠たいものですから、せっかくの夜にインできていません。少しずつでも海に浮かんで遊びたいと思っていますけれど、なかなか…。
この頃は18時頃でもだいぶ空が明るくなってきましたね。気温もそうですが、このころの大気の色合いがかなり好きです。18時半頃にはすっかり暗くなりますけれど、シリウスがもう南から西に移ってきていて、東にはしし座も上がっていますので、春の星座の夜がだんだんと見られるようになっています。
ただ春は霞がかることが多くて星空もあんまりはっきりしませんから、星空を見るのにはあんまり向いていないのが残念ですね。
では、今回の星空をご覧下さいませ。場所はヴェネツィアの沖合です。
◎おおいぬ座が綺麗だがそれ以上にエリダヌス座が目を惹く
◆いっかくじゅう座(Monoceros)
バラ星雲で有名な星座ですけれど、バラ星雲が何座にあるのか普通の人は知らないとおもいます。くわえて、冬の大三角形の中に星座があるなんて思いませんし。
こんなところによく設定したなーと感心します。
星座線の結び方も本によってかなり異なっていますので、考え込んじゃいますね。
◇天の川(Milky Way)
おおいぬ座から真上に向かっていっかくじゅう座に被さるカタチとなります。もっと上の方にはオリオン座やおうし座などがあるでしょう。
◆おおいぬ座(Canis Major)
南の空に綺麗に見えています。まさに完璧です(自画自賛)。
案外低い位置に見える星座で、東京などではビルが多いのでシリウスだけが合間にはっきりと見える、なんて光景はよくあることかなって思います。
3月も終わりですので、現在では早めの時間に南を通過して見えています。
Sirius
夜の全天でもっとも明るく見える星です。日本では青星と呼ばれていました。それに対して赤星はさそり座のアンタレスですね。
この星は月のように引っ張り合う星を引き連れていますけれど、あまりに明るすぎ、またお互いが接近しているために観測がなかなかむずかしいそうです。
引っ張り合うことによって生まれる軌道や光のゆらぎの観測と、実際の望遠鏡による観測によって発見されましたけれど、シリウスの本星自体の明るさが大きすぎてなかなか望遠鏡では観測しづらいですね。小型の望遠鏡ではみられないようです。
CMa VY(おおいぬ座VY星)
全天でもっとも大きな恒星と見積もられているのがおおいぬ座VY星です。ニコニコ動画というサービスに、おおいぬ座VY星他、超巨星の面白い比較動画が上がっておりますので、ご覧下さい。
◎星の大きさが太陽から土星軌道までの直径…
曲はFF7のセフィロスのテーマ『片翼の天使』
んー。映像で見るとわかりやすいですね。このシミュレーションは大きさが途方もなさ過ぎてちょっとぴんと来ませんけれど…w 土星軌道辺りまでふくらんでいます。ちなみにこのソフトはCelestiaという天体シミュレーションのソフトです。
この星を一周しようと思ったら、ジェット旅客機が時速800kmで飛んだとしても1305年係るそうです。つまりたった今一周が完了したとすると、1305年前、704年には出発しなくちゃなりません。平城京遷都が710年ですから…。なんということでしょう。
この星の大きさは実際の観測による確認がされたわけではないです(なので見積もり)けれど、あまりに大きいですよねー。この星までの距離は遠く、見た目の直径が正確には測定できないため、本当の大きさは推定の域を出ません。
ちなみにこの星の近くにはNGC2362という星団がありまして、その星団に属していたガス成分がこの星のそばにあり、つまりは同じ距離にあると言われています。その距離は約5千光年だそうです。
おおいぬ座τ(タウ)星がこのNGC2362星団のもっとも目立つ星となっていて、おおいぬ座VYはそのそばにあります。おおいぬ座のしっぽの辺りにτ星はうつっています。VY星はだいぶ暗いので画面上では表示されていません。だいたい矢印の先の辺りにあります。
ちなみにおおいぬ座τ星は4.4等、おおいぬ座VY星はWikipediaによると7.4等から9.6等とありますので、DOLの画面上で見られる星はおそらく肉眼で観測可能な6等まででしょうから、残念ながら表示されていないのですね。ただし、このおおいぬ座VY星は絶対等級が-9.4等というものすごい明るさです。
◎ある距離に配置したときの星の明るさが絶対等級(MDSS研究編3)から
◆オリオン座(Orion)
どこが? と言う感じですけれど、たった一個だけ星が見えています。
Saiph
この星はサイフといいます。剣を意味しています。ちょうどオリオンの右脚にありますね。リゲルと反対側の足先の星です。リゲルと併せて実にわかりやすい明るさです。
非常に高温の星で、温度からいえばリゲルよりも2倍も高いそうです(約26,000℃)。こうしたあまりにも高温の星は、一気に星の内部の燃料を使い尽くして、赤色超巨星などよりもはやく超新星爆発するといわれています。
◆うさぎ座(Lepus)
こぢんまりしたいい形の星座だと思います。オリオンの足下にいるので狩られる運命にあるのでしょう。
コチラも綺麗に映っていますね。やっぱり南の方を向いてスクリーンショットをとると形が綺麗にとれてイイですねー。
◆はと座(Columba)
おおいぬ座の足下にある星座ですのでかなり高度は低く、街中では見ることができないでしょう。
この星座にある星の一つが、オリオン座大星雲から飛び出して今輝いています。Wikipediaによると秒速128kmだそうです。
動いてないように見えますけれど、恒星もそれぞれ動いているのです。実は。
◆ちょうこくぐ座(Caelum)
彫刻用のみ座、金属彫刻用のみ座、のみ座などと呼ばれていた星座です。
きんぞくちょうこくようのみざー…ぁ?
エッチングに使うドライポイントとかニードルみたいなものでしょうか?
この星座はフランスの天文学者ラカイユによって設定された「南天星座カタログ」にある17星座の一つで、フランス語では「Burin」と書きます。
Burinとは「ぶりん」じゃなくて「ビュラン」です。銅版などに溝をつけて、その溝に貯めたインクを紙に転写する版画の技法に使われた道具です。
そういうわけできんぞくちょうこくようのみ座(長いってば)などと訳されているようです。
◆かじき座(Dorado)
一部のみ見えています。大マゼラン雲がそばにあることで有名です。
◆とけい座(Horologium)
振り子時計です。星座絵では向かって左に振り子が描かれています。
ガリレオ・ガリレイはものが揺れるとき、左右に振れる大きさにかかわらず往復時間が同じという「振り子の等時性」を発見しました。
振り子が左右に振れる時間が一定と言うことは、その一定したテンポを利用した道具が作れることを意味します。時計はその最たるものでしょう。
精度の高い計時は実験などでは非常に重要ですし、当然、天文学にも大きな影響を与えています。
振り子がなぜ時計になるのかについては、また別の機会に簡単にご紹介しようと思います。
◆エリダヌス座(Eridanus)
フランス語ではエリダン座と呼ばれています。日本語でも初期の頃はエリダン座と呼ばれていたようですので、もしかするとフランス語からきたのかな、と思わないでもありません。
英語版のWikipediaには面白いことが書かれていて、エリダヌス座とみずがめ座は水系を同じにする見方もあるらしいです(笑)水瓶の水がどんどん流れ込んでエリダヌス座になると書かれています。
その場合は、水瓶の水がどうやってエリダヌス座に達するか、星座の結び方を根本から変えなければなりません。試みとしてはおもしろですね。
さて、エリダヌス座は全天で6番目という大変大きな、長い星座ですね。川の果てにある明るい一等星アケルナル(アケルナー)はそのまま川の果ての意味です。
アケルナルのある場所まではプトレマイオスも見ることができませんでした。なので、彼の設定したもともとの川の果ては、もっと緯度の高い星、θ星アカマルだったそうです。
αEri(Achernar)/θEri(Acamar)
「アカマル」とはなんともすごい名前ですけれど。実はこれ、「rn」を「m」と誤読し、書写された筆跡があるそうです。なので「Acamar」ではなく「Acarnar」、つまりアケルナルのことなんですね。
プトレマイオスの著書「アルマゲスト」にあるアケルナルは、恒星表にある位置の記述からθ星であることが解っており、つまりα星のアケルナルじゃなかったのですね。アケルナルの周囲は南天の星座ばかりですから、見えていなかったのです。
プトレマイオスの著書はアラビア方面に流れ、それがさらに研究結果などを加えられてヨーロッパに再度輸入されたという歴史がありますので、その際の書写に誤りがあったためにこのような名前になっているわけで、人の手による複製のおもしろさを感じることができますね。
それらの筆跡を私たちが読めるように翻刻する作業は実に大変ですので、それを思うと努力が偲ばれるなぁなんて感心してしまいます。
◆ろ座(Fornax)
炉です。溶鉱炉とかそういうのではなく、星座絵を見る限りではフラスコなどを熱するかまどのようなものらしいです。
フランス語では囲炉裏みたいな意味もあり、高熱の炎と言うより炭などを熱した「おき」をつかうといった趣でしょうか。
ラカイユの南天星座カタログの1つです。
◆ほうおう座(Phoenix)
ヨハン・バイエルによって設定された、南天の新しい星座です。
この辺りの高度にある星座はプトレマイオスの48星座にはありませんけれど、いくつかアラビア語名のついた星があります。
このほうおう座にもα星には「Ankaa(アンカー・不死鳥)」「Zaurak(Nair al Zaurak(ザウラク・船の明るい星))」などと名前が付けられています。
単にギリシアの人々がその星に感心を寄せていなかったと言うだけではなく、緯度の関係で観測できなかった可能性もあります。
また、プトレマイオスの仕事がアラビアに伝わり、その後キリスト教の発展によって中世ヨーロッパに科学発展の停滞期が訪れます。
すると、今度はアラビア半島で天文学が発展しました。それまでにも、地中海より緯度の低いアラビア半島では星に名前をつけて航海の目印にしていたと想像できますけれど、それらの星が恒星のカタログに追加されました。
さらにそれらの成果が十字軍の遠征期からルネサンス期にヨーロッパへ再度輸入され、ヨハン・バイエルの時代にこの星座が設定されました。
天文学も他の科学と同じように政治と切り離して考えられないという、端的な例かなと思います。経緯をたどるとなかなか面白い星座かも知れません。
◆おわりに
いかがでしたか? 今回は南の星座が少し多めです。おおいぬ座VY星の実際の大きさが観測されたら面白いですねー。遠すぎてちょっと難しそうですけれど…。スクリーンショットをとったときには気づきませんでしたが、エリダヌス座がかなり綺麗に映り込んでいて、びっくりしました。でもさすがに全部は入り切りませんね。角度などから見ても限界かな、と思われます。
今回のご紹介で4つの新しい星座をご紹介できました。88星座の残りは3つ、「ポンプ座」「レチクル座」「ろくぶんぎ座」です。
次回はろくぶんぎ座をしゅーてぃんぐしてみたいと思っております。うみへび座にくっついていますので、時間帯さえつかめば案外とらえるのは簡単かと。
でわ~☆