先週、日経デジタルコアの会議に出た。テーマはWeb2.0。はてな、フォートラベル、チームラボ、シックスアパート、アイスタイル、それにネットエイジ(これだけちょっと毛色が違う気もするけど)という、いわゆる76世代というか、「Web2.0の旗手たち」がパネリストとして勢ぞろいした。迎え撃つ(?)聴衆としてはIT業界のそうそうたる面々が顔をそろえ、5時間超も議論をした。
第一印象。76世代は非常に素直で、普通の人に見える。自分たちのほしいシステムを自分たちで作っていったら、当たってしまったということを言っていたが、多少は謙遜的なところもあるのだろうが、まあ大体あたっているのだろう。気負ったところが全くない。
さて、聴衆側は一言言いたいひとたちばかりで、多くの質問を投げかける。
(1) 「Web2.0によってコミュニケーションはどうかわった?」
(2) 「広告ビジネスの次にはどういうものを考えているのか?」
(3) 「老人などに広めるにはどうするか?」
(4) 「マイクロソフト対抗戦略は?」
(5) 「ネット時代の、例えば2チャンネルなどのモラルとか、リスクとか」
これに対する彼らの答えが面白い。大体煎じ詰めて言うとこんな感じ。
(1) 「特にかわらないです。」
(2) 「広告ビジネスで十分やっていけるので、それでいいです。」
(3) 「自分たちは自分たちのニーズにしたがってやっただけであり、老人のニーズもわからない。60代とかで暇になってきた人が始めるんじゃないですか?」
(4) 「そんなこと意識したことはない。われわれには関係ない。」
(5) 「こういうことを気にする人は自分たちで別のものを作ってほしい。われわれの世界に首を突っ込まないでほしい」
IT専門家の面々にとっては、肩透かしの答えだったようだが、私はそれを見ていてあることに気がついた。
(私も含め)IT専門家って一生懸命、頭でWeb2.0を説明しよう、理解しようとしているのだ。とても理性的・論理的で、優秀な人がとる思考パターンである。が、それ自体、すでに負けているのかもしれないと思った。
Web2.0屋さんは自分たちの周辺から自分たちのニーズにしたがって、とにかく事業を始めてしまう。感性とかそういうものを駆使し、それを行動に移し、たぶんそういう行動のなかで試行錯誤のプロセスを経て、現在の成功に至っているのだろう。いわゆる「チープ革命」がそういう新しいサクセスシナリオを可能にしたのだろう。フォートラベルの津田さんとかは初年度17万円+自分たちの稼動だけでビジネスを立ち上げることができたという。
合議により戦略を練りに練って進める従来のやり方では出てこなかったものが、世にポンポンでてくる。「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」、これはある意味、ダニエル・ピンクの「ハイコンセプト」の世界そのものであり、新世紀型の仕事の進め方なのかもしれない。
彼らの考え方に、Web2.0の本質を見た気がする。
で、大事なのは「詮索」ではなく、何かを始めちゃうことですね。ちょっと一緒に考えて見ますか?