FROM DAWN TILL DUSK

漆黒の前田日明
滅紫の高田伸彦（現：延彦）

汝、惑わされることなかれ
主に代わり最強の我ら”Ｕ”が
導く先にこそ理想郷あり
我らと共に歩め

ＵＷＦの”象徴”と言えば当初、この2人だった。
両名は黒と紫のオーラを纏い、互いに触発しながら、
強烈に己を主張し合って交叉していた。その風景は、
新時代の到来を予感させる”夜明けの空”そのもの
だった。総合格闘技というジャンル、最強という言葉、
既存のプロレスに組することを嫌い、団体の大人
たちに抗い、自力だけで未知なる領域への挑戦を
始めた若者の先頭に２人は立っていた。
「俺たちだけでも！やれるんだ！」
その姿に勇気づけられ、自己の存在追求が始まった
多感な当時の僕らは調和より主張を欲して共鳴した。

だが、物事を創造するというのは容易ではない。
ましてや、大人たちの静止を振り切ってまで、理想郷を
目指した道程には、引き返す場所は既になく、妥協も
離脱も許されなかった。道は険しいのに意固地に
柔軟さを軟弱と否定し、鋼の肉体の構築だけに陶酔した。
それでも、世の現実という壁に阻まれる。Ｕの象徴である
前田も高田もそして、我々も、挫折しそうになる度に
スローガンである”最強”という呪文を唱え続けた。
その結果、時に仲間内であっても己の誇示を優先し、
共闘から対立へとベクトルが崩れだした。

後輩やファンの哀訴に応えるべく、前田と高田の２人は
必要以上に突っ張った。そして、歩調が乱れて分裂し
別々の理想に向かうことになった。誰か一人でも
フロンティアに辿り着けると信じて直向に突き進んだ結果、
模索と努力を重ねても、やはり未熟であり、歯痒いまま
不安に駆られて答えを出し急いでしまった。２人にピース
フルな解決はなく牽制し合い、遂に刻まれていた時が止まった。
その後、互いに新天地で激しく罵倒し合いながらも、交わる
ことは最後まで無かった。勿論、２人は別々の場所で
栄華を極めた。それは、双方の道とも正道だった事を
裏付けていた。

しかし、残念なことに己の強さを誇示する集団において、
自分達が本流であると相手を非難する者も増え、
事ある毎に最強とは程遠い、陰湿で稚拙な悪口が
其々から聞こえてきて中立だったファンは心を痛めた。
そんな大渦の中で激しく光りだした次世代２人がいた。

悲赤の田村潔司
陽橙の桜庭和志

この２人が前田と高田に取って代わり、新世代”Ｕ”の
象徴となった。
この年末に１２年の時を経て、”Ｕ”の象徴同士が激突
する。この２人が交差したらどんな色になるのか？
それは多分、時代の終焉を示す”夕日の色”だろう。
落陽のごとし燃え滾りながら、きっと僕らを染めていく。



追い駆けた、あの頃。
追い抱えた、あの頃。
僕らは自分の居場所をそこに見つけた。
大人が否定した”具体的な強さ”が素晴らしいことを
身をもって示してくれた。

田村も桜庭も未完成だった。だから、自分達と重なった。
誰も教えてはくれなかった。手本が無いばかりに途中、
正しさを何度か見誤った。あまりに多くのことを犠牲に
してきた。そのことで誰かを罪に問えようか。仕方ない。
自分達で選び歩んできた。だけど、信じている。
同じリングで集いし彼らは、闘うことで最後には
疎通できると。今日まで、血みどろで駆け抜けた
Ｕの象徴である選手を僕らは誰一人、見放したりしない。

最強とは、一体、なんだったんだろう。

介錯無用、絶命のその時まで、大人になっても話し
言葉ではなく、ＵＷＦらしくリングの上で幕を閉じよう。
２人の背中に浮き上がるであろう夕日を僕は見届ける。

We are UWF!!

天命の日まで後、３２日です。