歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

クロニクルブック その2

2009年03月24日 | ◆アニメのこと
遅くなりました!
DVD_BOX付録 クロニクルブックの感想続き~。

付録と言うのが申し訳ない重量感高級感。美術館の画集のよう!
その。
収録された数ある絵の中で、私的に一番ヒットだったのは。(さあ、もうお分かりでしょう?)

荒川弘センセの絵コンテ!!
FAXで送ったんだー。ヘッダが二重になってる、転送されたんだねー。ヘッダの印字に「アラカワ」って見えるトコに萌えちゃうーvv 
そっか、こーやって何枚もざざざざって描いて(エドのうわああ…の場面は7P。そんで冒頭に続く、って注記が入ってた)、ばーっとFAX送ってたんだ~v
そっか~♪

そして、たくさんのテキストの中で、最もヒットだったのは、企画書。
そ、一番いちばん最初の、アニメ化するにあたっての。
あんまり適確な文章なのでそのまま引用~

<新番組TVアニメーション企画>(2002年作成)
(図:一巻表紙)
企画制作 BONES Aniplex Inc

(図:本編最初のページ「痛みを伴なわない教訓には~」)
タイトル 『鋼の錬金術師』 原作 荒川弘(月刊少年ガンガンにて連載中)
放送形式 30分数話完結・連続ストーリー
ジャンル 冒険ファンタジー
対象 小学生から広く一般

≪OUTLINE≫
若干15歳にして国家錬金術師の資格を持つエドワードとその弟アルフォンスは、幼き日に失った母を思うあまり、~ (略) ~「賢者の石」を探す旅に出る。
(図:1巻「ロゼ 真実を見る勇気はあるかい」のエドとアル)

≪企画概要≫
錬金術の基本は、「等価交換」
何かを得ようとするなら、それ同等の代価が必要って事だ。

物語の冒頭、エルリック兄弟は死んだ母親を生き返らそうと錬金術の禁忌「人体錬成」を犯す。しかし、錬成は失敗に終わり、兄は左足を弟はその身体の全てを失ってしまう。彼らは触れてはならないもの、犯してはならない場所に踏み入れた代償を己の体で支払う事となった。

エルリック兄弟は自分達の失った身体を取り戻すために、賢者の石を求めて旅に出ます。それは、常に自らの過去(禁忌)に立ち向かっていくという過酷なものです。視聴者は彼らがその旅すがら、折に触れ「人の命」という普遍的なテーマについて考え、悩み、傷つきながらも生長していく姿を目にすることでしょう。

錬金術は等価交換が基本であり、万能の魔法では無い。それこそがこの物語の鍵になります。なにかを欲すればそれに見合うだけの努力を、手に入れるためにはそれなりの代償を必要とすると言う事。モノが溢れる現代社会で私たちはその本質を見失ってはいないでしょうか。これは私たちが忘れかけていた「リアル」な現実です。

生きることの「リアル」さを持った作品、それが鋼の錬金術師」なのです。
(図:「間違ってたのは オレ達だ」の場面)


「気持ちよさ」と「重さ」のパワーバランス
この作品の一番の魅力は少年マンガの持つ明るさや爽快さとダークな部分が破綻なく同居している点にあります。エルリック兄弟と一癖も二癖もある登場人物たちのと掛け合いや、そこかしこに散りばめられたギャグは、彼が最大の禁忌を犯し、多くのものを失ったことを一時忘れさえてくれます。しかし、ほのぼのとした会話の中で一瞬胸を突く台詞が顔を見せる。なぜなら、彼の体にしっかりと重いものが常に刻まれているからに他なりません。あくまでさらりとしていながら、しかし卓越した「やりきれなさ」の描写、この作品に深みを与えている一番のポイントがそこにあります。
(図:貨物車両に羊と一緒のアル、エドとアームストロング)

流れるようなアクションシーンの「カッコよさ」
 原作者の荒川さんが格闘技に精通されていることから、テンポ良く繰り広げられるアクションシーンとド迫力の錬金術の錬成シーンの気持ちよさもまた、この作品の魅力。アニメ化する事によって、そのテンポや迫力を損なう事無く、卓越した作画とCG処理の融合で、より立体的に少年マンガの持つ「カッコよさ」と「カタルシス」を表現できると考えています。たった1シーンのアクションだけでも視聴者を納得させる魅力が「鋼の錬金術師」にはあるのです。
(図:バルドを倒すエドとアル)

≪キャラクター≫
以下略

引用以上。

文章的にはもうちょっとキレがあるといいんだけど(とか偉そうに)、まだ2巻とかの時代の鋼を、すごく適確に掴んでいます。さすが!
私が「軽快さ」と呼ぶ部分を「気持ちよさ」と表現してるところに、視聴者寄りの視点を感じて、なるほど!と思いました。

キーワードは「リアル」
そして心地よさと重さの「バランス」
それから少年マンガの「カッコ良さ」

うん。そうだ。そのとおりだ。
そして私にとっての鋼のキーワードは何かな、と振り返ってみる。
「信念」
これかな。それと、
「直球剛速球」



さて。
そして3番目にヒットだったのは、氷川竜介氏によるアニメ誌御三家の編集者&MBS竹田Pインタビュー。
やーもーそら様がコピってくださったお勧めページがそのまま私的ヒットでございましたよーありがとーv

ボンズの中で、最初に鋼をアニメでやりたい、と提案したのが、キャラデザの伊藤さんと制作デスクの大藪さんだというのも、もしかしたらアニメファンさんには常識なのかもしれないけれど、私は初めて知りました。
つまり、伊藤さん大藪さん→ボンズ南社長→水島監督をスカウト→脚本會川さんをスカウト…という流れだったのね。

メージュ大野氏「アニメはストーリーや設定も大事ですが、大きく化ける時は、基本的にマズからクター人気なんです。」同人誌が出るのもキャラに力があるから。「キャラによって歓喜される想いを形にしたいという衝動が同人誌」
「アニメ化されればこれは絶対に当たるんじゃないかと」
「スポンサー的な制約も比較的少なそうなので(略)アニメージュとしては(略)推していこうと」
ということは、スポンサー制約がかかるアニメは扱いが難しいんですね。

大野氏はベテラン編集らしく、説得力ある発言が多かったです。
「昨今のエンターテインメント作品(略)テーマを中心にしようとしないものが、かなり増えていると思うんです」でも鋼にはそれがある。テーマは「物語的な足枷にもなるし、逆に設定やアイディアを生み出すためのエネルギーにもなる」

メージュ鈴木氏。キャラクターが記号的に動いている訳ではないので「ものすごく記事の書きがいがあった」キャラやストーリー以外の、スタッフワークや映像表現も「内容の豊かな記事を作れる。それくらい濃い作品」

NT糸井氏「荒川先生にお会いしまして、武術(空手)をやってらっしゃるだけあって、姿勢もよくて背が高くて、さばさばした感じのかっこいい方だったので感動しました」
別んとこでアニメスタッフの女性の方が荒川先生に会った感想を読んだことあるんだけど、印象が全く同じ!女が惚れる女、なんだなあ(笑)

ニュータイプは表紙がメカの回も多く、やや男性寄りの雑誌なのだそう。
糸井氏「ハガレンを表紙にした号があったんですが(中略)、女性読者が過半数になったわけです。これは、ニュータイプ的には大事件でした」
事件だそうですよ(笑)
矢野氏。エドの人気はコスプレしやすさもあったのではないか。「“表紙には必ずこの赤いコートにしてください”という指定」糸井氏「(赤いコートは)象徴的」
雑誌の顔である表紙を飾る、その要素に「赤いコート」が大きな位置を占めていた、という所に、あんまりビジュアルから入らない私は、へええーと思いました。

アニメディアは中学生がメインターゲット。
斉藤氏「ガンガンさんとうちの読者層には共通部分があり」「失礼な話、仮に他誌ではそれほどではなかったとしても、アニメディアでは間違い無く人気が出ると」
なるほどー。新アニメでも最初に表紙にしたのって、こういう理由なんだね~。
読者サイクルが2~3年という短期間であることにも驚き。
そうか。だから今、再アニメ化でも、中学生の視聴者に見てもらうには、丁度いいんだ。(日曜5時に中学生がテレビを見るか、そこが問題だ…)

なつかしの付録の話とか
NT「“ほぼ等身大ポスター”が人気でした」「ボンズさんに"ほぼ”って必ず入れてくださいと言われました(笑)」
メージュ「マスタングの手袋をつけた号(中略)ものすごく売れました。(中略)あの手袋って汎用性まるでゼロですよ(笑)」
メディア「(版権イラストテレカの応募者全員サービスに)800円の小為替をつけた応募が1万通を超えました」
1万通!すごー!

姐御肌の朴さんと妹っぽい釘宮さんの組み合わせは「兄弟で姉妹」というビジュアルで、ハガレンの顔のようになっていく…と語るのは、氷川竜介氏。
なるほど、兄弟で姉妹、かあ。

水島監督と會川氏について
メージュ鈴木氏「作品のためになることなら何でも協力するし、それも自分から積極的にという態度には非常に助けられました。」
NT糸井。取材したけど使えない、ということが無く、「ちゃんと記事になるところを考えて離してくださるところが、會川・水島コンビのすごいところなんです」

全体を総括して
メージュ大野氏「関係者でマイナスのカードを引いたと思う人間がほぼいない。ほぼ全員幸せになれた作品」

フェスティバルの客層についてMBS竹田P
「都会的でおしゃれにも気を使い、真面目でインテリな感じの子が多かった」
だそうですよ(笑)
「知的な視聴者がついた」 ふむふむ。

劇場版
ゲストについて
竹田P「後にブレイクする小栗旬くん、彼の父親は小栗哲家というクラシック関係者では有名な音楽監督で、お兄さんも役者です。僕が彼らとよく仕事をしていた関係で、頼んでみました。ギター奏者はフェレンツ・シューネットベルガーというブダペスト、ハンガリーの本物のロマのギタリスト」
あれ?おぐりんはアニメーターさんの親戚とかのツテで水島監督が連れてきた、みたいな話、聞いたことあったけど、そっちは?
それともアイドルがヒットすると「彼女には前から目をつけてたんだ」って自慢する人が増えるのと同じ法則かしら?

メージュ鈴木「ファンだったら兄弟が幸せに暮らせるエンディングを見たいわけですが、“それって要するにこういうことでしょ”と少し苦い毒を混ぜて突きつけたあたりが、會川・水島コンビらしいなと」
「それって要するにこういうことでしょ」 うおう!鈴木さんよく言ってくれました!さすが、ファンと作り手の間に立って見てるだけあるなあ~。


このクロニクルを作成している時点で、もう新作鋼は発表済み。
でももちろん、新作については全く触れていません。
それを踏まえた興味深い発言をふたつ。
竹田P「ぜひもう一回同じスタッフで、また新しいものに挑戦してみたいと思っています」
脚本會川氏「(兄弟愛やロイのキャラ立てなど)ファン向けのことをしつこくやらなければダメなんだと力説していました。原作重視で考えすぎると、ライターはお話を追いかけるので精一杯になりがちなので、そういう計算をするようにお願いしました」

竹田Pのこの台詞は締め。
全部わかって(新作への期待も反発も)、言ってるんだろうな、と思いました。
會川氏のは、辛口なエールかも。いや、単に自分のポリシーかな?


そして竹田Pも會川氏も水島監督も口を揃えて「同じようにヒットさせたいと思うけれど、なぜ作品がヒットするのかは謎だ」と、言っていました。

氷川氏のまとめ文。
「ヒットとは、一方的な作品の完成度や品質だけでは生まれない」
「観客との間の熱気の共有」

作り手がどんなにこだわろうとも。送り手によって送り出されなければ、そして受け手の私たちが受け取らなければ、作品は躍動しない。
むずかしいなあ。すごいなあ。深いなあ。
だからすごく、面白いんだろうなあ。


最後に竹田Pがの発言を。
「作品とは、勢い、力、濃さ」
作品とは、と断定するところに、打たれた。
強い、言葉だ。
でも、そのまま受け取るにはちょっと戸惑うところがある。
そうだろう、だがそれだけか?それはテレビ人としての狭窄な視野ではないか?
それでも。
この言葉は真実を含んでいる。


こうやって、皆が振り返ることができる。鋼は幸せなアニメだったと思います。
新しいアニメも、こんな風に、皆で振り返ることができる作品となりますように。

クロニクルブック、堪能しました!
どうもありがとう~!



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4 コメント

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はじめまして (サクラ桃)
2009-03-27 19:23:37
初めまして。歌猫さんのブログをちょくちょく拝見してます。ブログ内容が濃くて尊敬します。

>竹田P「ぜひもう一回同じスタッフで、また新しいものに挑戦してみたいと思っています」

監督も脚本家も、「鋼ではもうしない」と断言してるし、これは新たな(鋼以外)作品を同じスタッフで生みだすってことですね!コードギアスみたいな完全オリジナルに挑戦すればいいと思います。 
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コメントありがとうございます。 (歌猫)
2009-03-30 07:02:00
サクラ桃様初めましてこんにちは!
あ、私は竹田Pの発言は、MBS・アニプレ・ボンズ・スクエニを指して同じスタッフ、と言っていると受け取ったんですが、そうですね、水島會川&MBSを、指しているかもしれないですね!
水島さんはまた劇場版を手掛けられますし、これからも期待ですよねv
返信する
こんにちは (サクラ桃)
2009-03-30 15:34:49
歌猫さんこんにちは!コメントのお返事有難うございます!

ああ、そっか、歌猫さんの受け取り方のほうが近いかもしれないですね。

一昨日最終回を迎えたガンダム00の劇場版ですね!

あっ、お返事はいいですので。^^)
返信する
コメントありがとうございます (歌猫)
2009-04-01 12:35:48
サクラ桃様こんにちは。
ありえないことはありえない、ですもの。もしかしたら水島會川&MBSで特撮モノとか、あるかも?!(笑)
コメントありがとうございました~v
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