歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

ユリイカ荒川弘特集の感想その1

2010年12月11日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
ユリイカ!

我、発見せり!うん、その通り!
小さな活字、硬くて難しい文章。噛み付きがいがあります!
一応ぜんぶ読んだので(うっしゃ!)、面白かったとこピックアップ~♪

まず、三宅乱丈さんとの対談。
ご存知のとおり北海道出身女性漫画家つながりです。私、ぶっせんはヘンな漫画!って読んだことあったけど、イムリはメディア芸術祭受賞でちょろっと見て、あ、これは貯めてからどーっと読もうリスト、に入れて続き読んでません・・・けど、このインタビューもっと楽しみたいから、近々既刊まで読もうかなあ?
荒川さんちの5きょうだいは上から下まで13年差とか、ご両親の誕生日が一緒とか。
三宅さんは札幌在住なんですが、札幌の漫画家事情をけっこう尋ねてらして、もしかして荒川御殿の建設地、札幌にしようかなとかお考えで?
あとは大体聞いたことあるお話な感じ。でもいつ読んでも荒川先生のお話は楽しいv
藤田さんの特集のとき藤田さんが荒川先生をすごく立てていたように、荒川先生は三宅さんの作品についてたくさん語ってらして、長編の話を畳んだ自信っていうか、そういうのがね、次のマンガ家さんへバトンタッチされてる感じで、なんかいいなあ~って思いました♪

次は藤田さんの見開きイラスト&メッセージ。
おー好いてくれてる好いてくれてる!
なまら、とか北海道方言使ってすごい親しみある感じで私もうれしい!藤田さんホークアイ美人っすね!あとホーとイズミとリンとスカーとフーがよく似てます!
「彼女が描く格闘シーンがみな背筋を通し重心を落とした正しい姿であったように」
あっそうだ!重心を落として。うん。この、重心を落とす感じが、荒川絵の、大地のにおいに通じてたんだ。
荒川先生を評して「地に足がついている。それでいて星空もみているんだわ」くーっ!かっこいいぜ藤田!
藤田さんは前のユリイカでも思ったけど、かっこいいオヤジだよなあ~vvv


次は、マンガ批評の藤本由香里さん。
鋼は「バトルマンガに“生き物”の感触を持ち込んだ」
生命操作とか等価交換とかどこまでが人かとかは、他の評者がずっと鋭く語っている分、ちょっと物足りなかったかなー。

藤本さんが最初に鋼について語ったのはたぶん朝日新聞のコラムの、バトルマンガの強さのインフレを否定する等価交換、て話だったと思うのだけど。
殴ったら痛い、戦ったら疲れる、そういう感覚のあるマンガはマガジン系ヤンキーものでは昔っからあるけど、それを、強さインフレの象徴=ドラゴンボールと同じに、白黒すっきり絵柄で描いたから女性層を取込んだ、とかって方向で展開したほうが評論として面白かったんじゃなかろーか?
なーんて、偉そうな物言いだけどね~(笑)

あっ、ユリイカと全然関係無いけど、思い出した。
感想ブログの中で出会った言葉。
「鋼は、汗臭くないのに血生臭い」
至言だ!


その次は農学原論/社会思想史の雑賀恵子さん。
農学原論ってとこで期待膨らませて読み始めるが、百姓貴族を舐めるように(笑)読んでる私には目新しさ無いまま記事が進む。むむう、と思ってると最後んとこにぎゅっときた!
牛は頭がいいという話から「『知能』というものを軸にして、食べるのは残酷だとか、食べてはいけないというのは、人間を頂点に置いた優劣の序列を無前提設定することである」
と最初の章での語りを受けて
「近似的なる者(ホムンクルス)が、すべてのものに超越することはできないのは、近似しようとしているもの(人間)が設定し、保持している価値の序列を認めてしまっているからなのである」(括弧は歌猫が追加)
そして
「国土錬成陣敷設のために、アメストリスという国家を建設したことは、人間の営んできた国家の本質―破壊と殺害による領土の拡大―の模倣になっているのだ」
ずーん!と来ました!
そうだ、マリモは人間に学び、そして人間のやり方を模しているだけだったんだ。
ホムンクルスが人間に近似であると考えるほど、人間も似たように酷い奴らだ、ということになるんだよなあ。
真似したらダメだと叱られる、なんて、本当に、善悪を知らぬ子供と自分を棚上げする大人みたいな関係だ。

そして雑賀さんは「錬金術師たちの抱える罪とは、(近似する生命・ホムンクルスを生み出したことではなく)そもそもが物質の循環で成り立っている流れ(中略)を等価交換と看做す世界観にあったのだろう。」と喝破し、「それを知っていたのは、むしろホムンクルスのほうだったように思える。」と続ける。
エンヴィーが自死した場面について、ホークアイはマスタングを止めるが、代わりに私が、と言うのは反座法(目には目を・死には死を)という等価交換の死刑であるから、「その前に自らを殺し、等価交換を前提としているかれらの世界観を拒絶したに違いない」
このかれら、とは錬金術師を指している。

エンヴィーの死は、様々な形で語られてきている。藤田さんが「格好いい」と表現したのとたぶん同じことを、雑賀さんはもっと深いところで捉えなおしている感じがする。
己の尊厳を守るための自死。お前らの思い通りになどなるものか!
そうか。エンヴィーは、タッカー夫人だったのか。


さあ!皆さん?
ここでまだ81ページですよ?
ユリイカの鋼特集は、51ページから216ページ!まであります。
歌猫ブログがこのペースで最後まで感想連載すると期待するより、今すぐ書店に走ったほうが絶対いいです!(笑)
てゆーか歌猫フィルタを通した感想読んでからまた原文を読むと、いや!私はそうは思わない!!ってすっげームカつくとこ多々あると思う。だから、ぎゃー難しそう~って思う人には勧めないけど、あっ、じゃあ私は何と思うだろう、と立ち止まる人は、買って損無し!


さて、雑賀さんが引用していた、人間酷似型ロボット研究の石黒浩さんは、実は鋼特集の手前にご登場なさってます。
「ロボット演劇とは何か」
演出家・平田オリザと石黒浩のプロジェクトについての報告。人間ではなくロボットがプログラムされた動きと台詞でもって演じる。それを見た観客は泣くか?
泣くのです。
「外的な要因だけでリアルは絶対構築できるし、内面は関係ない」というゆるぎない信念をもつ平田氏は、容姿も音声もロボットそのもののロボットに「タイミング」の演技をつけて、観客を泣かし「ああもう勝ったな」と思ったという。
平田氏の名前は劇評でもよく目にするけど、とんでもねー人っすね!
そこは0.5秒後ろに、とか、0.3秒前に、と言うだけで人の心を動かす。「僕は今たぶんそういうリアルな間とかを作ることに関しては世界有数の技術を持っているので」
スゲー!言い切れる、己の技術に対する自信。すげー…!
「外的な要因だけでリアルは構築できる。
人の感情はタイミングで操作できる。」
これは、アニメにも言えることだ。っていうか、アニメのことを語ってると思って私は読んだ。FAの前半の下手くそさと後半の盛り上がりの差。スタッフのテンションとかそういうのももちろんあるだろうけども、でもそういう、熱意とか精神論じゃない、計算と技術、そういうのも、もっときっちり汲んで次に繋いででいかないと、いけないと思う…。
ロボットには内面が無いが観客には内面がある。だからこそ感動は生まれる。
真実だ。感動は、私の内側にあるのだ。
人の情動やヒットするメロディーはある程度計算可能だという話の後に、平田氏。
「ただそういう平均値と、普遍的に残っていくものとにはがあって、多少のズレそれを生み出せるのが芸術家の仕事だと思っている」

自分の仕事に絶対の自信を持つ人の言葉は、強い。
荒川弘は酪農について強い言葉で語るけど、マンガについて語る言葉はまだ弱い。
だから、まだまだ荒川弘は伸びていくんだろうな。うん、鋼が最高点ではない。次もその次もその次もずっと期待してる。長生きしてくれ荒川弘!(笑)

ユリイカ語り、続きも書きます~♪いつになるかな?!


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
・・・・終わらない (アメショー)
2010-12-11 13:49:22
読んでも読んでもまだまだあるよ~(笑)
ちょっと時間があるから。では、読んでも頭に入ってこなーい!!
全部読み終わるのはいつになるんだろう・・・・でも読むよ~
返信する
コメントありがとうございます (歌猫)
2010-12-14 12:48:05
アメショー様こんにちは!
私も、書いても書いてもまだまだ終わらない…けど、ここまで深く考えるエネルギーをもらえる機会はもう無いかも?!と思うと、がんばりたい!
自分が一番楽しいからね~(笑)

返信する