歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

20巻 雑誌収録時感想再録

2008年08月25日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
20巻、読み終えましたか?
読み返しましたか?更に読み返し、カバー裏を3回見てオマケページを4回見て目次見て表紙見て舐めるように何度も何度も見返して、それでも興奮が冷めませんか!
もうもう、ああもう、この好き好き大好きっな気持ちをどーしたらいいのようーとおろおろぐるぐるしていらっしゃいますか?!

さあ、そんな貴方に、歌猫Blog。

毎回恒例の、単行本雑誌収録時感想再録です!
雑誌派は、毎月毎月、こんな風に興奮感動右往左往してたりします。
しかし、長い。5か月分は、長いよ・・・。
お気が向かれた方、お時間ある時にお読みくださいませ~。

ああ、初めましての方はどうぞ、こんなんよかトップ記事「◆はじめに◆お勧め過去記事リンク」からご覧ください♪
あっちも無駄にいっぱいあるんですケド;

ではでは、感想再録です。


第79話「蟻のひと噛み」

こ う く る か !

もうさあ!荒川弘の、扉絵前のアバンの使い方って、他の作家さんにありえない上手さだよね!
この上手さを噛み締められるのは、雑誌ならでは。うーん、雑誌派でよかった!

その、始末のつけ方がどちらも、「こうくるか!」でした。
いずれはそうなるだろう、と予測できること。
なのにその方法は、常に予想の上をいく。
あー、上手いなあ!

えっと。今月も32ページでした。カラー無し。
でも絵は充実していて、扉絵の書き込みとか良かった。この扉絵カットって、好きに描いてるじゃない?商品展開を考えて描かざるを得ないカラーと違って。つまりカラー絵は雑誌のために描くけど、白黒扉絵は自分のために描けるから、楽しそうでいいな、って。

作者のひとことは、今年の抱負。家族サービスをしたいだそうです。
いやでも、すっげ家族サービスしてらっしゃると思うよ!牛舎とか!
そんで、もし私らにも家族サービスの一端を担わせてくださるならもっと嬉しいんだけどなー。牛乳年間契約とかしますよ・・・?(ここで言っても)


さて。まず第一に。

りほ様の推測、大当たり!!!
「ザンパノの電話は釣り」

すっごーい、すごいよりほ様っ!
これはもう、アルからブリッグズへも連絡が行っているとゆー推理も事実間違い無しですね!そしてブリッグズからマスタングへも。《ここも当たってた!さっすが推理小説ファンのりほ様だけあります!》

先月の宣戦布告を、今月の冒頭アバンでさくっと終わらせてしまう、この速さ!
すげーよなあ上手いよなあ、こうくるか!だよなあ。
なるほど一枚岩を利用って、こういうことだったんですね。
ブリッグズ内部を分裂させる、は何年も前からのシナリオ。けれどそれが上手く行かなさそうだから、敵の全滅でとりあえず手を打つか、と。
アメストリスの地図が、ブリッグズのところだけ凹んだ円なのも、納得。ここだけ、国境線の「外」で紋を刻める訳だ。

キンブリーの、目の下の、ちょびっと入れてる線、皺っつか隈っつか、あれ。
あれ、色っぽいっすね・・・!キンブリって35歳とかそんくらい?かすかに老けが見え始める、その男の魅力。うひv


そして。
まさか、エンヴィーはマルコーによって、倒されるとは!

ああ。ようやく。マルコーは、マルコーのあるべき位置にたどり着いた、と思う。
近視的には、マルコーという優柔不断なおじさんキャラが、メインの悪役の1人を倒したという、驚き。
遠く見渡すと、沢山の人間を殺したけれど本質は普通のいい人マルコーが、同じく、沢山の人間を戦場で殺したけれど本当にいい人だったヒューズの、仇を討ったという、その納得感。
普通の男と普通の男に挟まれた、哀れな子供の物語。

鋼を読んでて幸せだなあ!って思うのは。
こんな風に、一つのイベントを見た時、そのイベントそのものも面白いけど、物語の構図から見た時もまた納得感がある、という点。
計算された構図の時と、そうで無い時もあるけれど、そうで無い時もまたちゃんと納得感があるんだ。それは、作者の姿勢が一貫してて揺るがないから。

うん。
マスタングはエンヴィーを殺せない。彼は仇を討てない。(06.2.17記事
強者が強者を倒すのではない。
弱者は本当は弱者ではなく、その決意と知恵と、仲間の助けで、強者を倒すことができるんだ。
マルコーもまた、少年漫画の王道。


今月号。
私なんかには面白かったけど、普通に雑誌読んでるガンガン読者層には、面白くなかっただろうなあ。
何しろ主人公が扉絵に、ちみっ。
エドちっさ!
と、叫んでしまいました(笑)
今まで、毎月ひとつ盛り上がりとか、主人公を出すとかマスタングを出すとか、一般読者向けサービスを必ず入れていたけど。
先月・今月と、そういうのを感じ無かった。それは第一には減ページ進行が理由だと思う。
でも、もしかしたらそれ以上に、雑誌がもう鋼に寄りかかれないと腹を括ったことが、理由かもしれない。
もう、鋼は終わる。もう鋼で客は呼べない。長期連載で難しい話で、それを目当てで来る客は、鋼終了後のガンガンを支える客層ではない。
連載はあと、たぶん1年足らず。《じゃーなかったと、後日分かった訳ですが。09年一杯か、もちょっと続くそうです☆》だから、エドを出す、マスタングを出す、という制約無しに自由に描けるんじゃないだろうか。《とゆーより、やっぱ減ページ進行なんで必要エピソードのみ描いてらっしゃったみたい。単行本になったらこの辺り、全然気になりませんね。》

そうして、仕込みを済ませ、決着をつけてゆき。
物語の最後への階段を昇っていく。
急降下したジェットコースターが、再び、かたん、かたん、と登っていってる感じ。

来月も続けて、かたん、かたんと登っていく話かな。それともいよいよ、コースの先が消え空が見え、急降下に入るのかな?

楽しみですー!!




第80話「瞼の父」

本編は、38ページでした!
体調、本格復調なさったということで、いいのかしら?いいのかしら?!
ああよかった!(涙)

でも、くれぐれもご無理なさらないでくださいませ…!(特に今月末発売の雑誌の方のは、32ページペースのままでいいんですから…)(個人的に)《獣神演武のことです》
てか来月号はカラーだし、全プレには書き下ろしがあるし!!
ちょっと、プレ書き下ろしってものすごく久々じゃない?
《全プレ:応募者全員プレゼントのこと。有料です。雑誌限定グッズ販売に近いかも》

やー!いつものハガレンが戻ってきた!って感じ~v
こういうさ、いくつものエピソードがモザイクになっていて、その繋ぎが粋で上手くて、じんわりとギャグとほのぼのと驚愕があって・・・。
先月のマルコーさんの渋さもよかった。先々月のホーエンハイムの宣戦布告もよかった。
でも、やっぱり今月の、この、たくさん!な感じが、ハガレンだよ!

あーやっぱり、ページ数があるからだよね~。
減ページ掲載が2回あって、改めて、荒川弘のページ繰りの上手さを実感しました。
例えばこれが32ページだったら、アル達がリオールに到着した場面が丸々入らない。逆さ釣り人造人間ずらーりのページで終わっちゃうわけよ。(もちろん他の場面を削って構成を変えることもできるけど)
この最後の4ページや、例えば先月の冒頭6ページとか(ブリッグズ瞬殺ね)、ほんの数ページで描く密度の、何て濃いことか!


で。
今月はもう、見所が多くて!
まず、エンヴィーを騙す皆の息の合い方!こうゆーの、いいよね~(笑)
アルのクールさもイイ(笑) 知り合いだけど友達じゃないよって!そりゃそーだけど!(笑)

スカーが、迷いが吹っ切れて、格好よくなった!
そう、彼は大人の男になった。
そして「この国のことはこの国の人間でなんとかする」という台詞に。
ぎゅっと来ました。
ああ、これほど酷いことをされても、どんなに憎んでも、彼はアメストリスを「自分の国」と思っているんだと。
イシュバール人であると同時に、アメストリス国民であることは、もう彼の中で苦しみではないんだと。
いやんもーちょっと格好いいじゃない!惚れちゃうよスカーってばもう!

・・・でも、彼は大量殺人鬼なんだよね・・・。
彼の行く手に幸いがあるとは、彼が「良い者」になった今でも、やっぱり思えない。
切ない・・・。
《でもね。今は、彼の未来は明るいと思うの。スカーファンさんの熱い(笑)コメントいただいたお陰で》



アルと分かれるメイが、ひしっ!と抱きつくところの、ギャラリーがイイよね~
あらあら、まあまあ、おやおや・・・って(笑) それぞれの台詞の配役もよくて。
荒川先生はどのキャラも愛しているから、こういうさり気ないコマの配役もすんなり納得でイイんだよね。

ユースウェルのモブの、ちっちゃな手書き文字台詞も良かった♪
それから、ユースウェルからの汽車が、石炭満載なところとかもイイ。
復興するリオールもそうだけど、初期に登場した町の、時間の流れが感じられるところ。そしてその町の名も無い人々が、逞しく生きている様が見えるところが、いい。

だから、この国を守りたい、って思う、アルたちの気持ちが自然に納得できるんだ。
正義の味方が国を守る!っていう、お約束で上滑りな設定じゃあなくて。
いわゆる勇者が、たまたま出会った、ヒロインキャラとか子どもキャラを守るとかっていうんでも無い。
まず、普通の人々の、普通の暮らしがある。
その中に、ヒロインキャラも子どもキャラも生きている。そしてアルもエドもウィンリィもマルコーも、かつてのスカーもその中に。
だから、守りたい。

エドたちの目的は、当初は自分達の身体を取り戻すことだった。
今は、アメストリスで起こる何か酷いことを阻止することも、目的になっている。
その視野の広がりが、とても自然に描かれている。
ああ、上手いなあ!こんなに上手く、少年の成長と世界の広がりを描けるって、すごいなあ!


とーちゃん、何してんだよ!(笑)
ったくもー。こんのボケ親父はよー。先月あんなに格好良く「宣戦布告」とかキメときながら、エプロンに花柄三角巾で鍋洗いかよー。ああもー。
いいなあー!
もーニヤニヤしちゃうよ。この読者期待の外し方!!

やっぱりエドとは違うよね、ホーエンハイム。エドなら即行動じゃん?
エドは生まれながらに才気煥発だけど、ホーは人のいい、おっとりさんだよなあ。
ボケなとこはエドに、おっとりなとこはアルに、遺伝したんだなあきっと。

ホーエンハイムは、ごくごく普通に「やあアル」とか言いそう。
アルが鎧姿のこと、ピナコから聞いて知ってるもんね。
アルはおたおたするんだろうな。でも大事なことを聞かないと!って気合入れて、国全体練成陣のこととか聞くんだろうな。でもホーエンハイムが真っ当に答えてくれるとは思えないなあ・・・ボケ親父だかんなあ・・・。
うわー楽しみ楽しみ!エルリックファミリー大好きだし!

そんで、聖部様の指摘で初めて気付いた。ほんとだ、リオール到着後にスカーがいない!
意図しての不在なら、何かありそう・・・。
そして偶然描いてないだけなら、「スカ吉よりヨキを描きたい牛様なんだなぁと」 うん、そうだね(笑)

私、アニメ版は語れるほど深く見ていないけど、リオールはアニメでは大きな舞台となったところだから、対比して見るといろいろと面白いですよね。
さあ、荒川弘先生がどこまで計算して見せてくれるのか。あるいはドコまで斜め上を行ってくれるのか!(笑) うふふー!楽しみー!


そして。
本当に、鋼は「家族」が鍵なんだなあと。
愛する妻。赦す母。全てを分かり合えない父と子。
ホークアイの台詞「信ずるべき家族が」
荒川先生は、家族というものに、揺ぎ無い信頼を持っているんだなあと。
家族や故郷を、切り捨てるものとして描いた會川脚本と、そいういう所で対照的だと思います。

そんでもって、だーいーそーおーとー!
「妻だけは自分で選んだ」
くそう!そう来るかよ!
ちくしょー格好良いぜブラッドレイっ!
もう、得体の知れない大人のおじ様って、なんでこんなに格好いいんだ!
「未だ私に神の鉄槌は下らないではないか」
「少し・・・楽しい」
「実に腹が立ったよ」
ブラッドレイの台詞は、どれもこれも意味が捕えきれない。
ブラッドレイの言う「神」とは何だ。何が楽しかったのか。何に腹が立ったのか。
「セリムか・・・あれはよくできた子だ」
ああ、なるほど、「よくできた子」だよ、「お父様」の。じゃあ、貴方は?ブラッドレイ。
はーもー。
好々爺として登場し、その実体はホムンクルス。しかし元は人間。そして息子は「始まりのホムンクルス」、そして妻を「選んだ」。
何層もの秘密を、何年もの連載期間を経て、順次めくってゆく。その度に、キャライメージがぐるりとひっくり返る。
ああもうっ!荒川弘!貴女はなんて上手いんだーっ!

ブラッドレイとセリムに、「親子」の側面は無く、全くの「操り人形の上と下」なのだとすれば。
彼には「父」という属性は無くなり。
正に1人の男として、マスタングの正面に立つ存在となる。

今のところ格好よさではブラッドレイのが上だな!(笑)


オリヴィエのブーツは、靴底がっつり溝が掘られた臨戦用で、アレックスのブーツは普通の平らな底ってとこに、北国の知恵とか荒川先生の細部にわたるこだわりとかが見れて嬉しいなとか。
姉弟ギャグわーい♪とか、2メートル20を足蹴にする姐御からすりゃ、エドなんてほーんと赤チビだよなーとか。

「倫理など時代や個人によって線引きが変わる」に、荒川先生の冷静さを見たりとか。うん。三国志の頃と現代と、善悪の線引きなんか全然違う。
人殺しは悪か?
生命の操作は悪か?
品種改良は?人工授精は?遺伝子操作は?
武器は悪か?
武器として人造人間を作ることは悪か?武器として作られた人造人間は悪か?

悪とは何か。
悪なんか無くて、ただ嬉しいとか悲しいとか、人の感情があるだけなのかもしれない。


こんなに面白くて。こんなに深い。
鋼の錬金術師は、最高にワクワクだ!来月号も楽しみだーーーーっ!




《追加記事》

ああ、そうか。
ブラッドレイがマスタングにとどめを刺さなかったのは。
ラストVSマスタングで、マスタングが辛くも勝利した後、叫ぶように彼の名を呼ぶホークアイを、ブラッドレイは見ていたからだ。
あの時、抜き身の刀を手にしながら、ブラッドレイは出て行かなかった。
それはホークアイの涙に、心揺り動かされたから、なのかもしれない。
そこに、例えば、あこがれを見たのかもしれない。

自分の足元を脅かす若い存在、マスタング。
彼を愛するホークアイ。
だから彼は、ホークアイに、本心を語った。

彼女を通して、本当は妻にそれを語りたいのだ。
貴女の立場も、息子も夫の存在も、すべて作り物だ。けれど、貴女を想う私の心だけは、本物なのだと。

その、本物の心こそ。
ブラッドレイの「人間」

ヒューズの葬儀で、手が震えるほど腹が立ったのは。
妻と娘を置いて簡単に死ぬ、人間の弱さに?
それとも、自分が死ぬ時にあのように泣く人はいないという思いに?
あるいは、妻が死んだとき、私はあのように泣くのだろうかという怖れに?

ブラッドレイにとって、ホークアイは、妻の分身。
だからホークアイを守るかもしれない。
あるいは、だから、ホークアイを使えば、焔の錬金術師に真理の扉を開けさせることができると、確信しているのかもしれない。

ホーエンハイムは、永遠の時を生きる仙人のような幽鬼のような人生から、トリシャという女性によって、人間として生きることに目覚めた。
男が女を愛する。
それは、人間として生きる、ということなのかもしれない。

神になろうとしている「お父様」に、妻がいないのは、当然のことなのだ。
男と女がつがうことを、最初から理解できなかったフラスコの中の小人は、人間になる日は来ないのだろう。

ブラッドレイは、何者だ?
彼は、己を含めた全存在への憤りと、人造人間である己への誇りと、人間の手による制裁を待つ心と、老いへの諦めと、愛する心を持っている。
彼は人間だ。
だからつかみきれない。
彼は、どう動くのか。
彼の救いは何なのか。救いを必要としているのかさえも。

いくらでも、考えることができる。
深い物語。深いキャラクター。
だから私は、「鋼の錬金術師」が大好きだ!



感想再録その2に続きますー

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