歌猫Blog跡地

漫画「鋼の錬金術師」と荒川弘について語るブログ。更新終了しました。

15巻 雑誌連載時感想再録 その1

2006年11月22日 | ◆小ネタとか突っ込みとかつぶやきとか
鋼の錬金術師単行本15巻の、雑誌連載時の各話感想の再録です。


第58話「破滅の足音」
ガンガン読んで、じわじわと来ています。

ずん、と来た台詞ピックアップ。
「考えることを止めたら死ぬ」
錬金術師の業の深さ。

エドは常に考えている。ハガレンは常に考えて進む物語だ。
ハガレンはアクションシーンに台詞が多い、という記事を今度別立てで書こうと思ってます。つまり、いつも考えているんだ、エドもアルも。

真理を追い求めることを止めたら錬金術師は終わりだ。
何て厳しい世界だろう。

だからイズミは、錬金術師として生きているイズミは、今なお考えつづけているんだ。真理を見、子を失い、平和に肉屋の女房をやっている今でさえ、真理を追い求めることを止めてはいない。

そして真理を追い求め、あまつさえ戦いを挑もうとしているエドとアルは、だから生きているんだ。錬金術師として最高の状態で生きている。皮肉なことに?いいや、必然として。


最も心に残る台詞。
「やらない善よりやる偽善だ」
もうね。
打ちのめされましたよ。


「正の感情を集めて世界を正の流れにすることもできる」
これもね。
くそう。死ぬと分かっているキャラにばかり良い台詞吐かせやがってチクショウ!って思いましたよ。ああ、酷い。荒川弘は酷すぎる。
理屈っぽい台詞だけど、綺麗事にも思えるけれど。
これは、本当のことだ。漫画じゃなくて。


軍人にイシュバール人がいたというのも、重かった。
重い、つか、きつい。しょせん、たかが漫画の空想世界だ、と割り切る壁を裂いて突きつけられる「戦争」。描いてる荒川さんはもっときついんだろうなあと。ぐっと腹くくって、このネーム切ったんだろうなあと。



さて、再び、たかが漫画の空想世界に戻ります。
今月号で、ホークアイの、物語り上の重要度がむちゃくちゃ上がりましたよね!
マスタングの師匠の娘、ということは。
錬金術に関わる人間。
驚いた!!
彼女もまた、鋼の「錬金術師」という物語の根底に立つキャラなんだ・・・!
私、ナメてたよ。ホークアイを。ただマスタングの盟友なのだと思ってた。例えばヒューズと同じ場所に立ってるんだと思ってた。違った。

「例えそれが泥の河だとしても」
彼女にはこの台詞を言う権利があったんだ。
「それ」は、単に軍に籍を置くことでは無く。
錬金術の、真理の道を歩むこと。それをも指して「泥の河」と、言ったんだ・・・。

「鋼の錬金術師」誕生の場に、ホークアイもいたということは。(鋼の錬金術師が生まれたのは試験会場でも辞令を受けた司令部でもなく、エドの眼に焔が点いた、あの場所だ)
彼女もまた「鋼の錬金術師」という物語を最後まで見守る立場なのかなあ、と考えたこともあったけど。その時はそんな風に思えなかった。マスタングの付属品?つまんないな、って感じた。

だから。
彼女が錬金術師の娘と分かって。ものすごく、私は興奮している!
マスタング抜きでもホークアイは存在する。しかも主人公らと同じ「錬金術師の子」。そしてそれは、もしかしたらニーナにも通じる立場で。

だから私は楽しみです!マスタングが焔の錬金術を手に入れた過程と同じく、ホークアイが錬金術とどう関わりがあるのかに興味があります。エドとアルと、そして物語にとって、彼女は何なのか、に。




追記記事。

先月号の印象に残った台詞ピックアップ追加。
師匠の台詞。「そんな受け売りは聞き飽きた」
あー、確かになー。
「周辺諸国の脅威に」こうゆう台詞って、扇動か受け売りのどちらかしか無い。どちらを聞いてもむず痒くなる。

エドの台詞。「知らないことばかりで自分の無知さにまいる」
この、「まいる」
この台詞、いい。すごい、エドの(そしておそらく作者の)心情が出ている。
飽きれる、とか、嫌になる、じゃあ無いんだ。もっと、何て言うか。知ってるつもりだったのに、そうじゃなかった、っていう感覚。この辺りだろうとつけていた目星があまりにも低い位置にあることを知ってしまった、無力感とか悔しさとか。





59話「背徳の錬金術師」

15巻のカバー裏背表紙は満員だなー。

今月号で一番好きな場面。
マスタングとヒューズが、イシュバール殲滅の軍事敵意図について話し合うところ。
そうだ。うまみが無ければ投資はしない。
・・・あ、また石油のある国の内戦は報道されるけど石油の無い国の内戦は報道されないとかそうゆー硬い話題に流れそうになっちゃった。あーうー。
硬いついでに。
「戦略」を、考えるのはさすが士官学校出だなあと思い、そんで現実でも(だからそっち流れちゃ駄目なんだってば・・・)どこを攻めるかはスポンサーの意向だと、分かっていても命晒して眼前の敵をやっつけるしかないのが兵だよな、とか。
んがー!これがヤンジャンならなあ!サラリーマンの悲哀、会社幹部の違法行為、壊れてく営業マン、そんでこんな仕事は間違っている!だったらオレが頂点に立ってやる!って出世街道を突き進むわけよ、増田英雄が。でもこれは鋼だもんなあ・・・。
まだぐだぐだ引きずっています。ううう。

えっと。
ハガレンは常に、考えて進む物語だ。
今をどう戦うかだけではなく、なぜそうなったのかを常に考えている。エドも、そしてマスタングらも。

なぜ、なんてことは考えないキャラもいる。それがバリーで、グリードで、おそらくキンブリーもそうなんだろうな。だからきっとキンブリーも作者の愛を受けるキャラだと私は勝手に思ってます。きっぱりさっぱりぶち抜けた悪役って、楽しいじゃん?(笑)


今後の展開勝手妄想。
やー、イシュバール2話で終わるんじゃん?とか、大嘘こいてました。ごめんなさい。
でも、巻をまたぐことはしないだろう。(そう言ってアンタいつも大外ししてんじゃん)(いいの!ファンの勝手妄想なの!)
だからがっつり戦争描いて、どっぷりエド落ち込ませて、そんで再来月、単行本最終話で〔ここも外してるし;〕、とぼとぼ夜の道帰らせる。ここでアルと会うのもいいかな。言葉少なに、互いにイシュバール話を聞いたこと伝え合って。
で、ホテルに戻るとフロントにシュトルヒがいんの。大総統補佐官の。
で、「鋼の錬金術師にドラクマ戦線への出兵を命ず」とか、読み上げさせて、次の巻へ!
うわあいいなあ!そんなんだといいなあ!
そしたら「オレは人柱だからみすみす殺されやしねえよ」「でも!殺されなくても、殺さずにいられる場所なんかじゃないでしょ!戦場って!」「・・・国家錬金術師になった時点で、覚悟していたことだ。でも覚悟していたつもり、だけだったのかも、な」「兄さん」「ちくしょう、大総統のやろう。銀時計を返せないと駄目押しした上でこうかよ・・・」「ボクも行く!」「アル!そんなの、ダメに決まってるだろ!」「大総統は、ボクらが元に戻る手がかりを探す旅を続けてもいいと言った。兄さんと一緒に居る、それがボクらが元に戻る最低条件だ!だから一緒に行く!」なーんてファン創作が、どっかで読めそうなのに!
や、妄想ですから。妄想もーそー。もそもそ。

15巻表紙に若ヒューズの登場を切に望む。
〔背中だけだけど、登場しました!〕




60話「神の不在」

戦争。
とても、「まあ、これは漫画だから」とは、思えない。
心を引き離して距離を起きたい、逃げたい気持ちになる。
「バトル」じゃない。「合戦」じゃない。ゲームや漫画でフツーに出てくる「戦争」とは隔絶した、リアルな。

荒川弘にこれだけの戦争を描かせたのは、アニメの力だと思う。
アニメは戦争を描いた。アニメが「鋼の錬金術師」という物語の背景にあった「戦争」を、前面に引きずり出したと感じる。だから、荒川弘も戦争を描かざるを得なくなり、そして真っ向から描く覚悟を決めたのではないだろうか。
あるいはアニメ化でこれだけの人気作になった結果、月刊連載で数回分も戦争を描くことを許される環境ができた、のかもしれない。

そうだ。漫画での戦争は、言ってみればアニメに対しての後出しジャンケンだ。後から出して、負けるわけにはいかない。
そして、負けない力をを持つ漫画家、それが荒川弘だ。

それでも。
アエルゴへの亡命を阻む鉄柵。難民は荷物を抱え、アエルゴ兵は無表情ではなく。
子供ばかり運ばれてくる野戦病院。
ここまで描くとは、と思う。

だから、今月号で救いなのは「悪役」だ。キンブリーやブラッドレイ。彼らは「漫画のキャラクター」だから。
彼らは、現実世界の取材に基づいて描かれた漫画、ではなく、漫画世界の中に住むキャラクターだ。
フィクションから、こちらのリアルさに踏み込んでくることを、怖れずに済む存在。

そしてキンブリーもグランも、決して悪役ではないところに、この作品の温もりを感じる。
「キャラの誰もが自分の矜持に従って生きている」と荒川弘は言っていた。それはきっとフェスラー准将も。
ロイやリザが苦しげなのは、そして存在感で負けているのは、まだ矜持をつかむ前だから。

それでも。
ここまで、戦争を描くなんて。
ああ、いや。分かっていたじゃないか。

荒川弘は、容赦が無い。



〔と、作品に引っ張られて落ち込んだ感想しか書いていなかったのですが、その後元気出てきて追加感想〕


先月や今月は、作品の重さに負けておろおろしておりましたが。
あちこちの感想を読んでるうちに、自分のスタンスっつか距離感を取り戻してまいりました。

以下、なるほど!と思った感想記事。勝手紹介ごめんなさい。


まずは、いつもすごく深い軍部考察を読ませてくださる、「鋼の錬金術師 アニメ・原作問わず(主にロイ・マスタング大佐)」より
ネタバレ感想【紅蓮編】

冒頭のキンブリーの台詞について

>初読したときは“正論”だな、と思いました。
>だけど、何度読み返してもこの“正論”に賛同できませんでした。
(中略)
>キンブリーの言葉は殺す側の正論ではないか、この言葉に殺される側が不在しているからではないか、と。

「殺す側の正論」!
うわあ、なるほど、その通りだ、と。
こういうね、ラベリングっていうのかなあ、一言ですぱっと表すことで何かの形が明確になる、そういう言葉って、好き。


そして、軍部といえばここ!! 「白き焔BLOG」よりガンガン7月号鋼60話ネタバレ
「それが仕事だからです」と言うキンブリーの台詞に対し。

>なぜそれが仕事なのだ? 疑問はもう一歩踏み込まなければならない。そこで思考を止めてはいけない。

う、わ・・・・・・。
そこまでね、気が付く人は、そうはいないと思う。

そして軍とか戦争とかに関しては、私はほーんとヌルイよなあ、と思うのですよ…(>_<)。


もうひとつ。
別漫画のファンブログだけど様々な漫画の端的なレビューが魅力の「360度の方針転換」よりガンガン5月号感想から。

>イシュバール士官の解職に納得がいかない。夷を持って夷を征すのが王道というもの。

あ…その通り。
イシュバール人の軍人は解職の後、賢者の石の材料にされ、同胞の殲滅を目的とする戦場で使われた。
ガンガン読んで、そこまで描くかと、立ち竦んだけれど。
そうだ、現実なら、生身の人間のまま、戦場に送る。目も耳も感情も、持ったままに。
賢者の石は絵空事。絵空事を挟むがゆえに読み手はまだ救われる。だから鋼は正しくファンタジーだ。


それから。
大好きファンサイト「雀書房」の「お喋り」から。
(ブログではなくファンサイトなので文中リンクはしませんが、左サイドスペースのBookmarkにありますので「お好きな方」のみどうぞ)

>鋼の錬金術師では、人を生き返らせる人体錬成は最大の禁忌です。
>人殺しの術ではなく、人を生き返らせるための術が禁忌であると。

あ。そうだ。
殺しは自然の摂理の内にある。
ゆえに人殺しは錬金術の禁忌ではない。
真理は正しくて、残酷。


そして、さっぱり快活な感想が楽しい、ファンサイト「Cafe Chaconne Passionate」内のdiaryより鋼60話 初読感想(3)(ブログ直リンごめん!)

>『悪いのは戦争であり、殺戮する側とて苦むのだ』という描写だけをしてロイの擁護にまわる気は、作者には全くないんだー!うわすげーっと。

うん。すごいよねえ!
シア様仰るとおり、「悪役」なんか「簡単に用意してたまるか、という意気」。うんうん。

>でもキンブリーにとっては「錬金術で」かどうかはあんまり関係なさそうだった。ここは新鮮な驚きだったわ。要は彼にとっての「力」がたまたま「錬金術」だっただけのこと、もし銃の名手だったら銃であっさり仕事してそうなタイプなんだと。

ほんと。「錬金術とは」とかで真面目に悩む主人公サイドをあっけらかんと切り捨てて。
(私、凹んでるときシア様んち読むと、いつも元気出て自分のスタンスが取り戻せるの。ありがとー!<私信)



そして。だけど。
7年後、マスタングは若くして大佐の地位にあるのに、キンブリーは獄舎に繋がれている。
それは当然の報い?
まさか!
だって鋼にそんなものは無い。いや違う、鋼の報いはそんな形で描かれやしない。でしょう?
優秀な軍人・キンブリーがああいう扱いになったのは、軍上層部が彼をコントロールできないからだと思う。コントロールできるなら「邪魔なスカー」の排除に利用するだろうし。
対してマスタングはコントロールできるから今の地位。大総統がホムンクルスと知る前も、今も。(うーん甘ちゃんなんだよなあ。そこが良いんだけどね!)

キンブリーは本当に「爆弾狂」?最初の登場でそう思わせておいて、実は違うんじゃないかな。キンブリーはバリーとは違う。
だから気になるのは将軍達の台詞。「あれは扉を開くような神経は持ち合わせとらんよ」
キンブリーのあの扱いは、「お父様」の目的にかなっていないから?
人柱候補のマスタングとマルコーは、キンブリーと違って「扉を開く神経を持ち合わせている」。それは何だろう。マスタングらが扉を開く、禁忌を犯さざるを得ない状況を、将軍達は既に整えているというのか。

アンコントロールの国家錬金術師、キンブリー。彼は7年後の現在に、どういう位置付けで登場するんだろう!

わー、ようやくワクワクしてきたぞ!うん、漫画にはワクワクが無いとさ!
だから、来月はきっと、マスタングは立ち上がる。マスタングに焔がつく瞬間が、見れる!

そして時間軸も現在に戻って、今のエドも出るはず!だって連載5周年だもん!表紙でカラーで付録だもん!しかも15巻最後の話に当たるんだもん。冒頭で紅茶噴いたきりあとはずーっと主人公不在過去回想じゃ16巻の売上が落ちるもん!(こらこら) 〔<とか書いててやっぱり外しました予想;;〕
〔いや16巻売上もサイコーになるはずですから! 16巻は兄弟ファンも軍部ファンもマジで必見ですから!!!〕


その2へ続く。

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