
敦盛とは平家物語にその名が見える、平氏方の若き侍です。一の谷の合戦で敗れた平家は汀へと逃れ、源氏方は逃すまじと追い立てる。熊谷次郎直実は手柄を上げるべく、良き敵を探して見渡すうちに、海に乗り入れたる馬上の武者を見つけます。
「そこに落ちさせ給ふは平家方の御大将と見受けたり。かへさせ給へ」
武者、それを聞きて、敵に後ろを見せまじと馬首を返すのです。そして馬上にて組み合えば、屈強の熊谷、この武者を汀にて取り押さえ、首を取らんと兜を取り去ります。ところが見れば歳十六、七ばかりの容顔まことに美麗なる若武者、思わず我が子を思い出し、哀れの身に沁みて、助けようとするが、後ろの山から味方の軍の声。
「熊谷は敵を組み敷きながら、今、おめおめと助くるは必定逆心と覚えたり。二心あらば熊谷ともども討ッ取れ」
熊谷、これを聞きて是非もなしと、「許させ給へ」といえば若武者、
「ただ疾く疾く首を取れ」
こうして熊谷は涙ながらに首を取ったのです。後にこの若武者は平経盛の第三子、敦盛と知れました。先週、須磨寺へ行ったときの写真は前回紹介しました。今回は敦盛が身に付けていた鎧兜を載せてみました^^